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夏の深山を快適に過ごす為に 11
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圭斗の家で宮下と合流をし、ジャンクフードパーティの後片付けを香奈に押し付けて蓮司を多紀さんの所に帰して山に帰る事にした。
忘れてはいけない。
烏骨鶏と先生を野放しにしているのだ。無茶な事はしてないだろうが何をしているのかが不安だ。
薄らと暗くなった夕闇に車のライトに驚いて烏骨鶏が大騒ぎする。
やっぱりと言うか鳥小屋に入れてくれなかったかと当然のように思いながら木槌で合図を送って烏骨鶏を小屋へと帰ってもらう。よくしつけられた娘たちだと感心しながら時々まざる息子の朝の一声が長閑でいいなと思ってた時期はもう過ぎた。
と言うか、オスは処分したのにどこで沸いているのかと考えるも大和さんが定期的の投入していると言う事実をもう少し先に知るまでどこぞに隠れて暮している不良烏骨鶏がいると本気で思ってた俺は間抜けだと思う。
それはさておき、先生の晩ご飯にフライドチキンを持って帰れば珍しく仕事をしていたようで庭側の縁側に机を寄せて途中で力尽きた休み明けのテスト問題の作りか怪我畳の上に広がり、子守唄のように側で点けっぱなしのテレビが高校野球の延長戦が繰り広げられる様子を映し出していた。
叶野と柊はそんな姿をもの珍しそうに眺めながらテスト問題に目を落す。
「なんか懐かしい問題ですね」
柊がそっと呟けばすぐ傍にある人の気配に先生の意識が浮上する。
起こしてしまったかと思って慌ててすみませんと言いそうになる柊が口を開く前に
「せんせーただいまー。
そこで寝ると風邪ひくぞ」
「あー、風が気持ちよかったと思ったらもうこんな時間か」
テレビの上にかかってる年代物の壁時計で時間を見ようとした所で軽快な音がテレビから響き、それからわっと言うような大歓声があふれ出た。
「あら、やっと決着ついたのね」
延長する事十二回。タイブレークに入るかと思ったけどその前に納得のサヨナラホームランを決めてくれたようだった。
「二回裏ぐらいから意識がなかったから随分寝たわね」
「烏骨鶏が小屋に入ってないわけだ」
そんな先生に煎茶を渡す。今はウォーターサーバーがないのでポットのお湯で作るティーバックのお茶だが先生は人に入れてもらうんだからそれで十分だと一見親切を装いつつも逆の立場になった時めんどいからと言うのが本音なのを俺はちゃんと理解しているからのこのやり取り。
ちゃんとした家のお子様達はちゃんと急須で淹れようぜと言う視線を俺に向けていた。さすがにイギリスでティーバッグの物足りないお茶を飲ませただけあって、簡単にお茶の葉が手に入らないから妥協して飲んでいるものの、帰って来てからは妥協しないと言うように
「お茶でしたら淹れますよ?」
柊がちゃんと淹れれば美味しい。いや、きっとおいしいお茶を飲みたいのだろう。そこは判るが
「悪いが茶葉がない。諦めろ」
ガーンとショックを受けた顔をするのは何故おまえか叶野よ。何でお前がそんな顔をすると思うも俺は代わりに
「紅茶の葉っぱならいくらでもある。これで耐えろ」
「あー、お土産の奴ですか?」
「いや?俺ように買ってきた奴」
えー、と非難がましい叶野の視線だが
「そうだよな。お前って奴は気に行ったらとことんのめり込むよな。周りが見えないくらいに」
先生のツッコミに俺は頷き
「その結果城の家具集めでヨーロッパ中駆けずり回った良い思い出。あれだけ移動するにはそれぐらいの勢いがないとね」
「二人は知らんだろうがこいつ目利きの骨董商に物の見方を教えてもらって独自で知識をインストールして実際物に触って物にした馬鹿だぞ。
さらに買って直させてにんまり笑ってる気持ち悪い奴だぞ」
「せんせーひでえ!!!」
自分の事なのに思わず笑ってしまうのは俺の努力をどん引きしている二人がいるからなんか悲しくなってきたのを吹き飛ばす為。
「絶対フランスに呼んだのに放置したこと未だに根に持ってるだろ」
「ったり前だ!片言の英語でフランス語圏に放置される寂しさ理解できるか?!」
「その割には好き勝手してたくせに」
「他にやる事が無かったんだよ!」
異国にてひとりぼっちの寂しさを思い出してかちょっぴり涙目になっているのを申し訳ないと思いつつも笑ってしまう。
だって先生だしね。なんては言わないけど
「それより飯にしようぜ。連絡入れたけど俺達圭斗の所で叶野のジャンクフードデビューに付き合って来たから先生にもおすそ分け」
「何だそのジャンクフードデビューって」
「叶野君の初体験の話し聞く?」
そう言う言い方をすれば恥ずかしそうな顔を敷いて立ち上がり
「風呂入って来るから!」
「おう、行って来い!柊、長風呂防止について行け!」
「仕方がないですね」
そう言って逃げ出すのを見送った後で声を殺して笑い転げる。
先生も見送りながら
「今時こんな程度で照れる何て心配だわぁ」
「何、それも合わせてからかってるんだから。
今までいかに親に支配された狭い世界に居たか、折角親の反対を押し切ってまでイギリス留学にしたかこの短い期間に色々体験させてやればもう親の言いなりにはならないさ」
「そして綾人のようになるのはこれもまた問題だと思うんだけど?」
