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春の足音はゆっくりじっくり 6
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「綾人さんお久しぶりです」
先生の家の様子を見に山を降りればそこには浩太さんと森下さんが揃って家の中を見上げていた。もちろん圭斗もそこにいるも逃げるように移動するのを見送るのだった。
「森下さん、お久しぶりです」
なんでこんなところにと思うも
「聞きましたよ。また家を手に入れたとか」
苦笑する浩太さんから話が漏れたことはすぐに理解した。
「まあ、老後の冬場の別宅にしようかと」
言えば遠い山を見上げ
「まだ雪深いですね」
「五月まで降りますので」
暫し沈黙の森下氏。
「随分降るんだね」
「まあ、今なんとか地面が見えてきたところです。すぐに雪に埋もれますが」
寒いと言うように自分の体を抱きしめるように腕を回すも
「今年も雪に家が潰されることなく春を迎えようとしています」
世の中すっかり春の陽気に浮かれているのに山の上はまだ冬のまま。
「一年の半分以上が冬だから、今は若さでなんでもできるけどいつかは冬の間だけでも降りないと食べるものに困るので」
「宮下商店だっけ?あそこもいつまで経営してるかわからないからな」
先細りの村の唯一の店の未来は決して明るくない事は言わなくても利用している人間が一番理解している。
「そこは大和さん次第だから。俺たちが口を出すべきじゃないしな」
むしろテレビでも見るトラックに荷物を積んで回ってくれるやつをやってくれればいつまでもあの家にこだわることもないしと、きっと俺同様家から離れられないだろう大和さんと一緒に歳を重ねていく未来が想像出来て一人苦笑。
「どちらにしても山を降りる選択を用意するのは賢い選択だと思います。ですが、聞きましたよ?随分思い切ったことを」
二軒分を購入したのだ。二件合わせて五百万。高いか安いかは住んで出す値段だが、少なくとも安いとは思えない価格だと思う。
精神的にダメージのくる掃除というものをこなしたのだから。
ほとんど卒業生達にやらせたとはいえ本当にひどいと言わずにはいられないあのゴミはバアちゃん以上の貯め具合に夢に見たという植田の言い分も納得できる。
「先生の家には本当に厄介になったし、思い出の家に足を運ぶことができないのも寂しいし」
なぜか離れたところから圭斗の盛大な咳き込む音が聞こえるが俺は軽くスルーしておく。
今は何もいうな圭斗よ。
先生への復讐は今じゃないと念じながらもいい話だ~とほっこりしている森下さんに
「で、なんで居るんです?」
いつの間にか浩太さんがいなくなっていた。感がいいなあと思うも
「もちろん内田の爺様の家を見学に来ました…あわよくば仕事をいただければと思いまして!」
「仕事は?!」
思わず声を大にして聴いてしまうも
「実は古民家再生の仕事って茅が用意でき次第な懸案ばかりでして」
「マジか?!」
「まあ、古民家以外の仕事もありますが。綾人さんが家を建てると聞いて来ずにはいられないでしょう」
「ああ、無難な本音が聞けて安心した」
一瞬でも本気でシーズンまで仕事ない人かと思ってしまったが単に内田の家に関わりたいと言うのが一番の本音と言う事がわかれば安心するしかない。
「そんで、どこに手を入れます?」
「一番の目的は二軒を繋げるってことですね」
場所は内田さんと決めたが段差は避けれないのは地形の問題なので諦めるしかない。雨にも雪にもさらされずに行き来できる事は何よりもありがたい。たとえ室内が氷点下になっても雪をかき分ける労力に比べれば何も問題ない。
「なるほど。一番の魅力ですね」
その言葉に俺も力強く頷くが
「ですがいずれ隙間から雨漏りしますよ?」
「それは圭斗と内田さんからも言われてますよ!!!」
誰に言っても返ってくる答えは同じでいじけてしまうのは当然だろうと不貞腐れる俺のご機嫌をとりなそうとする森下さんもなんだかんだ言いながらこの家作りに参加することになるのだった。
