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過密状態にご注意を 6
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裏山の入り方は簡単。
母屋の裏庭から手作りの階段を上って山に入る事が出来る。ほら簡単だ。
ではなくある程度の高さまでは山から掘り出された岩を割って作った階段が案内してくれる。俺はこの裏山から獣除けに作った罠の巡回の為に大体毎日上り下りしているので慣れた物だが、ちゃんとした靴じゃないと滑ったりもするので要注意。
俺も先生も草履ではないちゃんとした靴に履きかえて階段を上がれば大騒ぎとは言わないけどそこには一頭の小さなキツネが罠にかかっていたのを見守っていた。罠に嵌ったばかりなのか足に傷はないけど俺達を見て懸命に逃げようとしながら怯えている。植田達はどうした物かと俺をちらりと見るのをみて「ここで待て」と、俺は装備を整えに行く。
噛まれないようにタオルとキルトを何重にぐるぐる巻きにしたバアちゃんが作った防護服と軍手。罠を外す為の器具の鋏、足にもタオルとキルトを何重に重ねた物を巻いて準備していれば俺の姿を見た上島父もやってきた。
「どうするんだ?」
「キツネは山に返します」
「良いのか?」
「近くで親も居るでしょう。大丈夫ですよ」
俺はゆっくりと近づいてギャン鳴きするキツネの足を捕まえれば案の定噛みつかれる。これはもう予想通り。ただ有り難い事にまだ子供で身体も小さいからそのまま体を抑え込んで固定する事が出来た。前足で懸命に逃げようとするも体重差と咥えさせた腕で身動きは取らせない。すっと横で腰を落とした上島父が俺の腰から鋏を取って罠を切ってくれた。上島兄弟が植田達を安全な所まで下がったのを見てキツネを解放する。
降り積もった木の葉に足をとられながらも一目散で、全力で逃げて行くキツネの後姿を見て
「これでもう来ないだろう」
キツネの行動範囲は広い。子供のキツネは烏骨鶏の匂いと鳴き声につられてきたのだろうが、これでここは危険な場所だと学習するだろうし近くにいるはずの親のキツネも人がいるのを警戒してここから離れるだろう。心配はないがそれよりも今はこの装備は暑いと手足の防護を外す。
「それにしてもその装備はすごいな」
「いやぁ、上島さんみたいにタンクトップと軍手で猪と格闘する勇気ないですから」
上島伝説、と言うものがこの村にはある。
上島さんが畑で猪と鉢あって向かって来たから逃げてもやられると思って素手で捕まえてしまった。
漫画のような事をしでかしてくれて、たまたま近くを通り過ぎた猟友会の人に助けられたと言うところまでを猟友会では伝説になっている。物凄い狭い地域の伝説だけど。
そう、この上島さんは猟友会仲間でよく烏骨鶏の卵を買いに来ると言う珍客。一個五百円は相場として安い方だけど、だからと言って決して安くない買い物はご家族の皆様には内緒だそうでお小遣いの限界らしい。いくらもらっているかは聞いちゃいけないぜ?オムレツにしたり半熟のゆで卵にしたり卵かけごはんにするんだそうだ。うちの卵は生卵向けじゃないぞと言うもちゃんと洗うしもともと鶏を飼っていてその生卵を小さい頃から食べているから大丈夫と謎の笑顔での返事。今の所何も問題がないから良いが、何かあった時は自己責任だぞと言っている。と言うか、買っていく人達は大体卵がけご飯用と言う皆さん胃袋丈夫で何よりですと俺が食べる時はしっかりと洗って乾燥した物を食べるようにしてる。どうしてって?俺が飼うよりもずっと昔、夏休みに遊びに来てた時今は無きご近所さんから鶏の卵を一緒に貰いに行ってその後バアちゃんがそうやってたからそう言うもんだと薄っすらと思っているぐらいの遠い記憶。ほら、奴らの足ってウンチとか踏んづけてるからね。さすがに洗いたくなる程度の清潔感は俺にもあるなんてことをぼんやりと考えていれば
「うちの子達もそろそろデビューさせたいんだけどな」
「自力で駆除しないといけない環境なら必須スキルですからね」
言いながら既に姿が見えなくなったキツネが消えた方を見守る。
「ちょうどいい山を探してるんだよ」
「初心者なら上島さんちの畑と山の間付近なんてどうです?あの辺猪沢山いそうでしょ」
「猪じゃないんだよ。もうちょっとイージーモードって言うか、あいつら猪見慣れてるから違うのが良いって言うか」
「試すのならうちから下の部分でどうぞ。あと道より川側と川付近は危ないのでやめてください」
「おう吉野ルールだな。若い頃一郎さんにもよーく言われたもんだよ」
不思議な事に謎のルールが俺の家には幾つか残っている。
川の向こう側に行くなとか、キツネは狩るなとか。
他にもいろいろあるが、信心深い昔の人の言葉をふーんと言って聞いてきたが、生憎そこまで俺は狩りに対してアグレッシブではない。
罠もわざとわかる様に仕掛けたり野生の動物に警戒されるのが目的なので捕まえようと言う考えはない。むしろ久しぶりにキツネを捕まえてしまったと言う罪悪感の方が強い。猟友会の人に資格の無駄遣いだなと笑われるも万が一の時の安全の為の知識。無駄に終わるならそれで良しと笑える俺のチキンな所だ。
