人生負け組のスローライフ

雪那 由多

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大変恐縮ではございますがお集まりいただきたく思います 6

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「ついに旅館営業にまで手を出すことにしたのかい?」
 森下さんは口はぞんざいに、でも視線はキラキラと良い家だなーと目を輝かす横で山川さんがただの良い家なわけがないだろうと山下さんの事を説明して驚くような皆様の視線が俺にホントなのかと何度も伺っていた。いやあ、さすがにこれだけ見つめられると照れるよと顔を赤らめてしまうも
「俺が営業するわけじゃなく例によって丸投げです。
 諸事情がありまして直接会ったときにお話ししますが、知り合いのホテルマンが独立しようとしていましてちょっとこの家をお預かりする事になったタイミングも重なり、偶然にもお二方共お知り合いのようで思い切って第二の人生の為にとこの家の持ち主の方が手放した後始めようかと思いまして」
 眉間にしわを寄せて意味わからんと言う圭斗に
「この家を手放す事情があって、手っ取り早く俺に買い取ってくれと言う流れになり、だったら管理人を置こうと引退予定のホテルマンに管理させようという流れになったんだ」
 なるほどと圭斗と宮下と園芸部が納得してくれていた。背後では青さんをはじめとした若手もそれなら俺も分かったというあたり俺の説明ってそんなにも悪いのかと不安になるも苦笑している森下さんがいるのでそうじゃないと信じていたい。
「一応地図を送っておくので……」
「だったら来週の週末に伺わせてもらおう。
 それまでにここを仕上げられるだろうし、打ち上げを予定していたからそれをちーっと足を延ばして見学と手が入れられる所は手直しすればすぐに終わるだろ」
 長沢さんがやれやれというように簡単な予定を立ててくれた。
 こういう時だれも反対できない発言権ある人がいると助かるな。
 どれだけ助けられているのかと思いつつも感謝して
「今から予定決められる人からホテル取りますが……」
「ああ、そこはあいつらの所に行くから気にするな。あいつらの家の進行具合も見に行きたいから吉野の、気遣いばかりしないでたまには甘えておけ」
 俺に気づかいするなと言いつつあいつらにはいいんだと浮かんだ疑問はすぐ背後で宮下がさっそくと言うように交渉してくれていた。
 仕事早いなと感心しつつも何やらものすごい笑顔でOKサインをもらうことが出来た。
「水野あわれ……」
 去年の秋に衝動的に家を買った勇者・水野は偶然にも薪風呂、土間台所付きの古民家を手に入れた。職場まで電車で一本、それなりに通勤時間はかかるもののそこはリモートOKの職場。家を少しずつ直しながら住んでいるという。
 当然ながら相棒の植田が週末遊びに来るし、当然のように上島兄弟はもちろん園田や陸斗達まで休日は転がり込んでいるという。
 まあ、あいつらのたまり場がうちから水野の所に変わっただけの話し。
 家づくりも陸斗主体でどんどん進めているし、難しい所はすでに手に入れた時に襲撃して直しているので問題もない。こつこつと直していて陸斗はいつの間にか自分の部屋もゲットしていたのが対価だったという。
 植田も陸斗も週末は職場に近いワンルームアパート暮らしで週末は田舎暮らしと言う理想的な環境を手に入れてよかったなと言うところ。逆に水野も職場に顔を出した時は植田のアパートに転がり込むという。ほんと仲良いなと感心する。

そんな水野ハウスはもともと山の家にあこがれて購入した家なので皆さんも心地よく過ごすことができ、高速からそれなりに遠くない場所。交通の便も悪くないし、今回の依頼先までそこまで遠くない。
 まあ、水野もすっかり皆さんと仲良くなっているし、圭斗がいれば大丈夫だし、カオスになるだろう人数には宮下がいれば問題がない。
 有能になったなと感心していればスマホにはどんどん参加表明の連絡が入ってきた。食事代ぐらいは持たないとなと後で水野に食べたいものを聞いておこうと思う。

「それよりも綾人、この話飯田さんにちゃんとした?」

 宮下が東京の事ならちゃんと相談してよと言うような言葉に冷や汗がタラリ。こじらせると面倒くさい人をすっかり忘れていた。
 ねちねちと地味に俺が得意としない料理のオンパレードになるんだよな。
 胃袋をつかまれた側からでは地味に堪える制裁はほんとメンタルをやられる。そして逆らえないという認識が植え付けられて行って、世のお父さん方はこうやって家を支配されていくのねと謎の納得をしてしまう。
 それよりもだ。こんなところで考えている間にすぐに連絡しないとと意識を変えて
「まだしてない。みんなの様子を聞いてからお願いするつもりだったから……」
「とりあえずあとの事はLIMEに入れておくからすぐに連絡すること」
「報連相だね。とりあえず飯田さんとは現地集合、現地解散で行くから。そっちの方が家からも近いしね」
「なんかいい所に家を構えているな……」
 森下さんのボヤキに山川さんがものすごく便利なところだよと頷いていた。
 蒼さんたちはすぐにスマホのマップで位置を確認してすげーすげーなんて言っているようにほんとすごい所に住んでいるんだよ。土地代にびっくりだよと言うのは墓までもって行きたい土地のお代だろうか。沢村さんにこんな金額を軽々しく動かすなと言われてしまったけど、たぶん人生の中でこれ以上のものを買うつもりはないからと平謝りしたのは昨日の話しなのに懐かしくて涙が出そうだ。
「じゃあ、とりあえずまたお世話になります。よろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げてお願いをして通話を終了。
 そしてすぐに飯田さんに連絡をして……

「つまり、また家を買ったと。そして今度は東京で……
 俺が言うのもあれですが綾人さん、バカでしょう。あんな土地代だけの場所の家を買うなんて……」

 言葉とは裏腹にもう信じられないと頭を抱える御犬様は次の日の朝さっそくと言うように内見希望と言うように遊びに来てくれた時の唖然とした反応はさすがに少し笑えた。
 



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