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愛すべき時を刻む音 7
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古時計問題、思ったより早く決着がつきそうだと言ったのはいつだったか。
「はよー。次郎さん元気してた?
みんな次郎さんに会えなくて寂しいって言うから連れてきちゃったよ」
「「「「じろ~さあああぁぁぁんんんっ!」
なんて俺の目の前に狛犬の様なしめ縄のついた二匹の犬と兎の一羽が犬の背中に乗って壁をすり抜けてやってきた。
そして次郎を中心に兎がすり寄り、両サイドから狛犬の二匹によってべろべろと舐めながら挨拶をしていて、次郎さんはその歓迎に耐えるように、でも嬉しそうに揺れる尻尾が誤魔化しきれないようでいた。
「これは……」
呆気にとられる俺に朔夜が何かあったのかと目をキラキラさせていた。
「な、な、どういう状況?」
ぽっかりと何もない空間を前に唖然と立ち尽くす俺に何があったのかと期待する朔夜。
「こいつの式神たちが仲間の次郎さんに会えて喜びの再会をしている所だ」
朝から疲れたような顔をしているのは九条。
って言うか
「今日も付き合わされているのか?」
「仕方ないじゃん。俺こっちに足ないし。
九条のじいさん、おじさんにお願いしたら今忙しくて相手できないからつっきーをこき使っていいぞって言ってくれたし」
九条が苦い顔をして何も言い返さない所は本当の事なのだろう。その前に九条はどれだけこの人に弱みを握られてるんだよ思うも
「ひょっとして今ネットで話題の奴でか?
須弥山が出現したとか蓬莱山が出現したとかアレに関わってるのか?」
疲れているのはそのせいかという様に視えないだけに想像を膨らまして思いっきり笑顔でスマホを取り出しなにやら素早い指の動きを見せたかと思えば
「これ! なんか知ってるか?」
そのページはほんの数日前ネットで騒がれたもの。
一部の視える人がSNSで上げたものの視える人にしか見えない不思議な写真。
だけど話題に上がったからかそれを絵にしてSNSに挙げた人がいた。
視えた人と視えない人、そんな騒動で一瞬沸いたもののあっという間に次々襲い来る情報の海にのまれた日常の一コマ。
この人が何を知っているのかと思うも
「これか!」
なんて意味ありげに顔を明るくして
「ネットで話題になってたけどその後はどうなった?」
記事の話題について振るだけ。朔夜は少し残念そうな顔をして
「特になし。九条なら何か知ってると思ったんだけど」
「俺は関わりたくねえ」
「えー、ってことは知ってるってこと?!
あれ結局何だったんだよ!」
「それも含めて言いたくねえって話だ!」
もう言うなという様に耳をふさいで近くのソファに寝ころんでしまった。
なんと言うか、高校時代の九条しか知らない俺としてはこいつってこういう性格だったかという以前に
「九条家の坊ちゃまがそんな俗世の出来事に興味を持つか?」
なかなかに九条の友達は辛らつな言葉を言うなと思うも
「それよりもチケット二つ分でバターたっぷりでよろしく。あともう一個九条用に頼むな。
佐倉……香月だっけ。視えてるなら先に紹介しておく。
もふもふのしいさんとこまさんと兎の鈴さんだよ。
お世話をお願いしている家のご主人が九条の家の付近まで散歩に行ってるからひょっとしたら会うかもしれないからその時は声をかけてあげてね。
こういう出会いが散歩の楽しみだろうから」
そんな飼い主として次郎さん達の幸せを願う様子に再会の喜びから落ち着いたしいさん達は今度は主人でもあるはたきの人をこれ以上とないくらいに親愛の情を見せていた。
両側からのもふもふ攻撃。
ちょっとうらやましい……
思わずニヤついてしまう癒し光景に
「えー、今どんなことになってるんだよ。
香月がなんでそんな楽しそうな顔をしてるんだよ」
言いながらもお湯を沸かしパンを焼く。そして冷蔵庫からバターやジャムを取り出したりと忙しそうに動けば九条はソファの上でくたばりながらも
「綾人が自身の付喪神にもふられて幸せそうにしてるだけだ」
「むしろ見てみたい」
朔夜が思わずという様に言えば
「つっきー、リクエストに応えろ」
「クッソー……」
と言うか俺としてはお二方の関係は何ですかと聞きたいがちゃんと座り直しが九条が気合を入れたような声を上げれば
「うわ、店の中にいきなりわんことにゃんことうさちゃんとか……
想像以上にもふもふ!」
驚く朔夜の声に思わず俺も振り返るも
「まったく違いが分からないとか……」
