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勝ち負けの線引きはどこにある?! 1
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この冬、年の離れた友人が旅立った。
その友人のお願いから考えるとどうやら俺の事を知っていたようだった。
一切、最後まで口には出さなかったが、遺品整理とは言わないがそれなりに広い家を掃除していればそういったやり取りを見つけることが出来た。
例えば俺がうっかり大株主になりかけた電機メーカーの社長さんとか。
直接の面識はいまだに株式総会なんて行った事がなかったので面通しはなかったが、俺の動向はちゃんと伝わっていたらしい。
注視するような存在じゃないのに……
簡単に財産調べられてターゲットにされたらしい。
いや、あのころ城とバイオリンでガンガン稼いでいた時だったからね。
さすがに反省。
なんてできないけど?
だって購入したものにかかる税金を稼がないといけないからね……
そんな事で落ち込んでいるわけもいかず春を迎えた。
別れと出会いの春。
なんと葉山が医師免許を取り無事卒業となった。
当面は東京の病院で修行する事になるが、後々この街に帰ってきて麓の病院に所属したいと言う。
しばらく帰ってこれそうもないけど、ゆくゆくは俺が住む村の臨時医師ぐらいにはなりたいと言うが
「お前外科医だろ」
「麓の病院で我慢します」
「って言うか、お前ほんと陸斗大好きだな。ストーカーかよ」
「別にいいじゃないですか。陸斗に出会えたからクズにならずに済んだので。恩人とはいつまでも仲良く居たいと言うものです」
「そこに一番の恩人のはずの俺がかけらも存在していないのが納得いかないが、まあ、これからも陸斗の番犬でいるのなら良しとしよう」
「……」
少しだけ苦いものを奥歯で噛んだような顔をする葉山に笑いながら
「お前の人生だ。まずは自分が幸せになる事を考えろ。陸斗ばかりに構う事はもうないんだから」
すでに独り立ちして立派に職場でも認知されて楽しく仕事をこなしながら水野の家に潜り込んで畑仕事に竈や薪風呂を堪能する渋い親友の弟は申し訳ないけど当面圭斗の会社で働くポジションはない。
いや、さすが自らブラックに飛び込むあの会社の従業員はおかしなほどスキルを爆上げされていて、謎の絆と言うべきか横の繋がりの強固さはなぜかどれも俺のせいだと言われている。イミフ……
だけど凝り固まってしまう仲良しこよし集団だから新しい風は吹きこんでほしいもの。
起爆剤ではないが、コツコツ、着々と仕事をしていく陸斗の仕事のペースは鉄二さんや長沢さん仕込み。早くて丁寧で綺麗な仕上がりが三拍子そろっている。さらに今の職場で培った技能を合わせれば仲良しこよし集団なんて目じゃない。
圭斗達の仕事が悪いのではない。
成長する為のステップアップが必要なだけなのだ。
別名森下さんレベル確保作戦なので、上手く行けば俺の持つ空き家をすべて圭斗の会社だけでフルリフォームできてしまうのだ。
そうなればわざわざ森下さんに来ていただくこともなくなり、もっと我が儘を言えると言うもの。
時間はかかったがいい人材を育て上げた。
感涙としてしまうのは仕方がないだろう。
陸斗に関してはもうちょっと成長してもらいたいので、その間のストレスは水野の所で癒してもらえばいいだろうと心配はしていない。
園田に至ってはなぜか上島ブラズザーズとつるんで何やら起業しようとしているらしい。
俺を警戒して三人そろって口を割らないが、まあ、大体わかっている。
自分たちで畑を耕し、その野菜で商売をする。
この点は高校時代からぶれないのは見事。
下田もどうやら一枚絡んでいるようで、今現在話の進展はそこまで。きっとこれもここまでの企画倒れだろうが、だんだん具体的に話をするようになる上島ブラザーズのやる気にはどこにたどり着くのかがドラマを見ているようでハラハラする。
