西からきた少年について

ねころびた

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アーカス侯爵領(99〜)

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 レオハルトの次に見張りについたソロウは、眠気覚ましに立ったまま水を飲み、リュークたちは今頃どうしているかと考えながら硬いパンを食べ、体操をして、昨日の朝テヌート兵から貰ってふところに突っ込んでいた新聞を取り出した。

 既に軽く目を通してはいるが、記事に書かれていることは数日も遅れた情報で、この新聞にしたって「凍土と化したテヌート伯爵領! 急な雪解けを確認」と、ソロウからすれば腹立たしいほど呑気な見出しで、肝心の王の対応については当たり障り無く誤魔化しているようにしか見えない。

(救援物資等、あらゆる支援を……?)

 早く行けよ馬鹿。と吐き捨てる代わりに鼻で溜息をつく。

 だが、これはたまたま裏から捲って目についた記事であって、一面の記事の内容はまた別であるのだ。

 ──「迷宮の魔力暴走! 魔物凶暴化し王都襲撃!」

(まあ、これのせいで伯爵領の救助に行けなかったと言われれば文句は言えねえが。いくらなんでもタイミングが……ん?)

 ──「突如王都近郊に出現した迷宮から凶暴化した魔物が溢れ出し、王都ノルンを襲撃。魔物の数は二万を超えると予想される。
 王都ノルンはすでに冒険者ギルドへ支援を要請しており、冒険者ギルド本部は王都からの緊急依頼を張り出した。これにより、A~D級で約三百名の冒険者が緊急依頼を受託し防衛に加勢すると表明している。
 また、フレンチェ公爵領、ゲルム公爵領、ブリシュ公爵領、アーカス侯爵領、バルバル侯爵領からの援軍が期待されるため、今回の迷宮暴走は数日中にも鎮静化する見込み」

 ソロウは眉を寄せながら読み進める。

 ──「一方、未だ召集に応じないアルベルム辺境伯について、王都ノルンはヴレド伯爵ドラク氏による強制的な足止めの可能性を示唆しており、事実であれば速やかにヴレド伯爵を査問すると明言した」

(レオハルトは、この新聞を読んでるはずだよな……?)

 チラリと側に目を向けた先に、まるで高級ベッドに横たわるときと何ら変わらぬ姿勢で目を閉じているレオハルトが居る。彼は常に最新の新聞を求め、毎度恐るべき速さで端から端まで目を通している。新聞だけではない。噂話や地域の掲示板などあらゆるものから情報を得ている。
 そのレオハルトが何も言わないのだから、一介の冒険者に過ぎない自分がこまごまと心配する必要はないのだろう。何か気を付けるべき事態になれば、有能な彼の方から教えてくれるはずだ。

 ソロウは、その後も活字に眠気を誘われない程度に新聞を読み、通路の先で未だ蒸気を噴き上げているスライムを遠目からこっそり応援し、それに飽きると座って柔軟体操をしたり靴の手入れをしたりして時間を潰したのだった。




 三時間後、ソロウはギムナックとミハルと交代して再び眠りに就いた。ギムナックの方は近場の探索へ出て、ミハルはそのまま見張りのために残った。

 地下四階層においても強い魔物の気配は感じられない。ただ、如何せん広すぎる。ギムナックの経験則からして、この手の迷宮の規則性は最深部まで連続する。つまり、五階層は四階層の倍の広さとなっている可能性が極めて高い。
 ギムナックは、冷ややかな石材の壁に手を這わせて進みながら、次の階段を見つけたら、五階層は一寸覗くだけにして引き返す選択肢を提案すると決めていた。

 
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