西からきた少年について

ねころびた

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元魔王城(142〜)

181 運任せ

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 冒険者の中で初めてA~S級とされる首無しの魔物〈デュラハン〉を単独討伐し、S級冒険者となった剣士エモリー。
 大人数パーティーに参加して数多くの大型迷宮を踏破し、対魔王軍との防衛戦では幾度となく活躍しギルドから表彰されS級冒険者となった元王国兵士の盾剣士ロルト。
 二十代半ばで神官から冒険者へ転職し、ロルトと共に大型迷宮を踏破。対魔王軍防衛戦に於いては類稀なる強烈な色香で敵軍を退けたり、死んだ仲間を殴って生き返らせるなど数々の伝説を残し、たった四年でS級冒険者へ昇格を果たした治癒師ハンナ。
 王宮図書館を丸ごと飲み込んだかのような膨大な知識量を有しており、冒険者登録時の十六歳から単独での賞金首討ち取りと捕縛数の飛び抜けた最短記録を樹立し、冒険者ギルドからの直接依頼で五回連続の年間最高達成率を叩き出してS級冒険者となったハンター、アレクシア。
 そして、十七歳で冒険者登録をしてから史上最年少かつ史上最速の三年目にしてS級へと昇格した天下の天才魔法使いヴンダー。

 彼ら五人のパーティー名は〈運任せプルェ・プティカ〉。一見して頼りなげな字面だが、これは──眉唾ものであることは否定できないにしろ──初代聖女へ最初にもたらされた神託の内容であるという。また、パーティー名を決める際にはくじ引きを用いていて、結果的にこの名が選ばれたことはまさに「運任せ」であったので、五人はすんなりと命名を受け入れた。ただし、そのまま読むのでは余りにも雰囲気が出ないため、アレクシアの知識から無理矢理にでも当てはめられる古代エルフ語の音を取得し、読みは「プルェ・プティカ」とした。

 結成してから早五年。プルェ・プティカの強さときたら凄まじく、魔法使いヴンダーを欠いてなお、メデューサに足を生やしたくらいでは到底相手にもならなかった。

「いやー、びっくりした」

 光の粒子となって消えゆくメデューサの腹から剣を引き抜いたエモリーが、肩凝りをほぐすように首を回して言った。吃驚したのはこっちだ、とヴンダーはやっと動くようになった足を進めてメンバーのそばへと歩み寄った。
 ヴンダーの異変に初めに気付いたのはアレクシアだった。

のろい、解けたのですね」

「あ、うん、さっき解けたみたい」

 何拍か置いて、えええっ、と驚きの声が上がった。

「戻ったのか! 魔力!」

「なんてこった……自力で治すとは、さすが天才だ」

「えーっ、やだぁ、そんなことあるのぉ? っていうか、それなら早く戻ってお祝いしなきゃ~。あたし、もう良いお店見つけてあるの。そこの店主ったら超可愛いのよぅ! しかも、ど・く・し・ん。あっ、チキンの香草焼きも──」

 気の良い奴らはすぐにヴンダーの回復を喜んだ。しかし、ヴンダーの内心は複雑そのものである。リュークたちのもとへ戻るにはどうすれば良いのか。仲間を巻き込んで良いものか。そして此処はどこで、そこの魔法使いらしきローブ姿の四十、いや、五十がらみと見える男は誰なのか──。

 一先ず、仲間には全てを話すべきだろう。だが、ヴンダーはじわりと湧いてくる異様な不安感に襲われている。話そうと試みたところで、自分の口が思い通りに動かないような気がしてならないのだ。

「なんだ、思い詰めた顔をしているな。心配しなくても魔力回復薬ならまだ余裕があるぞ。ここなら吐いても問題ないし、今のうちに飲んでおくか?」

 エモリーが生まれてこの方一度たりとも悩んだことのないような声で言った。ヴンダーは彼の純粋さに一寸たじろいだが、魔力を回復させておくに越したことはないので、有り難く貰い受けた赤い薬液を一気に飲み干すと、苦みと臭みに目と鼻の穴をカッぴらきながらの酷い形相で暫し吐き気を耐えるべく無心となったのだった。
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