他人の人生って面白いな。
巻き込まれなければなおいい。
複雑な心の中をとりあえず気にしないふりをしてそろそろ方向性が固まりかけた上島ブラザーズの答えにドキドキするのは、やはり巻き込まれるのが分かっているからだろうか……
そんな愉快な兄弟の寝言を聞きながら
「おう、入学おめでと」
「綾ちゃんありがとう」
なんと浩志がふもとの町の林業系の専門学校に無事入学できた。
かつて俺も考えてみた事もあったがあいにく寮生活となるので畑と山の手入れが出来なくなるので止めた学校でもある。
ありがたい事に山の手入れぐらいなら元本職の方々がいるのでそちらにマンツーマンで教えてもらう方が効率はいい。
決して1:1ではなく1:ご近所の皆さんと言う対比がどこかおかしいけど、おかげで俺も立派な山男になっていた。
浩志もこうやってうちの山の管理をするのかと思っていたけど
「海外の山とかNPO法人みたいなもので行ったりもするらしいです。
おいおい、この山の管理とかさせてもらえれば嬉しいけど、それまでは武者修行じゃないけどたくさんの木と触れ合いたいって考えたんだ」
「ワールドワイドな思考だな」
こんなにも立派になってとバアちゃんの代わりにほろりと涙を落としそうになるものの
「綾ちゃんみたいに城を買ったりアンティークに精通してみたり、ましてや外国の学校に入学なんて事を考えれば些細な事だよ」
従弟様は圭斗の所に預けている間に結構いい性格に育ってしまった事に涙は引っ込んだ。
だってそうだろ?
どう考えたってこの思考は圭斗や宮下、そして先生たちの考え方そのものだ。
立派に朱に染まってたくましくなった従弟殿は再会した時のきょどった印象はなくなり、与えられたミッションをこなす、ブラック仕様の職場に喜んで飛び込む残念仕様が完成されていた様子に俺はただ黙々と入学手続きを済ませ、必要なものは買えと入学祝を置いて山へと帰った。
その友人のお願いから考えるとどうやら俺の事を知っていたようだった。
一切、最後まで口には出さなかったが、遺品整理とは言わないがそれなりに広い家を掃除していればそういったやり取りを見つけることが出来た。
例えば俺がうっかり大株主になりかけた電機メーカーの社長さんとか。
直接の面識はいまだに株式総会なんて行った事がなかったので面通しはなかったが、俺の動向はちゃんと伝わっていたらしい。
注視するような存在じゃないのに……
簡単に財産調べられてターゲットにされたらしい。
いや、あのころ城とバイオリンでガンガン稼いでいた時だったからね。
さすがに反省。
なんてできないけど?
だって購入したものにかかる税金を稼がないといけないからね……
そんな事で落ち込んでいるわけもいかず春を迎えた。
別れと出会いの春。
なんと葉山が医師免許を取り無事卒業となった。
当面は東京の病院で修行する事になるが、後々この街に帰ってきて麓の病院に所属したいと言う。
しばらく帰ってこれそうもないけど、ゆくゆくは俺が住む村の臨時医師ぐらいにはなりたいと言うが
「お前外科医だろ」
「麓の病院で我慢します」
「って言うか、お前ほんと陸斗大好きだな。ストーカーかよ」
「別にいいじゃないですか。陸斗に出会えたからクズにならずに済んだので。恩人とはいつまでも仲良く居たいと言うものです」
「そこに一番の恩人のはずの俺がかけらも存在していないのが納得いかないが、まあ、これからも陸斗の番犬でいるのなら良しとしよう」
「……」
少しだけ苦いものを奥歯で噛んだような顔をする葉山に笑いながら
「お前の人生だ。まずは自分が幸せになる事を考えろ。陸斗ばかりに構う事はもうないんだから」
