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無限の迷宮(110〜)
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しおりを挟むレオハルトたちは、一通り記憶のすり合わせを終えたところでグランツ、リューク、リンの捜索を再開することにした。心身ともに疲弊していたが、休むよりも歩き続ける方が恐怖を遠ざけられる気がした。
結局、ヴンダーは一件のことについて何も言わなかった。
さあ、先へ進もう。誰かがそう言って、ぞろぞろと立ち上がり始めたときだった。急にギムナックが驚いて声を上げた。
「マップが変わっている!」
なんだ、どういうことだと、またもやざわつく。ギムナックは、自分の背後を指差した。変哲のない石壁石床の通路の先は、突き当たりになっている。正面からでは判断し難いが、もしかすると行き止まりになっているかも知れない。
「すぐそこに右へ行ける道があったはずなんだ。俺とレオハルトは、ミハルたちが居たところから、その道を通ってここへ来て、オーガをアークデーモンたちから引き離した。そうだろう、レオハルト?」
「ええ、間違いありません。私達は、すぐそこにあった曲がり角からこちらへ来ました」
「それに、あの真っ直ぐ行った突き当たり。この直線の通路はこれ程も長くなくて、もっと手前で丁字路になっていた。間違いなく、通路が作り変えられている」
それだけ言うと、ギムナックはさらに血相を変えて駆け出した。ソロウたちも後を追う。
嫌な予感しかせず、果たしてその予感は的中した。
「地上への道が閉ざされている」
ギムナックが絶望して膝から崩れ落ちた。通常は、迷宮の出入り口といえば一つきりである。そこが塞がれたとなると、壁や床、天井も壊せない以上は詰みということになる。
「えっ、え、それって……戻れないってこと!?」
フルルは、やっと状況が飲み込めたように焦り始めた。その隣でミハルがまたもや気を失いかけている。
「いや、魔王は新しい出口を何個も作ったって言っていたんですよね? なら進むしかないですよ」
そう言ったヴンダーの落ち着きぶりが不思議だった。ソロウは眉を寄せて、ヴンダーが魔物に操られているのではないかと疑った。
魔物の中には、他者を惑わし操る能力を持つものもいるのだ。水辺に棲む〈ケルピー〉や〈セイレーン〉、魔族では〈サキュバス〉などの淫魔や〈ヴァンパイア〉や〈悪魔〉など、挙げればきりがない。だが、ソロウの見る限りヴンダーに冷静であること以外の異常は認められない。
「そうですね。こうなってしまっては、私達が通ってきた出入口のことを考えても仕方がない。とにかく進んで、グランツ様たちを見つけて、他の出口を探しましょう」
ヴンダーに同意したレオハルトが取り仕切って、一行は狼狽えながらも荷物を纏め始めた。
フルルは、不安でいっぱいだった。テルミリアの地下墓地に閉じ込められていたリンたちも、こんな気持ちだったのだろうか。
この人たちと居れば何かが起こりそうな気がすると、漠然と思ったことがあった。まさか、こんなに恐ろしい事態が待ち受けていたとは。
(早くリンに会いたい……)
気を抜けば涙が滲みそうになる。もう怖い思いをするのは十分だ。なんだ、魔王って。
次第に腹が立ってきて、歩き始めてから無意識に前歯を鳴らしていた。ふと横を見ると、ミハルが心配そうな顔をしてフルルを見つめている。
「ああ、ごめん、つい──」
フルルが苦笑混じりに言い掛けた言葉は途中で消え入った。フルルの長い耳に、微かに一行のものではない音が届いたからだ。なんだろうと思って耳を澄ませる前に、大きな魔力の気配がした。先頭を歩いていたギムナックもすぐに気が付いて足を止めた。全員が息を殺して周囲を警戒する。
──何かが近付いてくる。
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