氷の魔法使いは愛されたくて

sweetheart

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でも、この人はそれほどの覚悟で私を欲しているということを示してくれたのだ。
その気持ちが嬉しくもあり、申し訳なくもあった。

「リリィ……その指輪……預かってもいいですか?」

震える声で言うと、彼は驚いたように目を見開いた。

「預かる……?」
「はい。今はまだ……すぐに主従関係にはなれません。でも……いつか私が自信を持ってあなたの隣に立てるようになった時に……その時は……」

言葉に詰まる。恥ずかしさで頬が熱い。でも、伝えたい。

「その時はその指輪を私に施して欲しいのです」

恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらも、私はリリィの目をしっかり見つめて言った。
リリィは少し驚いたような表情を浮かべた後、柔らかく微笑んだ。

「いいだろう。ただし条件がある」
「え? なんですか?」

私は不安になって問い返した。
すると彼は悪戯っぽく目を細めて言った。

「君が自分に自信を持てるように、まずはその料理技術を磨くことだ」
「え? 料理?」

私は拍子抜けしてしまった。

「そうだ。愛する人の胃袋をつかむのは大切なことだぞ。それに君の作ったものが毎日食べたいしな」

そう言ってウインクすると、彼はさっきしまった指輪を取り出して私の手のひらに載せた。

「約束だ。これを預かっておけ。いつか君がこの指輪をはめる覚悟ができたとき……私は喜んで君を私の奴隷にしてやるさ」

冗談めかして言いながらも、その瞳は真剣そのものだった。
私はドキドキしながらも、大切な宝物のように指輪を握りしめた。

「約束です。必ずリリィの隣に立てるような素敵な女性になります。そして……その時こそ……」

続きは恥ずかしくて言えなかったけど、リリィには伝わったようで優しく頭を撫でてくれた。

「楽しみにしているよ、リアナ。さあ、朝食を続けようか? 味見役が必要なんだろう?」

そう言って立ち上がり、エプロンをつけるリリィ。
私も慌てて立ち上がり、彼の隣に並んだ。

「はい! 頑張ります!」

これから先、私たちにはたくさんの課題があるだろう。
身分の差、周囲の反対、そして王家としての責任……
でも、この人と一緒なら乗り越えられる。

窓から差し込む朝日が、私たちを優しく包み込んでいた。
未来への不安は消えていない。
けれど、それ以上に、共に歩んでいく希望が胸いっぱいに広がっていた。

☆★☆

翌朝、朝食の席でのこと、

「朝食を作ったぞ」

そう言うリリィの作ったものは、シンプルな卵料理と、パンとコーヒーだった。

「あ、あの」
「なんだ?」
「凄く美味しいです」
「そうか、それは良かった。君は食が細いからな」

そう言って微笑む彼を見て、胸が高鳴るのを感じた。
(ああ……幸せだなぁ)
そんなことを考えていると、不意に唇を重ねられたため驚いてしまい思わず
後退りしてしまったのだが彼はお構いなしといった様子でさらに迫ってきて最終的には壁際に追い込まれてしまったのである。

「ちょ、ちょっと待ってくださ……」

そう言って抵抗するものの力の差がありすぎて全く歯が立たない状態であったため諦めて受け入れることにしたのだった。

「嫌だったか?」
「いえ、嬉しいですが恥ずかしいです」
「そうか、なら、慣れていかないとな」
「そ、そんな!」

そう言うと再び唇を奪われてしまったため抵抗することもできずされるがままになっているうちにもうどうでも良くなってきていたのかいつの間にか自分から積極的に舌を絡めていたことに気づいて顔を真っ赤にして俯いてしまった。

(もう、どうにでもなれ……)

そう思いながら身を委ねているうちに意識が遠のいていったのだった。

ゆっくりと目を覚ますと珍しくリリィの愛馬にまたがっていることに気づいた。

「あっ、起きた?」
「あれ?どうして?」
「もう朝食終わってるから、とりあえず馬で移動中ね」
「どちらに向かってます?」
「お前の実家」
「はい?」
「あぁ、挨拶回りするんだよ? 新郎新婦って事でな」
「あぁ……」

そうだった、もう、私は婚約者なのである。
彼も、私の先生だということだ。
婚約者という表現はなんか、嫌だし……
やっぱり、妻がいいよね?

