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わらしべ長者とは言わないけど頂き物はありがたく頂く事にしています 6

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 肉じゃが事件は和風チキンカレーへと変貌し、温泉卵まで付いた揚句に飯田ゾーンの野菜は温野菜となってバーニャカウダの素で作ったソースをたっぷりと絡めて初めての未知の野菜を皆で楽しむのだった。勿論トマト、キュウリ、トウモロコシと言ったおなじみの野菜も盛りだくさん並んだ上に野菜だけでは足りなかろうとカレーを煮込む時に出汁としてとった鶏肉の半分以上は唐揚げとなって並び、十代の無限の胃袋を満足させる事に成功した。いや、与えすぎだ。
 食後の後はほどほどの時間で宮下も圭斗も帰って行ったが理由は当然昼に家庭科の授業に変更して遅れた分を取り戻す為の勉強の時間がやって来た為だった。そこで一年の葉山と下田は初めての第二種電気工事士の勉強が始まるのだった。
 既に他の奴らは何度か問題を解いている為に問題と答えを覚えて合格ラインは取れるようになった。勿論中学生の上島弟事達弥もしっかりと点を取れている。むしろこの子が一番賢いんじゃなかろうかと思うのは他の奴らがさぼってきた中学時代を俺がみっちり仕込んで居る為。一学期の成績は見事ここでの合宿を必要としないくらいの内容だったが……
「綾っち、明日烏骨鶏に餌あげても良い?」
 プリントを終わらせた所でおねだりをしてきた。
「餌って、あいつら一日中何か突っついてるぞ?」
「キャベツの葉っぱを手で渡したい的な?」
「手を突かれても知らないぞ?」
「目指せ手乗り烏骨鶏なんだ」
「烏骨鶏可愛いもんな」
「真っ白でふわっふぅわなのに顔真っ黒だし腹も真っ黒。 
 ブロイラーも良いけどあいつら大きいし」
「微妙に小さいのが良いんだよなー」
「綾人ー、烏骨鶏も良いが一年の面倒見てやれ」
 今日の勉強はもう終わりだと言わんばかりに先生の指令が飛んできた。問題が分らず答え合わせするべきかもう少し問題を眺めるべきか悩んでいる二人の所に行って答え合わせをする。周囲は六十点以上なのに二人は四十点以下。気まずそうな顔をするけど
「あいつらは月曜日からって言ってるのに土曜日にフライングできて何度もテストを受けて答えを覚えているだけだから気にするな。
 最初はお前らよりひどかったからそこまで不安な顔をするな」
 言いながら解説を渡してあっている所も間違っている所も読ませる間はお茶を飲みながらだらだらと解説をする。だけどこの後はもう寝るだけなのでこの後のお楽しみと言わんばかりにお茶を二階に運び込む水野達はしっかりと夜食も作って持って行く。
「あの、あれっていつもなのですか?」
 自主的に台所で焼きそばを作り出した植田を見て
「いつもと言うか恒例だな。ただし未成年だから酒とたばこは禁止だ」
「いえ、煙草もお酒も要りませんよ……」
 ソーセージも山のように焼きだして運ぶ横で、上島兄弟がおにぎりを握っていた。
 お前ら幾ら差し入れを大量にもらったからって食べ過ぎじゃないか?まぁ、一人じゃ消費できないからしっかりと食べてもらいたいからいいけどね。
 作られた大盛りの料理一式から別の小さなお皿に取り分けてお盆に乗せ
「陸斗、お前の分の夜食ー。
 ほそっこいんだからしっかり食べろ……って前に包帯取り替えてやるからまず風呂入って来い」
 兄貴肌な水野は包帯と湿布を取り出して陸斗を風呂場に押し込んでいた。
 二人は不思議そうな顔をしながらも解説を読んで居る間に陸斗は風呂から出てきて水野に包帯を巻いてもらっていた。
 だけど大分痣が少なくなった陸斗の体を見て葉山も下田もぎょっとする。
 陸斗がどんな目に合っていたかは知っていたはずだけど実際にどんな結果が残ったのか知らない二人は今まで見ようとしなかった出来事と面と向かって沈黙をしてしまった。
 包帯を巻き終わった陸斗は水野にありがとうございますと感謝を述べ、夜食を作ってくれた上島と植田にも感謝を述べてお休みなさいと一人夜食を持って別の階段から上へと上がって行った。
「あの……」
 葉山が苦々しい顔で俺を見て
「篠田は、別の所なんですか?」
 うちの造りに疑問を覚えたようで階段を上っていく足音に不思議そうに、でもなんと言えば良いのか分からない違和感に少しだけ深く踏み込んできた彼に
「骨にヒビが入ってまだ二週間だ。ここには治療と保養も兼ねて滞在している。戯れあって骨折したらシャレにならないだろう?」
「ええと、ヒビ、入ってるんですか」
「肺に刺さらなくてよかったなってかんじで」
 少しびびってこわばる顔の下田は
「病院に入院とかは……」
「今時腕とあばらのヒビで入院させてくれる病院なんてないんだよ」
 沈黙した二人に解説も終わった所で
「お前らも立派な高校生なんだ。いつまでもガキみたいな事してんじゃねーぞ」
 言い終わったところで二階から賑やかな笑い声が響いて来た。
 俺が二階を見上げたと同時に二人も二階を見上げれば少しだけ楽しそうな顔色へと変わった。
「まだ風呂入ってないやつは順番に入れって言っておいてくれる?」
 少しムズムズとした二人は勢いよく立ち上がるも
「篠田は一人、ですか?」
 立ち上がった足の葉山が不意に立ち止まって俺へとの質問。
「まあ、こればかりはしょうがないな」
バタバタと賑やかな足音に今はまだ痛みもあるという陸斗を混ぜるわけにはいかない。
「あいつ寂しくないのかな」
 壁一枚挟んだ隣では賑やかな笑い声が聞こえ、その隣では一人寂しく夜食を食べる陸斗の姿を思い浮かべてだろう。
 今更陸斗が一人ぼっちの様子をお前らが心配するのか?
 そう溢れそうになった言葉を飲み込んで
「お前らの先輩達は凄いぞ?勇者だぞ?お前らはあいつらの行動力を少し見習うと良い。なかなか真似できないぞ?」
 そう言って明日は六時起きだぞと言いながら陸斗同様取り分けられた二人分の夜食を摘みながら焼酎の水割りを飲み、ニュースで野球の結果を楽しむ先生が俺を手招きしてビール持って来てとリクエスト。ああ、もう!
隣の納屋に取りにいかないとと土間から勝手口に向かって二人に早く寝ろよと言い残してソーラーのランタンがぼんやりと灯りを広げる闇の中に足を向けるのだった。
 置いてきぼりになった一年は少しだけ居心地悪く二階に上がるも想像を超えた景色が広がっていた。
 水野が陸斗の協力を得て窓から屋根伝いに隣の部屋から漫画を持ち込んだり、持ち込まれた漫画を読み漁る兄弟や二年の先輩達はまだしも枕を片手に隣の部屋に潜り込んで本部屋に居座るつもりの植田先輩達の勇者ぶりにこの家の主人の言葉を理解する。軽くなった胸の内を代弁するように夜食を片手に読んだことのない漫画に手を伸ばすのだった。



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