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雪那 由多

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静かにならない昼下がり 2

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「ただいまー!」

 いつもは玄関に入ってから誰も居なくても帰ってきたことを報告するように上げる声を門を入った所で声を上げた理由は

「おう、お帰り。お前が昼にうどん食べるって言うから野菜のかき揚げを用意しておいたから食べていいぞ」
「颯也お帰りー」
「ただいまー。やったね!修司さんの天ぷら楽しみでしかない!にしても珍しいね玲さんがここに来るなんて」
「でしょー?
 修司がお昼ご飯用意するからって草取り手伝えいうからね」
 そういって俺と玲さんはぐるりとこの広い敷地を眺め
「だいぶ刈ってはあったけど機械じゃ手に入らない所の草刈りめっちゃハード!
 帰ってお風呂入りたーい!」
 喚きながらも草を刈る玲さん。その気持ちよくわかります。
「俺もご飯食べたら手伝うので!」
「助かる!」
「ちゃちゃっと食べてきます!」
「しっかり嚙めよー」
 はーい、なんて返事をしながら作業用の服に着替えてすぐさま冷凍うどんをレンジで解凍し、粉末のうどんスープをお湯で溶かす。
 ああ、このうどんスープで作るおでんもそろそろ食べ終えの頃か。
 大家さんが入院して修司さんが来てくれるまでの間持ち回りで晩御飯を作っていたけど季節柄毎晩お鍋だったことを思い出す。
 お出汁の香りを胸いっぱい吸いこみながら香ばしいお料理を思い出したり机の上で鎮座している冷めても衣がしっとりとしていないサクサク天ぷらに涎を垂らしてみたり大忙しだ。
「はっ!そうじゃ無くって飯食ってお手伝い!」
 うどんは急ぎ足で食べて、修司さんが作ってくれた野菜のかき揚げはうどんのおつゆしみしみのとろっとろにしてたべる。
 もちろんおつゆしみしみにする前にさくっさくの状態も堪能する。うまーい!
 あまりのおいしさにゆっくりとお茶まで堪能した所で
「さて、やりますか」
 タオルを首にかけて軍手を装備して庭に出れば
「修司さーん、どこ手伝いますか?」
「あー、こっから壁際をぐるりといくぞ。
 玲さんは刈った草をかき集めてあのレイズドベッドに放り込んでほしいんだけど」
言ってこの間しのさんが作ったレイズドベッドを指をさしていた。
「レイズデッド?」
 玲さんが聞き直すのをきいて俺は笑ってしまう。
「死者蘇生してどうするんですか。
 肥料づくりにも適してるし、縁までいっぱい土を重ねてミルフィーユを完成させたら美味しい野菜を作るのにちょうどいい畑にもなりますし!」
「お、おう。
 しゃがんで畑をしなくていいだけ腰にはよさげだね」
 俺の説明に圧倒される玲さんに修司さんも笑ってしまう。というか
「やっぱり農家の息子。レイズドベッドと知ってたか」
「えー、修司も知ってたの?」
「この間しのさんに教えてもらったばっかり」
「やたっ!仲間がいた!」
 なんて喜ぶ玲さん。
「これぐらい常識でしょ!」
 なんて突っ込んでしまうも二対一。
「農家の常識なんて知らないしー」
「土いじりの知識ゼロだしー」
 即席タッグを組んで知識のなさを誤魔化されてしまった。
「しのさん助けてー!」
 この二人を黙らせることのできるしのさん。改めてしのさんの偉大さを覚えながらやけくそになって草を刈る。
 根っこから抜く必要はない。
 地面すれすれの部分を鎌で狩ればそれで十分。
 植物は光合成さえできなければいいのだから。 
 地中の根っこはやがて痩せてそこに空気が含まれ、土の為にもなる。
 修司さんは必死になって根っこまで抜いてるけど、それ抜けてる部分は一部ですよ?
 ちょっとムカついたししのさんも俺と同意見なのでそこは指摘をせずに俺は黙々と草を刈る。

「ひー!草って重いー!」
「玲さんがんばれー」
 
 修司さんに適当に応援されながら集めた雑草を大きな古いブルーシートにのせて引っ張っていた。
 この辺はしのさんのやり方と同じだけど、しのさん長身だからか痩せて見えるけどあの人結構力があるんだよと思ったのはやっぱり俺が実家の農業を手伝っているからその仕事ぶりで判断できるというもの。
 ひーひー言いながらブルーシートをひっぱる玲さんを見かねて
「木の枝って案外重いんですよ」
 そういって引っ張るのを手伝う。
 修司さんはなかなか抜けない根っこに夢中になっていてこちらには気付いてない様子。むきになってる修司さん可愛いーなんて必死なのを横目に
「一番下に木の枝を入れましょう。空気を含ませたりかさ増しだったり、土にかえるのが遅くなるものは一番下って決まってるから」
「なんとなく理屈は分かるけど……」
 言いながらため息を落とす玲さん。
「これ、いっぱいになるの?」
「いっぱいにするんだよ。どっかから土を確保して雑草も混ぜて肥料はぬかはないから米のとぎ汁でいいか。
 次にしのさんが来るまでに準備しちゃおう」
 きっとおいしい野菜を作るはずだ。
 苗を持ってくるはずだ。
 だから俺はそれまでにレイズドベッドを仕上げておけばいいと与えられた使命に燃えてしまうものの

「準備するのは良いけど、いい加減自分が汗臭い! お風呂入りたーいー!」

 それは俺も同じ意見ですと思うもなぜかスイッチが入ったように草取りに集中している修司さんを玲さんと二人で眺めながら

「もうちょっと頑張りましょうか」
「ううぅ、おやつも食べさせてほしいよ」

 決してスナックと言った簡単ではないこのアパートのおやつ事情。
 俺が帰ってくることを前提で玲さんを呼んで草刈りをしているという事は当然おやつも用意してくれているだろうけど……

「絶対食べてから帰るんだから!」
 
 ここにも胃袋を掴まれた人が一人、苦笑するしかなかった。




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