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山にお帰り 9
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えぐえぐえぐ……
結局玄関先ですすり泣く不気味な鳴き声を落す綾人に近所迷惑だと言われる前に家の中に入れた叶野だった。
ちなみに家の中で今も泣き続きている。俺より年上のアラサーなのに容赦なく泣いてくれる。
えぐえぐえぐ……
ティッシュの箱とクッションを抱えて一人ソファを独占するのは四年間の付き合いで知っている。
普段クールぶって年上だからと面倒見のいい表面を剥がした内側は何所までも性質の悪い事も知っている。よってこれは……
絶対の嫌がらせだ。
その証拠に飯田さんは柊にキッチンの様子を聞いて温かな紅茶を準備している。
代わりに俺は床に座って何であの時扉を閉めたのか。そしてまた開けてしまったのか自問自答を続けていた。
どのみち俺の選択は扉を開けて家の中に招いて気が済むまで付き合わなくてはいけないと言う事実。
馬鹿だなあ……
柊の冷たい視線が物語る。
勝手に人のスマホを外部操作してGPSを起動して居場所を探してここまで来た以上家の中に入れる選択一択なのに何で扉を閉めたのかと言う冷ややかな視線はどうしてここで選択を間違えたと言う物。
と言うか
「何で柊はこの違法操作をすんなり受け入れてるんだ」
イギリスから帰って来る直前に買い替えた物。理由は落して派手に画面を割った挙句の池ポチャと言うコンボ。
泣いた。
バックアップは取ってあるとはいえ世界を恨んだ。
すぐに柊に連れられて買い替えた物のセッティングをしたのは確か綾人のアパートで……
「ひょっとしていろいろ見られたとか?」
「見られたって言うか色々広げたのは叶野の方。
見られたら最後の人の所で良く広げれるなって思ったけどスマホに気を取られて気付いてなかっただけなの?バカでしょ?」
「柊が色々と酷いよ……」
今だえぐえぐと泣き続けているこの人をどうすればいいかと思うも今は柊の不機嫌さを何とかしてほしい。
単に寝不足が原因なだけなのは四年以上の付き合いで判っているけど。
「綾人さん、多紀さんが酷いのは今更じゃないですか。熊の目の前に飛びだす餌なだけの人なんですから。
絡んだ時点でろくな事がないのは判ってる事じゃないですか。冷静になれば程よい距離で近寄らせない事だって綾人さんなら可能じゃないですか」
言いながら俺達の前にそっと紅茶を置く。
「アッサムティーです。
さすが柊君。イギリス時代に良い茶葉集めてきましたね」
「ええと、入れ物の缶がおしゃれなのでついつい集めてしまいました」
「集めちゃいますね。わかります。
俺もフランスに居た時コーヒー豆の入った缶とか集めて飾っていたのですが……」
なんて言ってそのまま口を閉ざしてしまった。
静かに紅茶を飲んでほっとしたかのようなため息を零した綾人がやっと泣くのを止めたタイミングだった一瞬の無音。
「ふふふ……
そう言えばあの缶、仕事から帰った時に全部無くなってたな……」
叶野でなくとも柊ですら理解できずに固まる中
「フランスの時の彼女さん?人の物勝手に処分する人なら別れて良かったじゃん」
「まぁ、俺も処分されたんですけどね」
ふふふ…… ふふふ……
何てぶっ壊れるように笑いだす飯田に柊も叶野もさすがに身動き取れず、ただただ静かに呼吸を繰り返している中
「そういやオリオールの奥様方情報から噂を聞いたよ。
何でも結婚詐欺をしたとか何とかで捕まったんだってさ」
ぶはっ!!!
吹いたのは誰か。
「何か法的に伴侶になった相手のアラを探して離婚や婚約の破棄をして慰謝料せしめてを繰り返してたらしく、最近の恋人の家族が慎重な人だったらしくって詳しく調べたらこう言った経歴が多い事が発覚した所で、またしでかそうとした所を逆に問い詰めて行って事件発覚ってなったらしいよ」
綾人はこくりともう一口紅茶を口に含み
「俺は聞いてません……」
「聞ける状態になったら聞かせてやってくれって。もう一年ぐらい前の話しだよ」
言いながらこんな事ならもっと早く言えばよかったと思いながらもだ。
「叶野、悪いけど寝たいからソファ借りるな」
有言実行と言う様にクッションを抱えて寝ようとする綾人は二つあるうちのクッションを飯田に投げつけて
「寝心地悪いけどいっその事寝てから帰ろうか」
そう言ってフローリングを指さす。
さすがに酷いと誰もが思うが
「そうですね。今は一人にならない方がいいかもしれませんので」
そう言って綾人の足元辺りでごろりとなる。
突如家を占領しに来た二人がリビングの乗っ取りをした事に我に返った叶野が気が付いた物の柊が
「綾人さんはともかく、飯田さん。ゲストルームがすぐ使えるのでそちらを使ってください。この後のお仕事に響きますよ」
肩をポンポンと叩けば直ぐに立ち上がり
「申し訳ありません。お借りします」
この後の仕事の為にも遠慮はしないと言う様に飯田はすぐに案内されるままゲストルームへと向かい、何故かその後ろを綾人が付いていて一緒の部屋へと吸い込まれていくのを見まちがいかという様に叶野は目を擦り、当然空っぽになったクッションの無くなったソファを見て夢ではない事を理解した。
