9 / 44
雨の惨劇 2
しおりを挟む
おびただしいその色に恐ろしい事が起きたのだと理解すれば血の気が引いていく音を耳にしてそちらに目が奪われた一瞬、俺の肩に奥さんの指が、爪を立てるように食い込んで
「主人は一体何をしたのでしょう! あれほど大切にして愛した古道具にここまでされる理由は一体何がっ! もし知っていることがあればっ!!!」
泣き叫ぶ悲鳴に気付いてバタバタと足音がやってきてぎょっとした顔で白髪交じりの人が俺にすがる奥さんを力任せに離してくれた。
「ええと、母が申し訳ない」
情緒不安定な事を知っての言葉なのかと理解すれば
「佐倉古道具店の佐倉香月です。
この度はご愁傷さまです。心よりお悔やみ申し上げます」
「ありがとうございます。
こんな事件がありまして、あまりに酷い姿になってしまい保存も難しく病院に向かってのまま火葬の許可をもらって……
あまりに心の準備ができないまま形ばかりの葬式を出すことになりましたのでちょっと……」
頭を下げてからその先は何も言わずに泣きじゃくる母親をしっかりと抱きしめていた。
「佐倉さんの事は父からお噂を兼ねがね。同じ古道具屋として一度ゆっくりお話をしてみたいと思っていましたが今は喪中ですので……」
「はい、お忙しい所お時間をいただきありがとうございました。では私はここで……」
そう言って逃げるようにこの店を後にして慌てて止めてあった車の中に逃げ込み……
「親父?いま迪林堂さんの所にいるんだけどすでにご主人が亡くなれて……
手紙を預かったんだけど……」
スマホ越しのおやじはこの報告に言葉が出ないという様にしばらく返事が出来なかったけど
『一度戻ってきなさい。時間はないけど思ったより厄介なことになった』
強張る声で
『依頼人の息子さんが車の事故で大けがを負ったと今こちらも連絡をもらった。
きっと我々も他人事ではいられないから安全運転で気を付けて帰ってきなさい』
ぞっとするような寒気に襲われたと同時にさっきまでもうすぐで上がりそうな雨空がまた暗くなり、雨脚が強くなって……
水に強くかかわりあいのある相手だけに逃さないぞと言われているような気分だった。
俺には黒い糸のような靄はまだついていない。
飲み込まれて、黒が濃くなればなるほど向こうの呪いは完成されていくのだろう。
相思相愛
鯉たちの思いの深さは想像以上だったことを思い知る。
特に雌の執着はすさまじく、親父が俺に仕事の手伝いを頼んだその夜には迪林堂さんのご主人は儚くなり、そして依頼人の息子さんも入院するほどのケガをしている。
そして雌の方は会った事がないからまだその影響はないが、うちには雄の方がいる。すでに七緒を殺そうではなく取り込もうとする雌とは違う絶望を俺達に与えようとしている。
そして七緒の後は…… 雄を封じ込めてる親父、そして血を受けつぐ俺。雌が見つからなければさらに母、そして手近な俺達の周囲の人達、例えば朔夜とか会う頻度の多い奴から。そもそも頻度が多いから七緒を真っ先に呪ったのだ。不確定の相手ではなく確実に対象者を絞るあたり知能の高さにも驚かされるがこの先俺は生き残れるのだろうかと不安を感じれば……
ああ、そうか。
こんな日が来ることを九条は心配して親父に何度も進言してくれたのだろう。
だけど親父は俺が自分から辞めると言い出すまで俺の気持ちを尊重してくれていて……
九条もこんな俺の為にお守りを作って俺に与えてくれたのだろう。
俺がこのお守りのことに気付いて自らただ憧れで進むには限界のある道のりを自ら断つ日を願ってお守りを親父に渡していたのだろう。
初めてお守りを受け取ってから十数年。
仕事の時たまに顔を合したぐらいで一緒に茶を飲んだ事もない相手だけどずっと心配してくれていて……
恥ずかしくて穴があったら入りたい気分。
だけど今はそれより大切な事がある。
親友が妹のようにかわいがり、たった一人頼れる人しかいない七緒の明るさに助けられている俺がいて。
俺を守ろうとしてくれている親父や九条には悪いがこの件だけは俺は降りたくない。
俺が巻き込んでしまった以上どんな終わり方をするか分からないが最後まで付き合うという心構えができた。
きっと想像以上に被害が出るのだろう、俺を含めて。
ビビってるわけにはいかないと思えばちょうど九条の家の寺がある地域のそばを通っていたことに気付いて車を目的地駐車場に止めた。そこで
「九条、すまないが例のお守りはできたか?」
『っち、なんてタイミングだ。丁度できた所だ。っくそ、この為か?!』
「は?」