すでに独り立ちして立派に職場でも認知されて楽しく仕事をこなしながら水野の家に潜り込んで畑仕事に竈や薪風呂を堪能する渋い親友の弟は申し訳ないけど当面圭斗の会社で働くポジションはない。
いや、さすが自らブラックに飛び込むあの会社の従業員はおかしなほどスキルを爆上げされていて、謎の絆と言うべきか横の繋がりの強固さはなぜかどれも俺のせいだと言われている。イミフ……
だけど凝り固まってしまう仲良しこよし集団だから新しい風は吹きこんでほしいもの。
起爆剤ではないが、コツコツ、着々と仕事をしていく陸斗の仕事のペースは鉄二さんや長沢さん仕込み。早くて丁寧で綺麗な仕上がりが三拍子そろっている。さらに今の職場で培った技能を合わせれば仲良しこよし集団なんて目じゃない。
圭斗達の仕事が悪いのではない。
成長する為のステップアップが必要なだけなのだ。
別名森下さんレベル確保作戦なので、上手く行けば俺の持つ空き家をすべて圭斗の会社だけでフルリフォームできてしまうのだ。
そうなればわざわざ森下さんに来ていただくこともなくなり、もっと我が儘を言えると言うもの。
時間はかかったがいい人材を育て上げた。
感涙としてしまうのは仕方がないだろう。
陸斗に関してはもうちょっと成長してもらいたいので、その間のストレスは水野の所で癒してもらえばいいだろうと心配はしていない。
園田に至ってはなぜか上島ブラズザーズとつるんで何やら起業しようとしているらしい。
俺を警戒して三人そろって口を割らないが、まあ、大体わかっている。
自分たちで畑を耕し、その野菜で商売をする。
この点は高校時代からぶれないのは見事。
下田もどうやら一枚絡んでいるようで、今現在話の進展はそこまで。きっとこれもここまでの企画倒れだろうが、だんだん具体的に話をするようになる上島ブラザーズのやる気にはどこにたどり着くのかがドラマを見ているようでハラハラする。
他人の人生って面白いな。
巻き込まれなければなおいい。
複雑な心の中をとりあえず気にしないふりをしてそろそろ方向性が固まりかけた上島ブラザーズの答えにドキドキするのは、やはり巻き込まれるのが分かっているからだろうか……
そんな愉快な兄弟の寝言を聞きながら
「おう、入学おめでと」
「綾ちゃんありがとう」
なんと浩志がふもとの町の林業系の専門学校に無事入学できた。
かつて俺も考えてみた事もあったがあいにく寮生活となるので畑と山の手入れが出来なくなるので止めた学校でもある。
ありがたい事に山の手入れぐらいなら元本職の方々がいるのでそちらにマンツーマンで教えてもらう方が効率はいい。
決して1:1ではなく1:ご近所の皆さんと言う対比がどこかおかしいけど、おかげで俺も立派な山男になっていた。
浩志もこうやってうちの山の管理をするのかと思っていたけど
「海外の山とかNPO法人みたいなもので行ったりもするらしいです。
おいおい、この山の管理とかさせてもらえれば嬉しいけど、それまでは武者修行じゃないけどたくさんの木と触れ合いたいって考えたんだ」
「ワールドワイドな思考だな」
こんなにも立派になってとバアちゃんの代わりにほろりと涙を落としそうになるものの
「綾ちゃんみたいに城を買ったりアンティークに精通してみたり、ましてや外国の学校に入学なんて事を考えれば些細な事だよ」
従弟様は圭斗の所に預けている間に結構いい性格に育ってしまった事に涙は引っ込んだ。
だってそうだろ?
どう考えたってこの思考は圭斗や宮下、そして先生たちの考え方そのものだ。
立派に朱に染まってたくましくなった従弟殿は再会した時のきょどった印象はなくなり、与えられたミッションをこなす、ブラック仕様の職場に喜んで飛び込む残念仕様が完成されていた様子に俺はただ黙々と入学手続きを済ませ、必要なものは買えと入学祝を置いて山へと帰った。
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