人生負け組のスローライフ

雪那 由多

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夏の深山を快適に過ごす為に 10

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 ジャンクフードパーティ。
 叶野にとってテレビの食べ物だと柊が教えてくれた。
 黙々とフライドチキンを食べる片手にはコーラが握りしめられていた。
 さすがにコーラは留学中のパブでチェイサー代わりに飲んだ事があるようなのでそこまでは驚きが無いようだったが、圭斗に買い出しに行かせている裏で俺は叶野と柊を連れてこの街唯一のスーパーマーケットへと買い物に行ってきた。さすがに蓮司を連れ行くわけにはいかないのでそこは香奈に任せればにっこりとした笑顔で
「でしたら陸斗一緒に庭の植木の手入れ手伝ってください!」
 一瞬驚いた蓮司だったが陸斗と一緒だから安心して手伝うよと二つ返事。
 いや、それより香奈よ。折角滅多に会えないどころかおさわりできる距離の有名人がいるのに何こき使ってるんだよと言うツッコミは多分俺だけじゃない。
 まあ、理由は知っているが、それにしてもテレビや映画で大活躍している芸能人の扱いの酷さはどうよと思いながらも、そこはあまり係わりたくないので叶野と柊をつれてこの街の繁華街へと足を運べばその品揃えの薄さに戸惑う姿が見れただけ良しとしよう。
 そして本日の俺は常識的なお買い物の量しかカートに乗せていないので、俺の姿を見たら無言で二人制を取るレジの人は
「今日は少ないですね?」
「まあ、今晩東京から来た友達と宮下達と晩ご飯食べるだけなので」
「宮下君懐かしい!そう言えば宮下君がんばってるって聞いてるけど元気してる?」
「元気ですよー。相変わらずのんびりしててマイペースですよー」
 あいつが取り乱したのは就職していた僅かな短い期間。本人は忘れ去りたいくらいのトラウマの過去。今はなんのみのりのない一年を取り戻そうと必死に仕事を学んでいるけど、不思議な事に必死さが伝わってこない幸せそうな顔をしている。天職を見つけた証拠だと思って影ながら応援しているが、長沢さんの叱咤はかなり厳しいのでこっそり見ている俺の方の心臓の方がしんどくなってしまう不思議。なのであまり職場に顔を出さないようにしている。
 たとえそれが俺の持家だとしてもだ。
「変わらないねー。元気ならいいんだけど」
 少なからずここに働きだした頃の陰気なまでの疲れ切った一面を見ていただけに今も心配してくれてありがたいと言う所だろう。
「所であなたたち結婚とか報告ないの?」
「出会いと人のいないド田舎に住んでいるので結婚て言葉も見つかりません」
 言えば確かにと笑うおば様達。
 いや、笑う所だろうかと思うもお会計が済んだ所で
「たまには顔出しなさいって伝えておいて」
「いっておきますねー」
 何てさっくりとカード決済で支払いを済ませ、サッカー台で叶野に買った物を袋に詰めさせる。何事も練習と言う様に柊には手を出させずに、俺は入口の所でみたらし団子を齧っていた。うまー。
 もちろん叶野に白い目を向けられる物の、袋に荷物の爪方も知らないお子様に睨まれても意味なんて全く理解してやらない。
「どうだ?ちゃんと重い物を下に入れたか?」
「柊に入れ直しさせられた」
「柊いい仕事する。こうやって一つ一つ社会常識身ににつけて行こうな」
 グッジョブと親指を立てながらそれすら知らなかったのかと遠回しに言えば拗ねる、ではなく
「次は出来るもんね。やり方なんて簡単だし」
 この単純さが叶野の可愛い所だと思わずにはいられない。
 ぶらぶらと歩いて田舎の寂れた感じと古くからの情緒が混ざる宿場町の見どころのある通りを通り抜けて戻れば増えた車は見慣れた物が遠くからでも見つける事が出来た。
「宮下が帰ってきたか」
 本日香奈が返って来るために急きょおやすみを貰う圭斗とは別に宮下は普通にお仕事タイムだったので一応定時に切り上げて戻ってきたようだ。
「宮下とは城出会った事あったはずだ」
「一緒に動画作ってる人ですよね」
「それー。
 そんでもって香奈の小さい頃からの思い人。馬に蹴られないように注意な?」
「あー、だから蓮司さんと一緒に留守番しててもドライなんだ」
 叶野がなるほどと言えば俺も頷き
「もう一途で一途で一周回って迷走しちゃってるくらい一途で。
 いつものハンターぶりはどうなんだよって言うくらい変わるけど。気にせずにご飯食べればいいから」
 そう言う物なの?という柊の顔にそう言う物ですと言って帰ってこれば案の定かなり減らした植栽を刈りこんでるのは陸斗と蓮司。
 ああ、もう……
 久しぶりだから許してやるかどうかはとりあえず食べ終わった食器の後片付けを押し付ける事でチャラにしてやる事にして、圭斗が早く返って来るのを待つように晩ご飯の準備をし、帰って来た車の音と共に本日一番の叶野のテンションにみんなでほんとお前可愛いなと言う目でフライドチキンを貪る様子を見守るのだった。



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