何を言ってるのだろうか。それとも怒らすようなことがあったかと心当たりしかない過去だしと思っていれば
『今からで良ければ持っていくが……』」
「いや、ちょうどオマエんところの寺の駐車場に居て、取りに行っていいか?」
『この状況でよくほっつき歩けるな。一応気を付けてうちの敷地内から出ないように社務所に来い』
そんな命令口調の似合う九条様。喜んで行かせていただきますと言ってスマホを切って車を降りる。
敷地を出ないように駐車場から直接神社に続く通路を辿って向かえば観光地とあってにぎわっている中に一人の人物に目が行った。
俺より少し年下だろうか着物を着た男性が歩いてるというそれだけの印象。そんな人物ならこの街では日常的なまでによく見る光景なのは親父自体が店に出る時着物を着ているからだろうか。
とかく気にする人物ではなかったが、目が追った理由は理解できた。
着物の男には二つの白い光の玉がふよふよと随行しているのだからこれは珍しいと驚いてしまった。
鯉たちが黒い気配を放つように白い気配を放つモノもいる。
神の使いやそれに並ぶ者たち。
まあ、ここならそういった類は多いだろうと思っていたが、この神社と関係のなさそうな人がしかも二柱も寄り添っているとなるとよっぽどの人か術者なのだろう。
居る所には居るんだなと逆に強すぎる人から俺は自分の中途半端さを隠すように急ぎ足で社務所に、その人の隣を通り過ぎないといけない場所にあるのが心理的にしんどいが、向こうも俺の存在なんて気づいてないという様に通り過ぎた所で
わんっ!
神社内で犬の鳴き声が聞こえ驚いて振り向くもどこにも犬なんて居ない。
ただなんかよくわからないが不思議な体験をした、そんな気分になれば見えた社務所の前で私服のままものすごい目で俺を睨む九条がいた。
「主人は一体何をしたのでしょう! あれほど大切にして愛した古道具にここまでされる理由は一体何がっ! もし知っていることがあればっ!!!」
泣き叫ぶ悲鳴に気付いてバタバタと足音がやってきてぎょっとした顔で白髪交じりの人が俺にすがる奥さんを力任せに離してくれた。
「ええと、母が申し訳ない」
情緒不安定な事を知っての言葉なのかと理解すれば
「佐倉古道具店の佐倉香月です。
この度はご愁傷さまです。心よりお悔やみ申し上げます」
「ありがとうございます。
こんな事件がありまして、あまりに酷い姿になってしまい保存も難しく病院に向かってのまま火葬の許可をもらって……
あまりに心の準備ができないまま形ばかりの葬式を出すことになりましたのでちょっと……」
頭を下げてからその先は何も言わずに泣きじゃくる母親をしっかりと抱きしめていた。
「佐倉さんの事は父からお噂を兼ねがね。同じ古道具屋として一度ゆっくりお話をしてみたいと思っていましたが今は喪中ですので……」
「はい、お忙しい所お時間をいただきありがとうございました。では私はここで……」
そう言って逃げるようにこの店を後にして慌てて止めてあった車の中に逃げ込み……
「親父?いま迪林堂さんの所にいるんだけどすでにご主人が亡くなれて……
手紙を預かったんだけど……」
スマホ越しのおやじはこの報告に言葉が出ないという様にしばらく返事が出来なかったけど
『一度戻ってきなさい。時間はないけど思ったより厄介なことになった』
強張る声で
『依頼人の息子さんが車の事故で大けがを負ったと今こちらも連絡をもらった。
きっと我々も他人事ではいられないから安全運転で気を付けて帰ってきなさい』
ぞっとするような寒気に襲われたと同時にさっきまでもうすぐで上がりそうな雨空がまた暗くなり、雨脚が強くなって……
水に強くかかわりあいのある相手だけに逃さないぞと言われているような気分だった。
俺には黒い糸のような靄はまだついていない。
飲み込まれて、黒が濃くなればなるほど向こうの呪いは完成されていくのだろう。
相思相愛
鯉たちの思いの深さは想像以上だったことを思い知る。
特に雌の執着はすさまじく、親父が俺に仕事の手伝いを頼んだその夜には迪林堂さんのご主人は儚くなり、そして依頼人の息子さんも入院するほどのケガをしている。
そして雌の方は会った事がないからまだその影響はないが、うちには雄の方がいる。すでに七緒を殺そうではなく取り込もうとする雌とは違う絶望を俺達に与えようとしている。
そして七緒の後は…… 雄を封じ込めてる親父、そして血を受けつぐ俺。雌が見つからなければさらに母、そして手近な俺達の周囲の人達、例えば朔夜とか会う頻度の多い奴から。そもそも頻度が多いから七緒を真っ先に呪ったのだ。不確定の相手ではなく確実に対象者を絞るあたり知能の高さにも驚かされるがこの先俺は生き残れるのだろうかと不安を感じれば……