母屋の裏庭から手作りの階段を上って山に入る事が出来る。ほら簡単だ。
ではなくある程度の高さまでは山から掘り出された岩を割って作った階段が案内してくれる。俺はこの裏山から獣除けに作った罠の巡回の為に大体毎日上り下りしているので慣れた物だが、ちゃんとした靴じゃないと滑ったりもするので要注意。
俺も先生も草履ではないちゃんとした靴に履きかえて階段を上がれば大騒ぎとは言わないけどそこには一頭の小さなキツネが罠にかかっていたのを見守っていた。罠に嵌ったばかりなのか足に傷はないけど俺達を見て懸命に逃げようとしながら怯えている。植田達はどうした物かと俺をちらりと見るのをみて「ここで待て」と、俺は装備を整えに行く。
噛まれないようにタオルとキルトを何重にぐるぐる巻きにしたバアちゃんが作った防護服と軍手。罠を外す為の器具の鋏、足にもタオルとキルトを何重に重ねた物を巻いて準備していれば俺の姿を見た上島父もやってきた。
「どうするんだ?」
「キツネは山に返します」
「良いのか?」
「近くで親も居るでしょう。大丈夫ですよ」
俺はゆっくりと近づいてギャン鳴きするキツネの足を捕まえれば案の定噛みつかれる。これはもう予想通り。ただ有り難い事にまだ子供で身体も小さいからそのまま体を抑え込んで固定する事が出来た。前足で懸命に逃げようとするも体重差と咥えさせた腕で身動きは取らせない。すっと横で腰を落とした上島父が俺の腰から鋏を取って罠を切ってくれた。上島兄弟が植田達を安全な所まで下がったのを見てキツネを解放する。
降り積もった木の葉に足をとられながらも一目散で、全力で逃げて行くキツネの後姿を見て
「これでもう来ないだろう」
キツネの行動範囲は広い。子供のキツネは烏骨鶏の匂いと鳴き声につられてきたのだろうが、これでここは危険な場所だと学習するだろうし近くにいるはずの親のキツネも人がいるのを警戒してここから離れるだろう。心配はないがそれよりも今はこの装備は暑いと手足の防護を外す。
「それにしてもその装備はすごいな」
「いやぁ、上島さんみたいにタンクトップと軍手で猪と格闘する勇気ないですから」
上島伝説、と言うものがこの村にはある。
上島さんが畑で猪と鉢あって向かって来たから逃げてもやられると思って素手で捕まえてしまった。
漫画のような事をしでかしてくれて、たまたま近くを通り過ぎた猟友会の人に助けられたと言うところまでを猟友会では伝説になっている。物凄い狭い地域の伝説だけど。
そう、この上島さんは猟友会仲間でよく烏骨鶏の卵を買いに来ると言う珍客。一個五百円は相場として安い方だけど、だからと言って決して安くない買い物はご家族の皆様には内緒だそうでお小遣いの限界らしい。いくらもらっているかは聞いちゃいけないぜ?オムレツにしたり半熟のゆで卵にしたり卵かけごはんにするんだそうだ。うちの卵は生卵向けじゃないぞと言うもちゃんと洗うしもともと鶏を飼っていてその生卵を小さい頃から食べているから大丈夫と謎の笑顔での返事。今の所何も問題がないから良いが、何かあった時は自己責任だぞと言っている。と言うか、買っていく人達は大体卵がけご飯用と言う皆さん胃袋丈夫で何よりですと俺が食べる時はしっかりと洗って乾燥した物を食べるようにしてる。どうしてって?俺が飼うよりもずっと昔、夏休みに遊びに来てた時今は無きご近所さんから鶏の卵を一緒に貰いに行ってその後バアちゃんがそうやってたからそう言うもんだと薄っすらと思っているぐらいの遠い記憶。ほら、奴らの足ってウンチとか踏んづけてるからね。さすがに洗いたくなる程度の清潔感は俺にもあるなんてことをぼんやりと考えていれば
「うちの子達もそろそろデビューさせたいんだけどな」
「自力で駆除しないといけない環境なら必須スキルですからね」
言いながら既に姿が見えなくなったキツネが消えた方を見守る。
「ちょうどいい山を探してるんだよ」
「初心者なら上島さんちの畑と山の間付近なんてどうです?あの辺猪沢山いそうでしょ」
「猪じゃないんだよ。もうちょっとイージーモードって言うか、あいつら猪見慣れてるから違うのが良いって言うか」
「試すのならうちから下の部分でどうぞ。あと道より川側と川付近は危ないのでやめてください」
「おう吉野ルールだな。若い頃一郎さんにもよーく言われたもんだよ」
不思議な事に謎のルールが俺の家には幾つか残っている。
川の向こう側に行くなとか、キツネは狩るなとか。
他にもいろいろあるが、信心深い昔の人の言葉をふーんと言って聞いてきたが、生憎そこまで俺は狩りに対してアグレッシブではない。
罠もわざとわかる様に仕掛けたり野生の動物に警戒されるのが目的なので捕まえようと言う考えはない。むしろ久しぶりにキツネを捕まえてしまったと言う罪悪感の方が強い。猟友会の人に資格の無駄遣いだなと笑われるも万が一の時の安全の為の知識。無駄に終わるならそれで良しと笑える俺のチキンな所だ。
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