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決意は口に出さずに原動力に変えて 7

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 木槌を叩いて烏骨鶏を小屋へと戻す。
 大半が木槌を叩く前に小屋の前でたむろしていたが、それでもやんちゃな奴らはこの薄暗い中遊びほうけている。
 鳥目とは何ぞや。
 僅かな家から零れ落ちる明かりで遊び歩いていた烏骨鶏だが、鳥小屋の中の餌が魅力的で、やはり安心するのだろう。我先にと小屋に帰る様子は見て居ても可愛らしいやつめと言う所だ。
 今日は飯田さんが居るので先生は来ない事になってる。
 飯田親子にとってやっと水入らずと言った所だろうか。俺が居るけど。
 飯田家タイムの早い夕食を終えれば昼間のうちに囲炉裏の上の畳を外し、蓋の役目をしていた蓋も外し囲炉裏を中心とした居間に集まった。一応灰の中も虫が住み着いてないか掃除をしてチェックをしたし、俺が一人の時は薪を使うけどお客様用として用意しておいた炭を昔から使っていた鉄製の角壺を囲炉裏の片隅に置いて少しだけ冷えた室内を暖める様に炭に火を灯すのだった。竈から消し炭の炭を持って来て、情緒もなくガスバーナーで着火。
「今時の火おこしは便利だなぁ」
「俺がここに来るまでバアちゃんは火おこし器を使ってましたよ。ただ台所から土間上がりを上がるまでにいろいろ障害が多くてこっちに変えた次第です」
「確かに土間が高いわね。こんなに高いのかって驚いちゃったもの」
 飯田さんのお母さんは靴の脱いだり履いたりが大変そうなのは見て居ても理解が出来た。
「もし夜にトイレが不便でしたらあちら側のお部屋にお布団用意しますよ」
「お願いできるかしら?昨夜暗くはなかったのだけど寝起きに足元が危うくて」
 少しだけ恥ずかしそうな告白に台所の部屋なら土間上がりから直接トイレへと行く事が出来るのでこの家になれてない人には楽だろう。ちなみにだがお客様が来ているので代わりの襖をちゃんと持って来てくれていたので昨夜は飯田さん父子はちゃんと部屋の中で眠れる事が出来た。長沢さんの気遣いに感謝。
「だったら父さんも向こう側にしようか」
「ふむ、昨日みたいに酔いつぶれても安心だな」
「酔いつぶれるのを前提に言うのはやめてください」
「そうですよ?せっかくお招きして頂いたのにはしたない」
 囲炉裏を囲むように座りながらもぺしりと足を叩く奥さんにさすがに気まずい顔をするお父さんに俺は笑う。
「家で過ごすようにゆっくりしてください。飯田さん、じゃなくって薫さんはもう自分の家の如く寛いでますので」
「ん?」
 五徳を置いて小さな網を持って来て何やら肉や魚を焼き始めるその横には勿論お酒も用意してあった。
「薫ったら……」
 お母さんは頭を痛そうに、そして恥かしそうに両手で顔を隠すもお父さんにぐい呑みを渡してお酒を注ぐ。
「今日買って来たお酒なんです。地元のお酒の大吟醸。楽しみしかないですね」
「何だ。二本買った理由はここで飲むためか」
「お父さんだって買ってるんだから必要ないかと」
 酒豪親子は一升瓶を一人で一本を飲むつもりのようだ。
「もう二人とも……」
 晩酌が始まればお母さんもいそいそとお肉をひっくり返したりと忙しそうに手伝う。さすが料亭の女将なだけあってまめまめしいと感心している間に飯田さんはも一つ五徳を持って来て水をはった鍋をかけるのだった。
「まだ少し早いけど燗にして飲もうかと」
 うきうきと言う表現がよく似合うと言う様に何度も台所を行き来しながら牡蠣まで持ってくるのだった。
「殻が爆ぜるから気を付けてくださいね」
「また厄介な物を」
 呆れるお父さんだけどそれは酒が進むとかそんな口調なのでお互いよく理解しあっているのだろうと呆れるしかないと言うかお互い理解しすぎだろと呆れるしかない物の
「でもこうやって薫と晩酌をする日が来るとは思ってもなかったな」
「ですね」
 あまりにも気が合う様子にその言葉には耳を疑った。
「そうねぇ。薫は家に寄りつかないし、あなたは一人で部屋呑みだし。
 こうやって親子でお酒を飲む機会なんてなかなかなかったわね」
 偽りでもないと言う様にお母さんも飯田さんからぐい飲みを貰ってゆっくりと呑みはじめて、にっこりと笑顔のまま酒精の籠った吐息をそっと落すのだった。
 人妻色っぽい。
 初めて何かこの言葉に納得してしまったが、息子さんはともかく旦那さんは視線すら向けずに興味なし。この夫婦大丈夫だろうかと思うも何かいけない物を見てしまっているようで視線を反らせるように飯田さんから渡されたぐい呑みに映る自分と睨み合ってしまうが、よく考えれば自分の親とそう大して変わらない年齢の人だ。そう考えた瞬間何か急に冷めてしまって、それでも何か貴重な体験をしたなと思う事で完了する事にしてこの件を忘れる事にした。


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