新しく手に入れた力はよほど高性能なのだろう。
視えない朔夜と俺は突如店の中で現れた次郎さん達を同じように見えていると思えば
「九条、やっぱりお前凄かったんだな……」
「もっと敬え」
なんて言うもすぐに始めてすぐに朔夜と共用できた世界は終わりを告げたようで
「あれ、九条。次郎さん達いなくなったぞ」
「まあ、これがつっきーの限界ってやつだ。コーヒー一杯分だな」
なんてわずか数十秒の邂逅。
だけど朔夜は感動に目を一杯広げて
「初めて視た」
言いながらもまるでサービスと言わんばかりにバターを塗りたくっていた。
そして狛犬とはいえ犬。
鼻をひくひくさせながら朔夜を見上げる視線。
焼けたトーストとバターの匂いが店中に広がるころには主人へのもふもふ攻撃をやめても隣でおとなしくというかとても綺麗な姿勢でお座りをする様子。
しっぽはふっさふっさと期待に揺れていた。
はたきの人なのにすごく式神との信頼度が高いのはなぜと疑問を浮かべている合間にパンを先に出してもらう。
すぐにはたきの人の吉野さんはしいさんとこまさん、そして次郎さんと鈴さんにトーストを目の前に置いてマテのポーズ。
「太郎に菖蒲出ておいで」
いえば観葉植物の陰から出てきた太郎と菖蒲の姿にしいさん……は何かいるという程度の視線だけど鈴さんとこまさんは小さな金魚にまっすぐ視線を向けて主であるはたきの人へと視線を向ける。
「縁あって隣の古道具屋に厄介になる太郎と菖蒲だ。
今次郎さんに教育してもらっているから俺がいない時にあってもちゃんと挨拶するんだよ」
「主の匂いがしますね」
そんな鈴さんの指摘に
「こちらの香月さんに世話をしてもらうから。そのうちお隣の佐倉古道具店の子になると思うけどこれも何かの縁だ。あった時は先輩として気を使ってくれ」
「主の式神として当然です」
涼しげな声の鈴さん。
「ありがとう鈴さん。じゃあ、熱々のうちに食べていいよ」
「「「「いただきます!」」」」
その鈴とした声に聞きほれてしまう合間にもみんな美味しそうにパンを食べていて、九条のパンを容赦なくちぎりとって太郎と菖蒲に食べさせるはたきの人。
ほんと九条の扱い厳しいなと言葉を失っていれば、店の前をちょろちょろとする高校生が一人いた。
「はよー。次郎さん元気してた?
みんな次郎さんに会えなくて寂しいって言うから連れてきちゃったよ」
「「「「じろ~さあああぁぁぁんんんっ!」
なんて俺の目の前に狛犬の様なしめ縄のついた二匹の犬と兎の一羽が犬の背中に乗って壁をすり抜けてやってきた。
そして次郎を中心に兎がすり寄り、両サイドから狛犬の二匹によってべろべろと舐めながら挨拶をしていて、次郎さんはその歓迎に耐えるように、でも嬉しそうに揺れる尻尾が誤魔化しきれないようでいた。
「これは……」
呆気にとられる俺に朔夜が何かあったのかと目をキラキラさせていた。
「な、な、どういう状況?」
ぽっかりと何もない空間を前に唖然と立ち尽くす俺に何があったのかと期待する朔夜。
「こいつの式神たちが仲間の次郎さんに会えて喜びの再会をしている所だ」
朝から疲れたような顔をしているのは九条。
って言うか
「今日も付き合わされているのか?」
「仕方ないじゃん。俺こっちに足ないし。
九条のじいさん、おじさんにお願いしたら今忙しくて相手できないからつっきーをこき使っていいぞって言ってくれたし」
九条が苦い顔をして何も言い返さない所は本当の事なのだろう。その前に九条はどれだけこの人に弱みを握られてるんだよ思うも
「ひょっとして今ネットで話題の奴でか?
須弥山が出現したとか蓬莱山が出現したとかアレに関わってるのか?」
疲れているのはそのせいかという様に視えないだけに想像を膨らまして思いっきり笑顔でスマホを取り出しなにやら素早い指の動きを見せたかと思えば
「これ! なんか知ってるか?」
そのページはほんの数日前ネットで騒がれたもの。
一部の視える人がSNSで上げたものの視える人にしか見えない不思議な写真。
だけど話題に上がったからかそれを絵にしてSNSに挙げた人がいた。
視えた人と視えない人、そんな騒動で一瞬沸いたもののあっという間に次々襲い来る情報の海にのまれた日常の一コマ。
この人が何を知っているのかと思うも
「これか!」
なんて意味ありげに顔を明るくして
「ネットで話題になってたけどその後はどうなった?」
記事の話題について振るだけ。朔夜は少し残念そうな顔をして
「特になし。九条なら何か知ってると思ったんだけど」
「俺は関わりたくねえ」
「えー、ってことは知ってるってこと?!
