西からきた少年について

ねころびた

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氷竜駆逐作戦(78〜)

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 標高九百メートルを超えたあたりから、ポツポツと屋敷が見え始めた。一概に別荘といっても規模は大小様々で、中には「城」と呼ぶほど立派なものもある。念の為、中に人が取り残されていないか確認して回ったが、どうやらどこも無人のようだった。

 風が止んで静かである。ずっと強風の音を聞いていた耳が閉じられたような違和感がある。

「別荘地の一番上にブーゼリヒ侯爵の城があると言っていたな」

 五つ目の屋敷を後にしたところでグランツが思い出したかのように言うと、レオハルトが「そうですね。この山道の費用もほとんどがブーゼリヒ侯爵の出資で賄われたとか。相変わらず凄まじい財力です」と、参道の脇にあった展望台へ列を誘導しつつ壮大な景色を見渡して答えた。
 標高は千メートルの地点まで来た。一旦、ここで休憩である。

「うむ。ここの城では毎年秘密のオークションが開かれているそうだ。昔は王都の劇場で堂々と開催していたをこちらに移したということだろうか」

「ええ。確か、五年前からテヌート伯爵領で開催されているとの噂を耳にした記憶があります。開催地がオローマではなかったので、テヌート伯爵が関わっている可能性は低いと見ていましたが」

「伯爵は関わっていないだろう。だが、知っていても彼に止められるものではない。彼と侯爵ではまだ身分に差があるからな。それに、私であってもブーゼリヒ侯爵は(王を除けば)ヴレド伯爵の次に関わりたくない人物だ」

「何やら心の声が風に乗って聞こえた気がしましたが。侯爵は貴方とは真逆の理念をお持ちのようですから当然ですね。そして、金のためなら悪にも手を染めるあたり、ヴレド伯爵とは多少の関係を保っているようです」

 レオハルトは、話しながら昼食を用意している。極寒の地ながら、ひとたび彼が支度するとどこでも優雅な空間に早変わりする。
 そんな彼はもう六時間も魔法を使い続けているというのに未だ魔力・体力・気力ともに余裕ありげで、ともすれば王城の宮廷魔法使いの多くを凌ぐ能力の持ち主である。
 これを初めて目の当たりにしたヴンダーは、冒険者の中にはまず見ない合理的な魔法の使い方に興味津々だった。

「剣の中に杖を仕込むとは……効率良いけど、量産には成功してるんですか?」

 貴族の話にはお構いなしである。気になったら追求してしまうのは魔法使いのさがだろう。このさがとやらが過ぎて他人の魔法式まで解き明かそうと手段を選ばなくなった図々しい魔法使いが、各ギルドから追放されるという訳である。

「量産は現実的ではありませんね。出来ても粗悪品です。使い手と木材と金属と加工法の全ての相性が良くなければいけませんから」

「へえ。じゃあ、それは奇跡の一振りってことになりますね。ところで、空気の調整もしていますよね? これも火魔法の応用ですか? それと、雪を溶かして出来た水を浮かせているのは風魔法ですか? でも、風だと魔力消費が多いから違うのか……? すみません、魔力がないと魔覚も働かなくて、色々気になっちゃって。それから──」

 分かる、分かるわ、と少し離れた場所からヴンダーを見守るミハル。そうしながら魔除けの結界を展開すると、ヴンダーはそれにも興味を持って目を輝かせた。こういう純粋なところが少しリュークと似ている。

 それから一行は三十分の休憩のあと、再び山道へ戻って先を急いだ。

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