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元魔王城(142〜)
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しおりを挟む「そうか、さすがに教会は魔王と勇者の動向から目を離さないよな」
ギムナックが遠慮がちに言った。元神官のハンナが「ヨシュア?」と訝る口調で反芻する。
「ヨシュア……神官の、ヨシュア……?」
「ヨシュア・クリーク神官だよ。あたしとリンを教会で育ててくれたんだ。おね……おに……? お兄さん、ヨシュア様のことを知ってるの?」
「『お姉さん』だろうが! 全く、その赤い目は節穴かい!」
物凄い剣幕で脅されたフルルはいつになく縮こまって「お、お姉さん」と即座に言い直した。それを聞いたハンナは満足げに頷いて話を戻す。
「そうねぇ、ヨシュア・クリークって名前には聞き覚えがあるわねぇ。だけど、ちょおっと昔のことだから詳しく思い出せないわ。う~ん、何だったかしら? ああ、あたしにもアレクシアやヴンダーみたいな記憶力があればねぇ」
硬そうな顎に人差し指を当てて考えるハンナの後、ギムナックが間を継いで説明する。
「神官ってのは、神官になる時にすでに同姓同名の神官がいた場合は後輩の方が改名しないといけないんだ。少なくとも百年を置かずに同姓同名の神官が現れることはないだろうから、ハンナの知っているヨシュア神官と人違いではないと思う」
「そうなのか。じゃあ、きっとヨシュア様に凄い功績でもあったんだ。ヨシュア様は本当に素晴らしい神官だったから……」
そう言って一瞬うつ向きかけたフルルだったが、いつの間にかすぐ後ろにいたリンに背中を突かれて持ち堪えた。フルルの目尻に光る涙を見たプルェ・プティカの──エモリーを除いた──メンバーは、すぐにヨシュア神官の身に不幸があったことを察し、また少女の気丈さに感心するのだった。
「ごめん、なんか変な空気にしちゃったね。さ、こんなことしてる場合じゃないよ。早くどうするか決めなくちゃ」
フルルは誰より大人らしく振る舞った。しかして、言うことも正論である。
グランツも早々に考えることを諦めたのか、リュークを連れて戻ってきた。
「やあ、大事も大事でどうにもならんな!」
西の辺境伯らしく、実に晴れやかな笑顔である。レオハルトはさもこうなることを見越していたかのように「そうですね」と端的に返すと、「ですが」と議論に前進のきっかけを与える。
「ここは一つ。勇者の悪行については一旦脇に置くとして、せっかくですから悪魔の討伐に協力して頂きましょう」
「協力してくれるのか?」中年の兵士の声が言った。
対し、レオハルトは「おそらくは」と、殆ど断言めいた答え方をした。
これが合図のようになって、「よし、では」と一秒たりとも考えずにグランツが扉へ手を掛けた。
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