隣の古道具屋さん

雪那 由多

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愛すべき時を刻む音 6

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 夕食の場に太郎と菖蒲、そして次郎が加わった。
「付喪神は一体何を食べるのかしら?」
 なんてお袋の悩みに
「俺達は人が食べるものなら何でも食べる。
 もちろん多少の好みもあるし、食べれない物もある。
 だが基本生臭は避けてやれ。だけど俺はご飯におかかを乗せてもらえると嬉しい」 
 なんておねだり。
 尻尾がゆらゆらと期待するように揺れるのでそれをお袋に伝えれば
「まあ!だったらお父さんのアレを出さなくちゃ!」
 なんていそいそと取り出したのは鰹節と鰹節削り。
 子供心に晩酌のお供に鰹節にお醤油を振りかけたものを食べる渋い親父だとは思っていたがまだ続けてたのかと感心するけどそれ親父の部屋から何で出てくるんだと思っても考えないようにする。
 そしてしゅ、しゅ、と数枚削ってから少し柔らかくしたご飯の上にパラりと振りかければ次郎さんのしっぽはこれ以上とないくらい嬉しそうに揺れていて、でも顔はお袋を見上げていた。
「これでいいかしら?どう、香月。次郎さん喜んでいる?」
「これ以上とないくらいに」
 涎を垂らしながらご飯を見ている。
 とても喜んでいるようだけど……
「ご飯食べないんだけど」
 しっぽがぶんぶんと揺れてじーっとご飯を見つめているだけの様子。
 目の前のご飯を食べないのかと思えば
「次郎さん、どうお召し上がって?」
 視えないお袋だけど俺の言葉を聞いて気にせず食べてと言えばそこでやっとご飯を口にするのだった。
「あ、食べた」
 程よいぬくもりのご飯にかけられた鰹節の香り。
 あまりの勢いに器が移動していくのを俺とお袋はそろって眺めていた。
 夢中になって食べるその様子をお袋に伝えるもお袋でもわかる器の移動具合。その勢いにお袋は追加の鰹節を削りながら
「よっぽどよくしつけられたのでしょうね。
 なんでも口にしないように気を使われてのね」
「付喪神に躾なんて……」
 考えた事もない!
 頭を抱えてしまうもあっという間にお替りの鰹節まで食べて満足気に口の周りを舐めている様子。親父の鰹節がお気に召した様で何より。
 そしてどれだけ食べるかわからないからとどう見ても多めによそわれたご飯は綺麗になくなっていた。
「太郎と菖蒲も食べてもいいんだぞ?」
「次郎兄さんよろしいのですか?」
「ぜひいただきます!」
 なんて食べ終わってから口をつけるという……
「なんて任侠な世界か?」
 これは序列の問題なのかと思うも
「太郎、菖蒲。ご飯を頂いた時は皆さんと一緒に食べるようにしなさい。
 もちろんつまみ食いやご飯を出されたからすぐに手をつけるなんてはしたない真似はするな。ご飯を用意してくれたものの許しを得てから頂く、我々の行動で主の格を落とすような真似はするではない」
「ふぁい!」
「兄さんわかりました」
 なんて教育をしている。
 そうか。これがはたきの人の家の教育なのかと少し見直してしまい、次郎さんの教育方針を母さんに伝えれば
「あら、香月よりきちんとしてるなんてすばらしいご家庭だわ」
 関心をされてしまった。
 そのことを聞いて次郎さんも誇らしげに胸を張って
「我らがお世話になっている家ではそれはまた素晴らしい家だからな。
 それに見合うような振る舞いを主から求められている。最も主は厳しい事も難しい事も言わないが、お世話になる家に迷惑をかけるような恥じる行動をするなと言われるだけ。ならその家のしきたりを見て合わせるというものが筋と言うものだろう」
 うん。
 付喪神が生まれた家とは聞いていたがなんて立派な家なのだろうと思う。
 預かる身とはいえこれは俺の行動一つで太郎と菖蒲の性格が決まってしまうと少しだけ気を引き締めるのだった。
 


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