名探偵に憧れた私はついうっかり異世界に探偵事務所を構えてしまった

冬月光輝

文字の大きさ
5 / 64

第5話 金髪とスキンヘッドと村長

しおりを挟む
「失礼しました。日本語が通じると思ってなかったものですから」
 気を悪くしていない事を願いつつ、一番大事な質問をしてみた。

「あの~変なことを質問するのですが、ココは何県になるのでしょうか?」
 2人は、怪訝な顔をしていた。

(やっぱり、変な人だと思われている。そりゃそうだよね)
 少しの沈黙のあと、スキンヘッドの男が口を開いた。

「ナニケンとはどういう意味なんだい?」
 2人はまた顔を見合わせる。

(少し難しい日本語だったかな)
 あたしは、もう一度分かりやすい日本語を意識して質問をしてみた。

「この場所はどの都道府県になりますか?」
 これなら、通じるかな?

「トドウフケンというものがよく分からないけど、この場所だったらエジシア王国領サランの村の端っこだよ」
 金髪の男は困った顔をして答えた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
私は黙って言われたことを整理してみた……。
全っ然わからない……。

「はぁ……?」
 あたしは、からかわれているのに違いない。 
 エジプト、じゃなくてエジシア王国ってなんだ?

「エジシア? サラン? からかっているのなら、やめてください。本当はわかってるんでしょ?2人とも流暢な日本語を喋れてるじゃないですか!」
 疲れているせいで、つい声を荒げてしまった。

 2人は顔をまた見合わせて、肩をすくめた。

「君がドコから来たのかは知らないが、ココは紛れもなくエジシア王国だよ。ニホンゴというのもよく分からない。君も僕もバルモア共通言語しか話してないよね?」
 金髪の男が困った顔をしながら、話しかけてきた。
 この人たちは何を言っているのかさっぱり分からない。
 おかしな人たちなのだろうか?

それとも……。

(あたしが、おかしいの?)

 足に震えが戻ってきた。
 2人の、自称エジシア人は気の毒そうな顔であたしを見ていた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
 沈黙が続いていた。

 2人の男も顔を見合わせるだけだった。
 『ドッキリでした~』とからかってくれるのを願ってみたが、期待は薄そうだった。
 途方に暮れて俯いていると、スキンヘッドの男が口を開いた。

「ここで立ち話しても仕方がない。とりあえず、村長ならなんか分かるかもしれないぜ。一緒に来ないか?」

(怖い気もするけど‥)
 あたしは少し迷ったが、ゆっくり頷いた。

(もうどうにでもなれ!)
 半ばヤケクソで着いていくことにした。

 2人に案内されること15分くらい。
 あたしの目の前には、村長の家と呼ばれる木造の建築物の前に居た。

「村長居るかい?」
 スキンヘッドの男が、ドアを開けながら尋ねた。

「何じゃ?せっかく昼寝しとったのに」
 奥から老人の声が聞こえる。

「すまねぇ、こっちの女の子がちょっと訳ありそうなんだよ。相談に乗ってくれないかい?」
スキンヘッドの男は、あたしを指さした。

「女の子?」
 しゃがれた声と共に村長と呼ばれた老人が出てきた。

「こりゃあ、また変わった格好をしとる娘じゃのう」
 村長はメガネを上下させながらあたしを見た。

「ちょっと僕たちでは話が分からなかったので、村長さんなら何か分かると思って。さあ話してごらん」
 金髪の男が私を促してきた。

「実は……」
 あたしは、ココまで来た経緯を話した。

「ふーむ」
 ほとんどの話しを終えた後、村長は首を捻って腕を組んでいた。

「おおっ、思い出した!」
 5分くらい経った後、村長は大声を上げた。

「ニホンという言葉はいつか聞いた事があったと思っとったんじゃが、タチバナ先生の生まれ育った国の名前がそんな感じじゃった。娘さん、あんたの見た目も先生によく似とる」
 村長はポンと手を叩いて思い出したように話しだした。

(タチバナ‥日本人の名前だ)
 あたしの胸は少しだけ高鳴った。

「タチバナ先生というと、確か有名な探偵だったな」
 スキンヘッドの男が口を開いた。

「確かに色んな事は知ってそうですね」
 金髪も相づちを打つ。

「その、タチバナさんという人に会ってみたいです。どこにいらっしゃるのですか?」
 あたしは、居ても立ってもいられなくなってきた。

「お主、まさか歩いて行くつもりか?それは無理じゃよ。先生の居るハランの町に行くには、山を2つを越えなくてはならないからのお」
 村長は首を振りながら教えてくれた。

「それでは、何か交通機関はあるのですか?」
 すかさず、あたしは質問をした。

「馬車が出とる。1番早いので今から3日後にな。しかし、金がかかるぞ。お主文無しじゃろ?」
 村長から辛辣な言葉が出る。

「そっそれは‥」
 言葉が詰まってしまった。

「そこでじゃ、先生にはわしから先に紹介状を送っておくから、3日間ここでわしの手伝いをせぬか?そうしたら馬車のお金は建て替えてやるぞ」
 村長は私に提案した。

(本当は3日も待ってられないけど‥)
 選択の余地は無かった。

「お願いします」
 あたしは、頭を下げながら腹を括った。

 そして、このとき初めて、行方不明の父もこの奇妙な世界のドコかにいるかもしれないという予感が頭に過ぎった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...