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瞬く星は近く暖かく 7

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 業者のセッティングは尚も続く。
 換気扇の取り付けは勿論水道管の接続も問題なく完了した。ジャーと流れる水道管と排水管から隣の沢に流されていく排水……
 排水管にはU字トラップや排水升もあるので最低限の汚水はともかく虫は上がってこないだろう。業者の方も俺もこの昭和以前のままの環境にほんとに良いのかと戸惑いながらも行政が何もしてくれないのは今も変わらないので躊躇いながらも森下さん達が設置してくれた排水設備を利用するのだった。ほら、こう言った田舎問題森下さん達もなれた物だしね。
「水道が通っているだけまだましですよ」
 未だに山水を貯水して生活している場所もあると言うのだから吉野のご先祖様達の裕福ぶりに感謝するしかないし、その時に下水と言う言葉がもっと浸透していればトイレ問題も解決したのにとふてくされるのは仕方がないだろうか。
「お疲れ様です。これで作業は完了です」
 作業の完了と確認を済ませてサインを書き込む。振込用紙は後日郵送と言う形となりトラブルもほぼなく業者さん達はトラックを庭先でUターンさせて帰って行った。
「庭でトラックがUターンって贅沢ですね」
「田舎に別荘を買われては?」
「田舎生活の不便は知っているのでどこかの別荘地の中古物件をリフォームするくらいに留めておきます。綾人さんのここも出来上がれば時々泊りにお邪魔させてくだされれば満足ですしね」
 囲炉裏、五右衛門風呂が揃えば十分だと言って田舎の空き家問題を解決する気はないらしい。  
 ちなみに森下さんも山川さんも今日と明日泊り込みで仕事をしてくれる予定となっている。圭斗も家から通いで駆けつけてくれるが、今日は午前中は別の所に仕事に行ってるらしくて午後からの参加となっている。
 少しずつ仕事が増えて頑張ってるなと感心する横で虹鱒の焼ける良い匂いが漂っていた。
 流石料理人。綺麗に焼いてるなとしっかりと焦げ目付けてくださいと飯田さんに怒られるお父さんってなんか可愛いなと微笑ましく眺めていた。
 今日のご飯何かなと台所からただよって来た匂いと見覚えのある車がのぼって来た。白いバンの
「長沢さんだ。あと……宮下?」
 見覚えのあるSUV車にぱちくりと瞬きを繰り返していれば
「高山先生から聞いてないですか?
 宮下君本日就職先の師匠と奥様を連れていらっしゃいますと?」
 きっと先生のサプライズかうっかりとかの二択の答えにこめかみに血管が浮き上がるも、先生なんて無視をして就職先に行ってまだ一月も経ってない友人との再会に涙が浮かぶ。
 駐車場に止まって後部座席の二人が下りて来るのもお構いなしにハグっと抱きつけば
「綾人久し振り。なんか大変だったって圭斗から聞いたよ。とりあえず今は紹介させて」
 わたわたと戸惑うような宮下を持ち上げてそのままぶらぶらと振り回して宮下を堪能した所で開放するのだった。
「満足した?」
 コクンと頷けば周囲から何だか生暖かい視線を浴びるも
「お世話になってる西野さんと奥様。いちど内田さんの建物を見たいって言う事だったので観光を兼ねて見学にきたんだ」
「初めまして。西野藤次郎です。動画で見させてもらったが、まだこんな家が本当にあるのですな。一度実物を見たいと我が儘言わせてもらいました」
「妻の桔梗です。折角だからと私までお招きして頂いてありがとうございます」
 先生聞いてないよ?
 そんなツッコミは口にはしない物の
「初めまして、吉野綾人です。この山奥までようこそおいでくださいました」
 初対面の二人に緊張しながらの挨拶に
「なに、二人には家に泊まってもらうから安心しろ。
 会うのは二十年ぶりか?師匠の葬式以来だから、次に会うのはどっちの葬式だって話だったんだからな」
 長沢さんの援護と笑えないジョークに本当にここにはただ見学に来ただけの様でほっとしながら
「藤次郎、襖を持って旧家の方について来い」
「人使いが荒いなぁ」
「ああ!俺も手伝うから!二人とも軽いのから運んで!」
 宮下も襖を持って運び込むのを手伝うのを見送る桔梗さんに
「良ければついて行って作りかけの家で足場は悪いけど覗いてみてください」
「でしたらお言葉に甘えまして」
 にこりと優しげな顔で会釈して後をついて行く様子に楽しんでもらえればとおもってしまう。
 見送る背後でごそごそと物音。飯田さんのお母さんも起きてきたようだ。
「そろそろ薫の手伝いに行ってやれ」
「あら良い匂いと思ったら虹鱒ですか?」
「綾人君の家では養殖までしているそうだ。綺麗な沢の水を直接引いているから泥臭さもなさそうだ」
「まあまあ!」
 手元の様子を覗きながらも何やら嬉しそうな顔をしながら食べたままの焼きナスの皿を下げながらにこにことした顔で台所お邪魔させていただきますと一言断りを入れて家の中に入って行くのを丁寧だなあと見送るのだった。
「綾人君、焼きたての魚を先に食べるか?」
 ひょいと串に刺したままの魚を俺に押し付けてきて、思わず手にしてしまったが
「腹が空いているのだろう。ならばつまみ食いこそ最高に美味いぞ?」
 にこりとも笑わずにただ火を見る目だけは真剣でそんな事を言う言葉はジョークとしても聞き入り難いが
「いただきます」
 なんとなく断りにくい気配にありがたく頂戴することにした。



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