何で見習うべき人間が周囲に居ないのかと唸って見せるその中にちゃんと自分を入れているだけ自分の事をよく理解しているようで何よりだと思った。
忘れてはいけない。
烏骨鶏と先生を野放しにしているのだ。無茶な事はしてないだろうが何をしているのかが不安だ。
薄らと暗くなった夕闇に車のライトに驚いて烏骨鶏が大騒ぎする。
やっぱりと言うか鳥小屋に入れてくれなかったかと当然のように思いながら木槌で合図を送って烏骨鶏を小屋へと帰ってもらう。よくしつけられた娘たちだと感心しながら時々まざる息子の朝の一声が長閑でいいなと思ってた時期はもう過ぎた。
と言うか、オスは処分したのにどこで沸いているのかと考えるも大和さんが定期的の投入していると言う事実をもう少し先に知るまでどこぞに隠れて暮している不良烏骨鶏がいると本気で思ってた俺は間抜けだと思う。
それはさておき、先生の晩ご飯にフライドチキンを持って帰れば珍しく仕事をしていたようで庭側の縁側に机を寄せて途中で力尽きた休み明けのテスト問題の作りか怪我畳の上に広がり、子守唄のように側で点けっぱなしのテレビが高校野球の延長戦が繰り広げられる様子を映し出していた。
叶野と柊はそんな姿をもの珍しそうに眺めながらテスト問題に目を落す。
「なんか懐かしい問題ですね」
柊がそっと呟けばすぐ傍にある人の気配に先生の意識が浮上する。
起こしてしまったかと思って慌ててすみませんと言いそうになる柊が口を開く前に
「せんせーただいまー。
そこで寝ると風邪ひくぞ」
「あー、風が気持ちよかったと思ったらもうこんな時間か」
テレビの上にかかってる年代物の壁時計で時間を見ようとした所で軽快な音がテレビから響き、それからわっと言うような大歓声があふれ出た。
「あら、やっと決着ついたのね」
延長する事十二回。タイブレークに入るかと思ったけどその前に納得のサヨナラホームランを決めてくれたようだった。
「二回裏ぐらいから意識がなかったから随分寝たわね」
「烏骨鶏が小屋に入ってないわけだ」
そんな先生に煎茶を渡す。今はウォーターサーバーがないのでポットのお湯で作るティーバックのお茶だが先生は人に入れてもらうんだからそれで十分だと一見親切を装いつつも逆の立場になった時めんどいからと言うのが本音なのを俺はちゃんと理解しているからのこのやり取り。
ちゃんとした家のお子様達はちゃんと急須で淹れようぜと言う視線を俺に向けていた。さすがにイギリスでティーバッグの物足りないお茶を飲ませただけあって、簡単にお茶の葉が手に入らないから妥協して飲んでいるものの、帰って来てからは妥協しないと言うように
「お茶でしたら淹れますよ?」
柊がちゃんと淹れれば美味しい。いや、きっとおいしいお茶を飲みたいのだろう。そこは判るが
「悪いが茶葉がない。諦めろ」
ガーンとショックを受けた顔をするのは何故おまえか叶野よ。何でお前がそんな顔をすると思うも俺は代わりに
「紅茶の葉っぱならいくらでもある。これで耐えろ」
「あー、お土産の奴ですか?」
「いや?俺ように買ってきた奴」
えー、と非難がましい叶野の視線だが
「そうだよな。お前って奴は気に行ったらとことんのめり込むよな。周りが見えないくらいに」
先生のツッコミに俺は頷き
「その結果城の家具集めでヨーロッパ中駆けずり回った良い思い出。あれだけ移動するにはそれぐらいの勢いがないとね」
「二人は知らんだろうがこいつ目利きの骨董商に物の見方を教えてもらって独自で知識をインストールして実際物に触って物にした馬鹿だぞ。
さらに買って直させてにんまり笑ってる気持ち悪い奴だぞ」
「せんせーひでえ!!!」
自分の事なのに思わず笑ってしまうのは俺の努力をどん引きしている二人がいるからなんか悲しくなってきたのを吹き飛ばす為。
「絶対フランスに呼んだのに放置したこと未だに根に持ってるだろ」
「ったり前だ!片言の英語でフランス語圏に放置される寂しさ理解できるか?!」
「その割には好き勝手してたくせに」
「他にやる事が無かったんだよ!」
異国にてひとりぼっちの寂しさを思い出してかちょっぴり涙目になっているのを申し訳ないと思いつつも笑ってしまう。
だって先生だしね。なんては言わないけど
「それより飯にしようぜ。連絡入れたけど俺達圭斗の所で叶野のジャンクフードデビューに付き合って来たから先生にもおすそ分け」
「何だそのジャンクフードデビューって」
「叶野君の初体験の話し聞く?」
そう言う言い方をすれば恥ずかしそうな顔を敷いて立ち上がり
「風呂入って来るから!」
「おう、行って来い!柊、長風呂防止について行け!」
「仕方がないですね」
そう言って逃げ出すのを見送った後で声を殺して笑い転げる。
先生も見送りながら
「今時こんな程度で照れる何て心配だわぁ」
「何、それも合わせてからかってるんだから。
今までいかに親に支配された狭い世界に居たか、折角親の反対を押し切ってまでイギリス留学にしたかこの短い期間に色々体験させてやればもう親の言いなりにはならないさ」
「そして綾人のようになるのはこれもまた問題だと思うんだけど?」
何で見習うべき人間が周囲に居ないのかと唸って見せるその中にちゃんと自分を入れているだけ自分の事をよく理解しているようで何よりだと思った。
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