ああ、そうか。
こんな日が来ることを九条は心配して親父に何度も進言してくれたのだろう。
だけど親父は俺が自分から辞めると言い出すまで俺の気持ちを尊重してくれていて……
九条もこんな俺の為にお守りを作って俺に与えてくれたのだろう。
俺がこのお守りのことに気付いて自らただ憧れで進むには限界のある道のりを自ら断つ日を願ってお守りを親父に渡していたのだろう。
初めてお守りを受け取ってから十数年。
仕事の時たまに顔を合したぐらいで一緒に茶を飲んだ事もない相手だけどずっと心配してくれていて……
恥ずかしくて穴があったら入りたい気分。
だけど今はそれより大切な事がある。
親友が妹のようにかわいがり、たった一人頼れる人しかいない七緒の明るさに助けられている俺がいて。
俺を守ろうとしてくれている親父や九条には悪いがこの件だけは俺は降りたくない。
俺が巻き込んでしまった以上どんな終わり方をするか分からないが最後まで付き合うという心構えができた。
きっと想像以上に被害が出るのだろう、俺を含めて。
ビビってるわけにはいかないと思えばちょうど九条の家の寺がある地域のそばを通っていたことに気付いて車を目的地駐車場に止めた。そこで
「九条、すまないが例のお守りはできたか?」
『っち、なんてタイミングだ。丁度できた所だ。っくそ、この為か?!』
「は?」
何を言ってるのだろうか。それとも怒らすようなことがあったかと心当たりしかない過去だしと思っていれば
『今からで良ければ持っていくが……』」
「いや、ちょうどオマエんところの寺の駐車場に居て、取りに行っていいか?」
『この状況でよくほっつき歩けるな。一応気を付けてうちの敷地内から出ないように社務所に来い』
そんな命令口調の似合う九条様。喜んで行かせていただきますと言ってスマホを切って車を降りる。
敷地を出ないように駐車場から直接神社に続く通路を辿って向かえば観光地とあってにぎわっている中に一人の人物に目が行った。
俺より少し年下だろうか着物を着た男性が歩いてるというそれだけの印象。そんな人物ならこの街では日常的なまでによく見る光景なのは親父自体が店に出る時着物を着ているからだろうか。
とかく気にする人物ではなかったが、目が追った理由は理解できた。
着物の男には二つの白い光の玉がふよふよと随行しているのだからこれは珍しいと驚いてしまった。
鯉たちが黒い気配を放つように白い気配を放つモノもいる。
神の使いやそれに並ぶ者たち。
まあ、ここならそういった類は多いだろうと思っていたが、この神社と関係のなさそうな人がしかも二柱も寄り添っているとなるとよっぽどの人か術者なのだろう。
居る所には居るんだなと逆に強すぎる人から俺は自分の中途半端さを隠すように急ぎ足で社務所に、その人の隣を通り過ぎないといけない場所にあるのが心理的にしんどいが、向こうも俺の存在なんて気づいてないという様に通り過ぎた所で
わんっ!
神社内で犬の鳴き声が聞こえ驚いて振り向くもどこにも犬なんて居ない。
ただなんかよくわからないが不思議な体験をした、そんな気分になれば見えた社務所の前で私服のままものすごい目で俺を睨む九条がいた。
281
あなたにおすすめの小説
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
裏路地古民家カフェでまったりしたい
雪那 由多
大衆娯楽
夜月燈火は亡き祖父の家をカフェに作り直して人生を再出発。
高校時代の友人と再会からの有無を言わさぬ魔王の指示で俺の意志一つなくリフォームは進んでいく。
あれ?
俺が思ったのとなんか違うけどでも俺が想像したよりいいカフェになってるんだけど予算内ならまあいいか?
え?あまい?
は?コーヒー不味い?
インスタントしか飲んだ事ないから分かるわけないじゃん。
はい?!修行いって来い???
しかも棒を銜えて筋トレってどんな修行?!
その甲斐あって人通りのない裏路地の古民家カフェは人はいないが穏やかな時間とコーヒーの香りと周囲の優しさに助けられ今日もオープンします。
第6回ライト文芸大賞で奨励賞を頂きました!ありがとうございました!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」
魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる