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短い秋の駆け足とともに駆けずり回るのが山の生活です 6
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「夢を持つのはいいけど、あいつ高認取れる気でいるのか?」
自分でフラグ立てるのかと心配してしまうのは忙しさに週末ぐらいにしか勉強を見ることが出来なかったから。
それに対して一瞬飯田が眉を顰めるのは綾人の疑問は世間一般的なレベルを知らないから。
見れば暗記、見れば計算なぶっ壊れ頭脳には標準なんてものは搭載されていない。
中学時代普通に一般教育に苦労した飯田とて通常教育をイージーモードで過ごした綾人を羨ましく思うも、彼の退屈過ぎる日常の苦痛を共に過ごすことで異常さを理解はできた。
一度綾人と一緒に道を歩いていた時に工事現場を歩いていた時がある。
台風にも似たかなり風の強い日で、こんな風が強い日に安全ネットを下ろしたままで大丈夫か、なんて思いもせずに並んで歩いていた日だった。
何とも言えない金属音の悲鳴が聞こえた後綾人は工事現場を見上げ、俺の手をむんずとつかんだと思えば俺をとある何でもない場所に立たせて
『絶対一歩でもここから動かないでね』
なんて言った後猛ダッシュをしたかと思えば先行くベビーカーを押す母子の子供が座るベビーカー事担ぎ上げたかと思えば
『走ってっっ!』
いきなりわけのわからない中で子供の連れ去りとその合図に走り出す母親。
綾人さん何を!
なんて言う間もなく足さえ踏み出せずにいれば目の前を何かが通り過ぎた。
あまりに目の前の出来事にすぎには理解できなかったが……
その後の大きな悲鳴で自分の身に置かれたことを理解した。
なんの危険認識をしていなかった工事現場の安全ネットが倒れ、ちょうど俺がいた場所だけネットがすっぽりと何もなく、無事何事もなく俺は周囲のパニックなんて気にも留めずに立ち呆けていた。
そんな身の危険よりも目の前のなんとか逃げ切った綾人と母子を見て腰が砕けて座り込んでしまった。
最初こそものすごい形相の母親だったけど、すぐ背後の爆音に振り向いて、綾人から受け取ったベビーカーで泣き出した子供を抱き寄せて一緒に泣きながら感謝をされる様子に綾人は少し困ったかのようにその場を離れ俺を迎えに来てくれた。
『驚きましたね』
全く驚いてない顔の綾人に
『どうして一人で無茶を』
『あー、飯田さんの足だと間に合わないから』
どこか申し訳なさそうな顔に確かに身長の割には標準程度の記録しかないけどと少し傷つきながらも
『でもどうしてここなのですか?』
数十センチ横に倒れた足場を組んだパイプどころかネットも俺に触れることなく大騒ぎしている周囲を他所に未だに転がっていて……
『ちゃんと計算したからね。ここが絶対大丈夫な確率だったから』
背後に向かって走るという計算もあるがと振り向けばそこには崩れた鉄パイプや落下した資材が散乱していた。
『綾人さんにかかればこのような事件も想定のうちなのですね』
『風速とか重量に鉄パイプが落ちた時の速度、散乱する不特定の動きの乱数を加えて計算しただけだよ』
なんて事のないという顔で俺に伸ばした手を掴めば引き上げてくれて、そのままこんな事故が起きる前と同じように歩き出す足に導かれてそんな大きな事故があった事さえなかったようにその場を離れたのだった。
もちろんそのあとニュースになった時その現場にいたことを青山の目の前でぽつりと漏らしてしまえば目じりに涙を浮かべながら半狂乱の中大説教を食らう事になったのはいい思い出だ。
いや、まったくいい思い出ではない。
このような大事故さえ綾人に取ったら何の当たり障りのない普通の日常なのだ。
ゆえに自分の意志でもどうしようもない自然との理屈ではない日常に身を置いているというのもなんとなく理解できる。
そしてなかなか理解しがたい行動をとる宮下君を一番の友人と置くのも理解できる。
計算外の行動をとる彼ならこそ興味深いと言う処なのだろうが、いつぞやかの先生の教え子さんのような会話がかみ合わない生き物はただ切り捨てるだけの残酷さも当然秘めている。
とはいえ、一年かけて相変わらず異常な詰込み式勉強法をとっているのに高認取れる気でいるのかと言うのは見くびってもらっては困るというものだろう。
こういうのは大変失礼かもしれないが浩志君は植田君達と違い基礎学力はしっかりできていたのだ。
中学の時から勉強について行けられなくなったとは言え、彼らと違い勉強したくなくてついて行けられなかったわけではないのだ。
学びたいのに環境が学ばせてもらえなかった。
そんなジレンマはこの安定した環境の中で発散されてものすごい速度で勉強がはかどっているらしいが、こうやって見るとやはり身近なところにいた相手を見て育っただけあり親戚と言う似たような子供なのだなと微笑ましく見てしまった。
綾人さんに言えば絶対嫌な顔をするので言わないけど。
「陸斗君達が拾い集めた過去問でも十分に合格ラインをとっています。
今はもうテストに慣れるように繰り返している最中ですね」
「あいつら鬼だな。自分が分かるからって、人でなしだな」
思わず無言。
そういう風に仕込んだ本人が言うか?
そもそも彼らの親分の綾人さんが言うのか?
仕上がりがどこでも通用する具合か目標達成程度かの差。
いや、綾人さんならインプットしたものをアウトプットさせた程度にしか思ってないのだろ。
相変わらずわかんないよなと思っていれば
「じゃあ、ごはんも食べたし次行きましょうか」
「次ですか?」
どうやら今日はとことん突き合わされるつもりらしい。
次はどこになるのか少しだけ覚悟を決めていればペットボトルとおやつと鉈を装備して今度は裏山から山に登るのだった。
自分でフラグ立てるのかと心配してしまうのは忙しさに週末ぐらいにしか勉強を見ることが出来なかったから。
それに対して一瞬飯田が眉を顰めるのは綾人の疑問は世間一般的なレベルを知らないから。
見れば暗記、見れば計算なぶっ壊れ頭脳には標準なんてものは搭載されていない。
中学時代普通に一般教育に苦労した飯田とて通常教育をイージーモードで過ごした綾人を羨ましく思うも、彼の退屈過ぎる日常の苦痛を共に過ごすことで異常さを理解はできた。
一度綾人と一緒に道を歩いていた時に工事現場を歩いていた時がある。
台風にも似たかなり風の強い日で、こんな風が強い日に安全ネットを下ろしたままで大丈夫か、なんて思いもせずに並んで歩いていた日だった。
何とも言えない金属音の悲鳴が聞こえた後綾人は工事現場を見上げ、俺の手をむんずとつかんだと思えば俺をとある何でもない場所に立たせて
『絶対一歩でもここから動かないでね』
なんて言った後猛ダッシュをしたかと思えば先行くベビーカーを押す母子の子供が座るベビーカー事担ぎ上げたかと思えば
『走ってっっ!』
いきなりわけのわからない中で子供の連れ去りとその合図に走り出す母親。
綾人さん何を!
なんて言う間もなく足さえ踏み出せずにいれば目の前を何かが通り過ぎた。
あまりに目の前の出来事にすぎには理解できなかったが……
その後の大きな悲鳴で自分の身に置かれたことを理解した。
なんの危険認識をしていなかった工事現場の安全ネットが倒れ、ちょうど俺がいた場所だけネットがすっぽりと何もなく、無事何事もなく俺は周囲のパニックなんて気にも留めずに立ち呆けていた。
そんな身の危険よりも目の前のなんとか逃げ切った綾人と母子を見て腰が砕けて座り込んでしまった。
最初こそものすごい形相の母親だったけど、すぐ背後の爆音に振り向いて、綾人から受け取ったベビーカーで泣き出した子供を抱き寄せて一緒に泣きながら感謝をされる様子に綾人は少し困ったかのようにその場を離れ俺を迎えに来てくれた。
『驚きましたね』
全く驚いてない顔の綾人に
『どうして一人で無茶を』
『あー、飯田さんの足だと間に合わないから』
どこか申し訳なさそうな顔に確かに身長の割には標準程度の記録しかないけどと少し傷つきながらも
『でもどうしてここなのですか?』
数十センチ横に倒れた足場を組んだパイプどころかネットも俺に触れることなく大騒ぎしている周囲を他所に未だに転がっていて……
『ちゃんと計算したからね。ここが絶対大丈夫な確率だったから』
背後に向かって走るという計算もあるがと振り向けばそこには崩れた鉄パイプや落下した資材が散乱していた。
『綾人さんにかかればこのような事件も想定のうちなのですね』
『風速とか重量に鉄パイプが落ちた時の速度、散乱する不特定の動きの乱数を加えて計算しただけだよ』
なんて事のないという顔で俺に伸ばした手を掴めば引き上げてくれて、そのままこんな事故が起きる前と同じように歩き出す足に導かれてそんな大きな事故があった事さえなかったようにその場を離れたのだった。
もちろんそのあとニュースになった時その現場にいたことを青山の目の前でぽつりと漏らしてしまえば目じりに涙を浮かべながら半狂乱の中大説教を食らう事になったのはいい思い出だ。
いや、まったくいい思い出ではない。
このような大事故さえ綾人に取ったら何の当たり障りのない普通の日常なのだ。
ゆえに自分の意志でもどうしようもない自然との理屈ではない日常に身を置いているというのもなんとなく理解できる。
そしてなかなか理解しがたい行動をとる宮下君を一番の友人と置くのも理解できる。
計算外の行動をとる彼ならこそ興味深いと言う処なのだろうが、いつぞやかの先生の教え子さんのような会話がかみ合わない生き物はただ切り捨てるだけの残酷さも当然秘めている。
とはいえ、一年かけて相変わらず異常な詰込み式勉強法をとっているのに高認取れる気でいるのかと言うのは見くびってもらっては困るというものだろう。
こういうのは大変失礼かもしれないが浩志君は植田君達と違い基礎学力はしっかりできていたのだ。
中学の時から勉強について行けられなくなったとは言え、彼らと違い勉強したくなくてついて行けられなかったわけではないのだ。
学びたいのに環境が学ばせてもらえなかった。
そんなジレンマはこの安定した環境の中で発散されてものすごい速度で勉強がはかどっているらしいが、こうやって見るとやはり身近なところにいた相手を見て育っただけあり親戚と言う似たような子供なのだなと微笑ましく見てしまった。
綾人さんに言えば絶対嫌な顔をするので言わないけど。
「陸斗君達が拾い集めた過去問でも十分に合格ラインをとっています。
今はもうテストに慣れるように繰り返している最中ですね」
「あいつら鬼だな。自分が分かるからって、人でなしだな」
思わず無言。
そういう風に仕込んだ本人が言うか?
そもそも彼らの親分の綾人さんが言うのか?
仕上がりがどこでも通用する具合か目標達成程度かの差。
いや、綾人さんならインプットしたものをアウトプットさせた程度にしか思ってないのだろ。
相変わらずわかんないよなと思っていれば
「じゃあ、ごはんも食べたし次行きましょうか」
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