先生の家の様子を見に山を降りればそこには浩太さんと森下さんが揃って家の中を見上げていた。もちろん圭斗もそこにいるも逃げるように移動するのを見送るのだった。
「森下さん、お久しぶりです」
なんでこんなところにと思うも
「聞きましたよ。また家を手に入れたとか」
苦笑する浩太さんから話が漏れたことはすぐに理解した。
「まあ、老後の冬場の別宅にしようかと」
言えば遠い山を見上げ
「まだ雪深いですね」
「五月まで降りますので」
暫し沈黙の森下氏。
「随分降るんだね」
「まあ、今なんとか地面が見えてきたところです。すぐに雪に埋もれますが」
寒いと言うように自分の体を抱きしめるように腕を回すも
「今年も雪に家が潰されることなく春を迎えようとしています」
世の中すっかり春の陽気に浮かれているのに山の上はまだ冬のまま。
「一年の半分以上が冬だから、今は若さでなんでもできるけどいつかは冬の間だけでも降りないと食べるものに困るので」
「宮下商店だっけ?あそこもいつまで経営してるかわからないからな」
先細りの村の唯一の店の未来は決して明るくない事は言わなくても利用している人間が一番理解している。
「そこは大和さん次第だから。俺たちが口を出すべきじゃないしな」
むしろテレビでも見るトラックに荷物を積んで回ってくれるやつをやってくれればいつまでもあの家にこだわることもないしと、きっと俺同様家から離れられないだろう大和さんと一緒に歳を重ねていく未来が想像出来て一人苦笑。
「どちらにしても山を降りる選択を用意するのは賢い選択だと思います。ですが、聞きましたよ?随分思い切ったことを」
二軒分を購入したのだ。二件合わせて五百万。高いか安いかは住んで出す値段だが、少なくとも安いとは思えない価格だと思う。
精神的にダメージのくる掃除というものをこなしたのだから。
ほとんど卒業生達にやらせたとはいえ本当にひどいと言わずにはいられないあのゴミはバアちゃん以上の貯め具合に夢に見たという植田の言い分も納得できる。
「先生の家には本当に厄介になったし、思い出の家に足を運ぶことができないのも寂しいし」
なぜか離れたところから圭斗の盛大な咳き込む音が聞こえるが俺は軽くスルーしておく。
今は何もいうな圭斗よ。
先生への復讐は今じゃないと念じながらもいい話だ~とほっこりしている森下さんに
「で、なんで居るんです?」
いつの間にか浩太さんがいなくなっていた。感がいいなあと思うも
「もちろん内田の爺様の家を見学に来ました…あわよくば仕事をいただければと思いまして!」
「仕事は?!」
思わず声を大にして聴いてしまうも
「実は古民家再生の仕事って茅が用意でき次第な懸案ばかりでして」
「マジか?!」
「まあ、古民家以外の仕事もありますが。綾人さんが家を建てると聞いて来ずにはいられないでしょう」
「ああ、無難な本音が聞けて安心した」
一瞬でも本気でシーズンまで仕事ない人かと思ってしまったが単に内田の家に関わりたいと言うのが一番の本音と言う事がわかれば安心するしかない。
「そんで、どこに手を入れます?」
「一番の目的は二軒を繋げるってことですね」
場所は内田さんと決めたが段差は避けれないのは地形の問題なので諦めるしかない。雨にも雪にもさらされずに行き来できる事は何よりもありがたい。たとえ室内が氷点下になっても雪をかき分ける労力に比べれば何も問題ない。
「なるほど。一番の魅力ですね」
その言葉に俺も力強く頷くが
「ですがいずれ隙間から雨漏りしますよ?」
「それは圭斗と内田さんからも言われてますよ!!!」
誰に言っても返ってくる答えは同じでいじけてしまうのは当然だろうと不貞腐れる俺のご機嫌をとりなそうとする森下さんもなんだかんだ言いながらこの家作りに参加することになるのだった。
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