あれ結局何だったんだよ!」
「それも含めて言いたくねえって話だ!」
もう言うなという様に耳をふさいで近くのソファに寝ころんでしまった。
なんと言うか、高校時代の九条しか知らない俺としてはこいつってこういう性格だったかという以前に
「九条家の坊ちゃまがそんな俗世の出来事に興味を持つか?」
なかなかに九条の友達は辛らつな言葉を言うなと思うも
「それよりもチケット二つ分でバターたっぷりでよろしく。あともう一個九条用に頼むな。
佐倉……香月だっけ。視えてるなら先に紹介しておく。
もふもふのしいさんとこまさんと兎の鈴さんだよ。
お世話をお願いしている家のご主人が九条の家の付近まで散歩に行ってるからひょっとしたら会うかもしれないからその時は声をかけてあげてね。
こういう出会いが散歩の楽しみだろうから」
そんな飼い主として次郎さん達の幸せを願う様子に再会の喜びから落ち着いたしいさん達は今度は主人でもあるはたきの人をこれ以上とないくらいに親愛の情を見せていた。
両側からのもふもふ攻撃。
ちょっとうらやましい……
思わずニヤついてしまう癒し光景に
「えー、今どんなことになってるんだよ。
香月がなんでそんな楽しそうな顔をしてるんだよ」
言いながらもお湯を沸かしパンを焼く。そして冷蔵庫からバターやジャムを取り出したりと忙しそうに動けば九条はソファの上でくたばりながらも
「綾人が自身の付喪神にもふられて幸せそうにしてるだけだ」
「むしろ見てみたい」
朔夜が思わずという様に言えば
「つっきー、リクエストに応えろ」
「クッソー……」
と言うか俺としてはお二方の関係は何ですかと聞きたいがちゃんと座り直しが九条が気合を入れたような声を上げれば
「うわ、店の中にいきなりわんことにゃんことうさちゃんとか……
想像以上にもふもふ!」
驚く朔夜の声に思わず俺も振り返るも
「まったく違いが分からないとか……」
新しく手に入れた力はよほど高性能なのだろう。
視えない朔夜と俺は突如店の中で現れた次郎さん達を同じように見えていると思えば
「九条、やっぱりお前凄かったんだな……」
「もっと敬え」
なんて言うもすぐに始めてすぐに朔夜と共用できた世界は終わりを告げたようで
「あれ、九条。次郎さん達いなくなったぞ」
「まあ、これがつっきーの限界ってやつだ。コーヒー一杯分だな」
なんてわずか数十秒の邂逅。
だけど朔夜は感動に目を一杯広げて
「初めて視た」
言いながらもまるでサービスと言わんばかりにバターを塗りたくっていた。
そして狛犬とはいえ犬。
鼻をひくひくさせながら朔夜を見上げる視線。
焼けたトーストとバターの匂いが店中に広がるころには主人へのもふもふ攻撃をやめても隣でおとなしくというかとても綺麗な姿勢でお座りをする様子。
しっぽはふっさふっさと期待に揺れていた。
はたきの人なのにすごく式神との信頼度が高いのはなぜと疑問を浮かべている合間にパンを先に出してもらう。
すぐにはたきの人の吉野さんはしいさんとこまさん、そして次郎さんと鈴さんにトーストを目の前に置いてマテのポーズ。
「太郎に菖蒲出ておいで」
いえば観葉植物の陰から出てきた太郎と菖蒲の姿にしいさん……は何かいるという程度の視線だけど鈴さんとこまさんは小さな金魚にまっすぐ視線を向けて主であるはたきの人へと視線を向ける。
「縁あって隣の古道具屋に厄介になる太郎と菖蒲だ。
今次郎さんに教育してもらっているから俺がいない時にあってもちゃんと挨拶するんだよ」
「主の匂いがしますね」
そんな鈴さんの指摘に
「こちらの香月さんに世話をしてもらうから。そのうちお隣の佐倉古道具店の子になると思うけどこれも何かの縁だ。あった時は先輩として気を使ってくれ」
「主の式神として当然です」
涼しげな声の鈴さん。
「ありがとう鈴さん。じゃあ、熱々のうちに食べていいよ」
「「「「いただきます!」」」」
その鈴とした声に聞きほれてしまう合間にもみんな美味しそうにパンを食べていて、九条のパンを容赦なくちぎりとって太郎と菖蒲に食べさせるはたきの人。
ほんと九条の扱い厳しいなと言葉を失っていれば、店の前をちょろちょろとする高校生が一人いた。
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