名探偵に憧れた私はついうっかり異世界に探偵事務所を構えてしまった

冬月光輝

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第42話:白馬と姫と勇者

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「どうなっているのだろう、この状況……」
 あたしは非日常識には、慣れてきたと思っていた。

 しかし、現実は想像の上を簡単に越える。

「また、夢でもみているのかな?」
 あたしが気付いたとき、【白馬に乗った真っ赤な鎧を身に付けた男にお姫様抱っこされて】いた。

(何これ? また誘拐? あたしってそんなに誘拐に縁があるの?) 

「姫様お気付きになりましたか?」
 鎧の男はあたしが目を覚ましたことに気付いて話しかける。

「え、あの、あたし、姫様じゃないです」
 あたしは、意味がわからなかった。
 この人、頭がどうかしちゃっているのかしら……。

「いいえ、貴女は私達の唯一無二の姫様で在らせられます。私はこの日をどれほど待ちわびたことでしょうか」
 鎧の男は感無量だと言わんばかりの興奮状態であたしの話を全く聞いてくれなかった。

 あたしは今、覚えていることを思い出そうとした。
 ちょっと前まで、あたしは、フィリップと共に立花さんの到着を待っていた。

――少し前……。

「お嬢さんがジンさんを信じているのでしたら、面白いことを教えてあげますよ。貴女は今、毒に犯されています。ジンさんがここに来ましたら、この解毒薬を賭けて僕と戦って貰います」
 フィリップはあたしの表情を伺っている。

「つまり、ジンさんが間に合わなかった時点で、その瞬間貴女は毒で死にます」
 そう宣告すると、フィリップは楽しそうにあたしを見つめた。

「どうやら貴女も中々強情のようですね。それはそれで楽しいですよ。どれくらいジンさんが痛め付けられれば表情が変わるのか。想像するだけでゾクゾクします」
 フィリップはそう言いながら、紅茶のお代わりを入れていた。

「おや、思ったより早くここに着いたようですね。ここに来る階段にはかなり罠を仕掛けたのですが」
 フィリップは意外そうな顔をしていた。

――ガチャッ

 扉が開かれ、中に人が入ってくる。

「立花さん?」
 あたしは見慣れないシルエットに困惑した。
 それにしては、大きい気がする……。
 しかし、あたしより困惑した人物がいた。

「あなたは誰ですか?どうやってここに入ってきたのですか?」
 フィリップは思いもよらない事態を飲み込めずにいた。

「ご無事で何よりです姫様、さあ帰りましょう。民もあなたの帰りを待っております」
 赤い鎧の男が跪いて話していた。

「僕の質問は無視しない方がいいですよ」
 フィリップは鎧の男に衝撃波を放った。

「姫様、私が来たからには安心です。こちらへどうぞ」
 鎧の男は微動だにせず、話を続ける。
 あたしのことを【姫様】と呼んでいることに気が付くのに時間がかかった。

「パワーを加減し過ぎたようですね。今度はフルパワーですよ」
 フィリップが出力を最大にして衝撃波を放ったが、鎧がカタカタと揺れるだけでほとんど効果はなかった。

「さっきから、君は無駄なことをしてるよ。この勇者の鎧には君程度の力は通じない」
 鎧の男から兜越しに威圧感のある声が急に出てきた。

「通じない?何を言っているのか全くわかりませんね」
 フィリップは瞬間移動で間合いを詰めて至近距離から連続して衝撃波を繰り出した。

「だから意味ないってば、それにしても君は畏れ多いことに姫様を監禁していたんだね。そして、あんなことやこんなことを…。万死に値するよ」
 鎧の男の声は段々荒くなっていた。

「本当の衝撃波はこう打つんだよ!うらぁ!」
 鎧の男が激昂して腕を振り上げると、辺り一帯に突風が舞い上がる。

 フィリップは瞬間移動で避けたと思っていた。

「グフッ」
 フィリップの腹に重い衝撃が走る。

「勇者の技が、瞬間移動なんかで避けられると思ったか?死ね!!」
 鎧の男はブンブンと剣を振った。

「当たりませんよ」
 フィリップは今度こそ避けられると思っていた。
 
 しかし、瞬間移動で一定の距離を取ったにも関わらず、フィリップは切り傷だらけに、なっていた。

「止めだ!!」 
 鎧の男が両手を天にかざした瞬間、レオンは気づいてしまった。

「姫様、大丈夫ですか?」
 あたしは衝撃波の余波を受けて倒れてしまったらしい。

「これはいけない。早く戻らなくては」
 鎧の男はあたしを抱き抱えて窓から外に出た。

――現在

 そして、あたしはこの男に抱えられたまま何処かに向かっている。

「ちょっと待って、あたしは薬を飲まなきゃ死んじゃうの?」
 あたしの背筋が寒くなった。

「おろしてください。あたしはこのままじゃ…」
 あたしは早く逃げなきゃならないと本能的に感じた。

「姫様、大丈夫です。この私、勇者ヒースが必ず貴女を護ります」
 ヒースと言う男の話の通じなさは、かなり厄介だった。

「あたしは姫様じゃないし、このままだと、毒で死んでしまいます。あの洋館に戻ってください」
 あたしは懇願したが、ヒースは返事をしてくれなかった。

「あー短い人生経験だったな。このまま死にたくないな」
死を意識していると、自然と涙が目頭に集まる。
 あたしは死を覚悟して目をつぶった。
 その時、あたしの耳に聞き慣れた声が聞こえた。

「涼子くん無事かーい?」
 遠くからあたしを呼ぶ声がした。 

 目を開くと、大きなドラゴンが3人を乗せて羽ばたいている。

「立花さーん!助けてくださーい」
 あたしは、今日一番の大声で助けを求める。
 あたしの声に立花は気がついたようだ。

「今、行くよー。あの馬まで飛んでくれ!」
 立花はドラゴンに指示を出す。

(やっと来てくれた。嬉しい。本当に嬉しいよ)
 あたしは涙ぐんでいた。

「何だ?まだ追手がいたのか。仕方がないな」
 ヒースが腰の剣を抜いて、一振りする。

――グシャッ

 立花達の乗っていたドラゴンの首が切り落とされた…。

約束の時間まで後、1時間30分。
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