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恵みの雨が来る前に 6
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見積書に並ぶ数字に苦笑いをしつつ、見積書を作った健太郎さんもまさかの内容に苦笑は隠せなかった。
「うちは工務店だったと思ったんだけどなぁ」
「書類上で面積は判ってたんだけど金額にすると腹が立つなぁ」
本日は朝から健太郎さんと見積もりについての説明を貰う事になりました。
他の皆様はせっせと網を外したり準備をしたりと手際よく作業をしてるのを眺めながら離れの土間に設置されたふたをかぶせてただの机となった囲炉裏を囲みながら書類を並べるのだった。
「荷物置き場にして貸したりしたらどうだ?」
土地はあるだけで税金を取られる負動産だぞと言う健太郎さんに
「聞いた事あるでしょ?資材置き場に貸したら廃棄のタイヤが山積み放置とか、そう言う話を聞くと草が生えてるくらいが平和でいいんですよ。
それにこの近辺の人に農地にして貸し出しても誰も借りないし」
「皆庭先でやるぐらいでちょうどいいって言うからね」
「そうそう、わざわざ畑借りて足を運ぶ人なんていないでしょ」
家から遠い所に駐車場なんて借りないし、駅の側でもないので需要もない。むしろ側にも家がないこの状況なのに何でこんな土地を持っているのかと思えば答えは内田さんが知っていた。
「林業をしているといろいろ事故が起きたりして仕事を辞めないといけない場合がある。その時の生活の保障として町や便利な所に家を建ててやろうと場所だけは確保していたそうだ。だけど一郎が篠田のせいで廃業を選んだとき長谷川みたいにここに残った奴らも居れば故郷に帰って行った奴らもいて。帰って行った奴らの分だけ土地が残ったってわけよ」
「何でさっさと売らなかったか……」
昭和の戦後ならまだ買い手があっただろう。だけど今は仕事のなさに若い人達はどんどん町を離れて行く。町を離れる手助けをしている俺が言うのも何なのだが。
「幸か不幸か一郎はそれまでご先祖様達が残したお金で税金は払えて来たし、まれに売ってくれと言う人もいたから小遣い稼ぎにはなってたようだ」
「なるほど、ジイちゃんがの収入源の謎が理解できた」
「その結果誰も買いそうもない土地だけが残されたわけだ」
一郎もだが吉野の人の面倒見の良さだけにはまいったと語る鉄治さんは俺を見て苦笑するのだった。
「そういや親父の奴町はずれの資材置き場も俺がガキん時に買ったとか言ってたけど今思えば古い町なのにずいぶん便利な所によく買えたなあって思ったんだけど……」
一通りの見積もりの説明を聞かせてもらい、サインをした所で山の天気が雨の時に草刈りをすると言う流れで話がまとまった所で与市さんが顔を出してくれた。
「話は終わったか?」
「おう、一応昨晩相談した時のままで話しはついたぞ。
そういや親父よ、うちの資材置き場ひょっとして吉野から買った土地か?」
「ああん?話した事なかったか?」
「初耳か子供過ぎて覚えてない話だと思う。
今綾人さんが内田さんから点在している土地の話しを聞いてきたのを教えてもらった所」
「おぅ、鉄治の奴に話してたのか」
「仕事を離れた人の保証の為に買っておいたって話しらしいぞ」
「ああ、あと借金の形に巻き上げたり吉野一族は穏やかな顔をしてるのにみんな性根が荒いからお前も喧嘩売る相手は間違えるなよ」
「大切な上客を怒らす真似はしないって」
それを本人の目の前でするのはどうかと思うが、仲よくしてくれると言うのなら仲良くするつもりだ。それじゃあ仕事に戻りますと言って車に書類を置いて仕事着を着て山に登って行く後姿に今のところ不満はお宅の従業員のフリーダムさぐらい何とかしてくださいと目で訴えるのだった。
そうだよ。
遠藤お前の事だよ。
今日も今日とて一足早くやって来てはうふふあははとハーブ畑を全身で満喫していた。四時には起きるってゲロってしまったので朝六時からやって来た猛者に何かのデジャブと意識は遠くなるばかり。夢であってほしかったがそこでこのマニアのおかげである事が発覚した。
「綾人さんのハーブ園ってすごいですね!
なんて言うか、マニア垂涎のレアな品種とかめっちゃ癒されます!