「あの……」
「何かな?」
「私、貴方の妻になります!」

その言葉に、彼は馬を止めるとこちらを見て微笑んだ。

「良く言えたね、偉いぞ!」
「そ、それで、その……」
「ん? なんだい?」
「これからどうしましょう?」

不安げに見上げると、彼はニヤリと笑いながら耳元で囁いた。

「とりあえず、あのままって訳には行かないからな、婚約式位は呼ばないと」
「それは先生のせいですよね?」

そうお父様に先生があんなことをいい半ば強引に婚約者にしてしまったのだから、お父様が式に来るはずがない。
つまりは別の目的がある気がする。

「なにか企んでませんか?」
「何も……」
「嘘、先生、怪しい」
「んー、疑うのか? この俺を?」

その瞳がすーっと冷たく冷めたものになるのを見て私は慌てて首を降る。

「おや、俺もあの小屋は好きだがたまには俺の城で軟禁するのも一興だと思うんだかな?」

しれっとこの人は怖いことを言う。
そう、軟禁という言葉である。
私はそっと地面に下りるとそのままその場を離れようとした。
しかし、リリィは私の手を掴むとそのまま引き寄せた。

「どこに行く?」

低い声に思わず振り返るとそこには怒った顔のリリィがいた。

「いえ、ちょっとお花摘みに……」
「ふむ、ならば連れて行こうか?」
「結構です!」

そう叫びつつも、内心では恐怖心が沸き上がっていた。
逃げられない、殺されるかもしれないという不安が頭を過ぎる。

「リリィ、こ、この件に関しては先生が全面的に悪いと思います」
「そうか、では話し合おうか?」
「え?」

そのまま抱きかかえられると
そのまま、降りた。

「え?」
「そういえばこの前、敷地内に入った時はこの道ではなかったからな」

そうこれは表街道である。

「陛下、お帰りなさいませ」
「騙したわね、リリィ!」

私が泣き叫べば、

「お前の意見は、もう聞かないよ、レディ」
「あのね、リリィ!」
「大人しく言うことを聞くなら許してやる」

そう耳元で囁かれてしまうと何も言えなくなってしまう。
結局、私は彼に言われるがままに歩いて行ったのだった。

☆★☆

今がどこかは分からない。
それは何故か?

「本当に軟禁する人が何処にいるのよ?」

そう叫んで途方に暮れる。
ここは城の中何だろう。
しかし暗い。
赤い天井に赤い絨毯、家具はない。
あるのは大きなベッドに、趣味の悪い鎖の手枷が壁につけられている。
明らかにこの部屋はおかしい。
まず窓はなく。
大きな扉があるだけである。
部屋にはベッドと赤い椅子と木の机がある。
他には何もない。

「う~ん」

ひとまずベッドに横たわってみる。
柔らかい。
そうそうに私は諦めてそのまま毛布にくるまって寝ることにした。

「ふぁ~……」

目が覚めるとベッドの上だった。
辺りを見回すと部屋は明るくなっている。
カーテンが開いていたので外を見ると太陽が高く昇っているのが見えた。

「ああ……寝ちゃったのか……」

ぼんやりとした頭でそんなことを考えていると扉が開かれた。

「ここは何?」
「俺の遊び部屋、使うのはこれが初めてだよ」

そういいながら扉を閉めると内側から鍵を刺して鍵を閉めた。

「しかも鍵穴付きってすごい悪趣味じゃない?」
「そうか? かなり気分がいいんだけど?」
「楽しそうね」
「あぁ、楽しいよ」
「このサディスト」
「なんだ、楽しくはないか?」

機嫌が悪い私を見つめてやれやれっと首を振られる。

「ふーん」
「ふむ……」

そう言うと彼は私の隣に座った。

「リリィ?」
「リアナ、俺はお前を愛している」
「……え?」

突然の告白に驚いてしまう。

「俺はお前以外とは結婚したくない。だが今のままだとお前はまだ俺を受け入れてはくれないだろう」

「う……それは……」
「だからここでしばらく一緒に暮らしてみないか?」
「え? どういうこと?」
「言葉通りの意味だよ」

そう言って彼は私の頬に手を当てた。

「どうだろうか? もちろん、拒否しようがここに置くが、出来れば了承して欲しいな」
「わ、私がリリィと?」

それはもう願ってもない事であった。
そう、彼が誘い込まなくてもこっちからお願いしたいのだ。
この時ばかりは素直になれたのかもしれない。

「うん、良いよ」
「そうか、では決まりだな」

そう言って彼は私の額にキスをした。

「んっ、リリィ」
「嫌だったか?」
「ううん、嬉しい……」
「そうか」

彼は私を優しく抱きしめてくれた。
その温もりが心地よくて思わずうっとりとしてしまう。
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