結局玄関先ですすり泣く不気味な鳴き声を落す綾人に近所迷惑だと言われる前に家の中に入れた叶野だった。
ちなみに家の中で今も泣き続きている。俺より年上のアラサーなのに容赦なく泣いてくれる。
えぐえぐえぐ……
ティッシュの箱とクッションを抱えて一人ソファを独占するのは四年間の付き合いで知っている。
普段クールぶって年上だからと面倒見のいい表面を剥がした内側は何所までも性質の悪い事も知っている。よってこれは……
絶対の嫌がらせだ。
その証拠に飯田さんは柊にキッチンの様子を聞いて温かな紅茶を準備している。
代わりに俺は床に座って何であの時扉を閉めたのか。そしてまた開けてしまったのか自問自答を続けていた。
どのみち俺の選択は扉を開けて家の中に招いて気が済むまで付き合わなくてはいけないと言う事実。
馬鹿だなあ……
柊の冷たい視線が物語る。
勝手に人のスマホを外部操作してGPSを起動して居場所を探してここまで来た以上家の中に入れる選択一択なのに何で扉を閉めたのかと言う冷ややかな視線はどうしてここで選択を間違えたと言う物。
と言うか
「何で柊はこの違法操作をすんなり受け入れてるんだ」
イギリスから帰って来る直前に買い替えた物。理由は落して派手に画面を割った挙句の池ポチャと言うコンボ。
泣いた。
バックアップは取ってあるとはいえ世界を恨んだ。
すぐに柊に連れられて買い替えた物のセッティングをしたのは確か綾人のアパートで……
「ひょっとしていろいろ見られたとか?」
「見られたって言うか色々広げたのは叶野の方。
見られたら最後の人の所で良く広げれるなって思ったけどスマホに気を取られて気付いてなかっただけなの?バカでしょ?」
「柊が色々と酷いよ……」
今だえぐえぐと泣き続けているこの人をどうすればいいかと思うも今は柊の不機嫌さを何とかしてほしい。
単に寝不足が原因なだけなのは四年以上の付き合いで判っているけど。
「綾人さん、多紀さんが酷いのは今更じゃないですか。熊の目の前に飛びだす餌なだけの人なんですから。
絡んだ時点でろくな事がないのは判ってる事じゃないですか。冷静になれば程よい距離で近寄らせない事だって綾人さんなら可能じゃないですか」
言いながら俺達の前にそっと紅茶を置く。
「アッサムティーです。
さすが柊君。イギリス時代に良い茶葉集めてきましたね」
「ええと、入れ物の缶がおしゃれなのでついつい集めてしまいました」
「集めちゃいますね。わかります。
俺もフランスに居た時コーヒー豆の入った缶とか集めて飾っていたのですが……」
なんて言ってそのまま口を閉ざしてしまった。
静かに紅茶を飲んでほっとしたかのようなため息を零した綾人がやっと泣くのを止めたタイミングだった一瞬の無音。
「ふふふ……
そう言えばあの缶、仕事から帰った時に全部無くなってたな……」
叶野でなくとも柊ですら理解できずに固まる中
「フランスの時の彼女さん?人の物勝手に処分する人なら別れて良かったじゃん」
「まぁ、俺も処分されたんですけどね」
ふふふ…… ふふふ……
何てぶっ壊れるように笑いだす飯田に柊も叶野もさすがに身動き取れず、ただただ静かに呼吸を繰り返している中
「そういやオリオールの奥様方情報から噂を聞いたよ。
何でも結婚詐欺をしたとか何とかで捕まったんだってさ」
ぶはっ!!!
吹いたのは誰か。
「何か法的に伴侶になった相手のアラを探して離婚や婚約の破棄をして慰謝料せしめてを繰り返してたらしく、最近の恋人の家族が慎重な人だったらしくって詳しく調べたらこう言った経歴が多い事が発覚した所で、またしでかそうとした所を逆に問い詰めて行って事件発覚ってなったらしいよ」
綾人はこくりともう一口紅茶を口に含み
「俺は聞いてません……」
「聞ける状態になったら聞かせてやってくれって。もう一年ぐらい前の話しだよ」
言いながらこんな事ならもっと早く言えばよかったと思いながらもだ。
「叶野、悪いけど寝たいからソファ借りるな」
有言実行と言う様にクッションを抱えて寝ようとする綾人は二つあるうちのクッションを飯田に投げつけて
「寝心地悪いけどいっその事寝てから帰ろうか」
そう言ってフローリングを指さす。
さすがに酷いと誰もが思うが
「そうですね。今は一人にならない方がいいかもしれませんので」
そう言って綾人の足元辺りでごろりとなる。
突如家を占領しに来た二人がリビングの乗っ取りをした事に我に返った叶野が気が付いた物の柊が
「綾人さんはともかく、飯田さん。ゲストルームがすぐ使えるのでそちらを使ってください。この後のお仕事に響きますよ」
肩をポンポンと叩けば直ぐに立ち上がり
「申し訳ありません。お借りします」
この後の仕事の為にも遠慮はしないと言う様に飯田はすぐに案内されるままゲストルームへと向かい、何故かその後ろを綾人が付いていて一緒の部屋へと吸い込まれていくのを見まちがいかという様に叶野は目を擦り、当然空っぽになったクッションの無くなったソファを見て夢ではない事を理解した。
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