やっぱり種はネットで購入ですか?オークションですか?」
「ん?」
なぜか昨日までは吉野さんだったのにいつの間にか綾人さんと年上だけどなれなれしく呼ぶようになった遠藤を見上げながらなんか聞き捨てならないような事を聞いて首を傾げていればとりあえずと言う様に案内されて畑を見に行くと
「うん。俺が買った覚えのない苗があるな」
記憶にない苗が幾つも並んでいた。
興味ないからとは言えども一通り育て方を調べたのだ。知識的にしか知らなくてもこれだけ立派に育った物を見落としてたとは恥ずかしいにもほどがある。
真っ先に思いついたのは宮下のおばさん。だけどおばさんならこんな所に植えずとも店の近くのうちの土地に入ったばかりの道沿いに作った花畑で育てるはずだと起きてるかどうかなんて気にせずにいくつかの心当たりのある相手を順位づけしながらスマホを取り出して電話をかければ数コールして眠そうな声の返事に
「小山さんお久しぶりです。
ちょっとお聞きしたいのですが、うちのハーブ畑に見覚えのないハーブがあるのですが小山さんが植えました?」
「……」
プッ、ツー、ツー、ツー……
いきなりガチャ切りされた。
「うちは工務店だったと思ったんだけどなぁ」
「書類上で面積は判ってたんだけど金額にすると腹が立つなぁ」
本日は朝から健太郎さんと見積もりについての説明を貰う事になりました。
他の皆様はせっせと網を外したり準備をしたりと手際よく作業をしてるのを眺めながら離れの土間に設置されたふたをかぶせてただの机となった囲炉裏を囲みながら書類を並べるのだった。
「荷物置き場にして貸したりしたらどうだ?」
土地はあるだけで税金を取られる負動産だぞと言う健太郎さんに
「聞いた事あるでしょ?資材置き場に貸したら廃棄のタイヤが山積み放置とか、そう言う話を聞くと草が生えてるくらいが平和でいいんですよ。
それにこの近辺の人に農地にして貸し出しても誰も借りないし」
「皆庭先でやるぐらいでちょうどいいって言うからね」
「そうそう、わざわざ畑借りて足を運ぶ人なんていないでしょ」
家から遠い所に駐車場なんて借りないし、駅の側でもないので需要もない。むしろ側にも家がないこの状況なのに何でこんな土地を持っているのかと思えば答えは内田さんが知っていた。
「林業をしているといろいろ事故が起きたりして仕事を辞めないといけない場合がある。その時の生活の保障として町や便利な所に家を建ててやろうと場所だけは確保していたそうだ。だけど一郎が篠田のせいで廃業を選んだとき長谷川みたいにここに残った奴らも居れば故郷に帰って行った奴らもいて。帰って行った奴らの分だけ土地が残ったってわけよ」
「何でさっさと売らなかったか……」
昭和の戦後ならまだ買い手があっただろう。だけど今は仕事のなさに若い人達はどんどん町を離れて行く。町を離れる手助けをしている俺が言うのも何なのだが。
「幸か不幸か一郎はそれまでご先祖様達が残したお金で税金は払えて来たし、まれに売ってくれと言う人もいたから小遣い稼ぎにはなってたようだ」
「なるほど、ジイちゃんがの収入源の謎が理解できた」
「その結果誰も買いそうもない土地だけが残されたわけだ」
一郎もだが吉野の人の面倒見の良さだけにはまいったと語る鉄治さんは俺を見て苦笑するのだった。
「そういや親父の奴町はずれの資材置き場も俺がガキん時に買ったとか言ってたけど今思えば古い町なのにずいぶん便利な所によく買えたなあって思ったんだけど……」
一通りの見積もりの説明を聞かせてもらい、サインをした所で山の天気が雨の時に草刈りをすると言う流れで話がまとまった所で与市さんが顔を出してくれた。
「話は終わったか?」
「おう、一応昨晩相談した時のままで話しはついたぞ。
そういや親父よ、うちの資材置き場ひょっとして吉野から買った土地か?」
「ああん?話した事なかったか?」
「初耳か子供過ぎて覚えてない話だと思う。
今綾人さんが内田さんから点在している土地の話しを聞いてきたのを教えてもらった所」
「おぅ、鉄治の奴に話してたのか」
「仕事を離れた人の保証の為に買っておいたって話しらしいぞ」
「ああ、あと借金の形に巻き上げたり吉野一族は穏やかな顔をしてるのにみんな性根が荒いからお前も喧嘩売る相手は間違えるなよ」
「大切な上客を怒らす真似はしないって」
それを本人の目の前でするのはどうかと思うが、仲よくしてくれると言うのなら仲良くするつもりだ。それじゃあ仕事に戻りますと言って車に書類を置いて仕事着を着て山に登って行く後姿に今のところ不満はお宅の従業員のフリーダムさぐらい何とかしてくださいと目で訴えるのだった。
そうだよ。
遠藤お前の事だよ。
今日も今日とて一足早くやって来てはうふふあははとハーブ畑を全身で満喫していた。四時には起きるってゲロってしまったので朝六時からやって来た猛者に何かのデジャブと意識は遠くなるばかり。夢であってほしかったがそこでこのマニアのおかげである事が発覚した。
「綾人さんのハーブ園ってすごいですね!
なんて言うか、マニア垂涎のレアな品種とかめっちゃ癒されます!
やっぱり種はネットで購入ですか?オークションですか?」
「ん?」
なぜか昨日までは吉野さんだったのにいつの間にか綾人さんと年上だけどなれなれしく呼ぶようになった遠藤を見上げながらなんか聞き捨てならないような事を聞いて首を傾げていればとりあえずと言う様に案内されて畑を見に行くと
「うん。俺が買った覚えのない苗があるな」
記憶にない苗が幾つも並んでいた。
興味ないからとは言えども一通り育て方を調べたのだ。知識的にしか知らなくてもこれだけ立派に育った物を見落としてたとは恥ずかしいにもほどがある。
真っ先に思いついたのは宮下のおばさん。だけどおばさんならこんな所に植えずとも店の近くのうちの土地に入ったばかりの道沿いに作った花畑で育てるはずだと起きてるかどうかなんて気にせずにいくつかの心当たりのある相手を順位づけしながらスマホを取り出して電話をかければ数コールして眠そうな声の返事に
「小山さんお久しぶりです。
ちょっとお聞きしたいのですが、うちのハーブ畑に見覚えのないハーブがあるのですが小山さんが植えました?」
「……」
プッ、ツー、ツー、ツー……
いきなりガチャ切りされた。
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