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第十三話

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「新しい生活は慣れたか? しばらくの間は仮住まいで申し訳ないが、何か必要なものがあったら言ってくれ」

 ダンジョン攻略から一週間が過ぎました。
 あれからは、平和そのもので……魔物が侵入しやすいポイントに幾つか結界を張ったり、病人や怪我人を数百名ほど診るくらいで特に難しいことは何もなく穏やかに生活しています。
 聖女としての勤めを百分の一の力に抑えられていたときは、毎日が激務に感じられましたが今は全く疲れることなく毎日を送っておりますので、特に不満はありません。

「不自由はありません。セレナもリュージュもとても良くして下さっていますし」

 私の世話係と護衛を兼ねているセレナとリュージュとも地下251階層にも及ぶダンジョンの攻略を境に打ち解けて、気楽に話せる仲になりましたし、今の生活に言うことはありません。
 死ぬ気で修行をしていた教会時代や1%に力を抑えられていた時と比べると天国と言っても過言ではないでしょう。

「そうか。ならば良いが……。そういえば、幼い時になるがフィアナは読書が趣味であったと聞いた。今もそうなのか?」

「ええ。読書は好きですが。――ローレンス様、以前に父や私とお会いしたことがあると仰っていましたが、本当のことなのですね」

 私を迎えに現れた時、父が恩人だと述べていたローレンス様。
 幼い日の私のこともご存知の様子でしたし、その辺りの事情が気になっていました。
 昔から本を読むことが好きでしたので、小さな頃から読書が趣味だったのも確かなはずです。

「そうだね。結婚も控えていることだし話しておこうか。君のご両親が存命だった頃の話だから、思い出させると悲しい想いをさせると思って黙っていたのだが」

「お気遣い感謝します。今でしたら大丈夫です。精神も安定していますから」

 やはりローレンス様は私に気遣って敢えて話さなかったのですね。
 何となく気付いていました。私が幼い日の記憶を失っていることもご存知ということは。

「君の父親、イースフィル侯爵は優れた魔法センスを先代教皇に認められ、貴族でありながら第一級退魔士の資格も得ており、アウゼルム王国の国防の要だったことは知っているな?」

「父が魔物や悪魔退治をしていたことは聞き及んでいます。私が聖女としての才に恵まれたのは父親譲りだということも」

 私は記憶というより伝聞で聞いて父の情報を把握していると答えました。
 私の父は退魔士と呼ばれる教会所属の魔物や悪魔退治の専門家として国を守るために戦っていたという事実は教会にいた頃に聞いていましたから。
 
「今から12年前のことだ。僕は父に連れられて、アウゼルム王国の国王主催の大きなパーティーに出席したんだ。その時だよ、美しい銀髪が印象的だった君と初めて出会ったのは」

 ローレンス様の口から語られる私と父、そして彼の過去に起きた出来事。
 それは私の想像した以上に壮絶な出来事だったのです。
 そして、その話は今……この国で、いや大陸全体で起きている異変にも繋がる話でした――。
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