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Ep16 歪み
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「はっはっは、ローレンスさんがまさかジョークを披露するなんて思ってもみませんでしたよ」
アレンデールはわざとらしくリアクションをとりながら、ローレンスの肩を叩きました。
そっそうですよね。流石に冗談ですよ。こんな、数分で惚れた腫れたなんて――。
目が本気に見えたのも演技ですよね。お人が悪いです。
「君と一緒にしないでくれ。私は冗談は言わない――。クラリスさん、君に惚れてしまったんだ――。僕と一緒に来てくれ――」
アレンデールの手を払い、ローレンスは再び求婚のような告白をしました。
どうやら、本気みたいですね。
まだ、さすがにクラリスがダルバートに行くようなことになるのは避けねば色々と問題が起こります。
仕方ありません。あまり干渉するつもりはなかったのですが――。
「ローレンス殿下、クラリスの問題はアルティメシア家の問題となります。殿下は見たところ今日はお忍びで足を運ばれたご様子。もし、殿下が本気なのでしたら、然るべき形式に則って改められたほうがよろしいかと存じます。この子も混乱して言葉を失っております。何卒、その点をご配慮頂きたいです」
私はクラリスを庇うようにローレンスに意見しました。
もちろん、あの皇太子から目を逸らさせ、裏切らせようとする目的はありましたが、まだ準備も出来ていない内に話が飛躍するのは面倒です。
「――はぁ。確かに、グレイスさんの言うことはもっともですね。私としたことが感情的に思慮浅い行動をして申し訳ありません。非礼を詫ましょう」
ローレンスはため息をつき、そして頭を下げました。
ふぅ、ギリギリのところで理性が勝ってくれましたか。クラリスに迷いがあったのにも助けられましたね。
おそらく彼女が積極的になっていれば、私の説得など無効にされてしまうでしょうから。
ローレンスはアレンデールと歴史書の交換や議論をするためにやって来たらしいのですが、求婚の準備をすると言って側近の護衛を引き連れて急いで帰ってしまいました。
これは、時間があまり無さそうですね。急いでこちらの問題を片付けなくては――。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アレンデールと別れ、クラリスを馬車に乗せて連れて帰りました。
今回のクラリスをアルティメシア家の養子にする件はもちろん両親の許可も取っています。
皇太子の所業は理不尽だと憤っていましたが、なんとか宥めてクラリスを受け入れる形は作りました。
まぁ、それでも完全に納得はしていないのですが、その点はクラリスの天性の愛され力で何とかしてもらいましょう。
馬車を降りて門から玄関に向かおうとしたところ、アシュクロフトに声をかけられました。
「初めまして、クラリスお嬢様。私はアルティメシア家の執事、アシュクロフトと申します。何かお困りごとがございましたら何なりと申し付けください」
彼はクラリスに頭を下げて、丁寧に挨拶しました。
「あっ、はい、どっどうもありがとうございます。ご丁寧にすみません。あたしなんかに……」
「いえいえ、クラリスお嬢様も今日から立派な令嬢です。ですから、間違っても“あたしなんか”なんて仰ってはなりませんよ。如何なるときも“凛として毅然と――”の精神を身につけてください」
アシュクロフトは優しく微笑みながらクラリスに話しかけています。
“凛として毅然と――”は良いですが、2つほど気になることを質問したいです。
「そこでボロボロの布切れに包まれて倒れている人達は誰ですか? あと、何故、皇太子殿下の子とその母親が我が家の庭にいるのですか?」
私はアシュクロフトの後方が気になって仕方がありませんでした。なんせ、4人のズタボロの男たちと、2人の母親と2人の赤ん坊が居たのですから。
「お嬢様が命じたのでしょう。この方々が狙われそうということで、私に護衛するように――。案の定、皇太子殿下が暗殺者の刺客を放ちまして、少々痛い目を見てもらいました」
やはり、あの浅はかな男はこういう手段に訴えましたか――。
しかし、少々痛い目と言う割に暗殺者たちの体が変な方向に曲がっていると思うのですが――。
「ご心配には及びません。逃亡防止のために体中の関節を外しているだけですので、命に別状はありません」
アシュクロフトはにこやかに答えました。
平然と怖いことをされますね……。しかし、この方たちをどうするつもりでここに連れてきたのか説明が終わってませんね。
「いえ、このまま4人を返しても、また狙われるだけですので、一時的にこちらで預かって死んだことにされたほうがよろしいかと思いまして――。暗殺者共は私が脅しをかけて、皇太子殿下から報酬をもらい次第国外に出ていってもらうつもりでした」
「なるほど、さすがはアシュクロフトです。頼りになりますね」
「そう仰っていただいて、恐縮でございます」
彼はそう言って丁寧にお辞儀をしました。
「えっ、殿下が赤ん坊を――。そんなはず――」
クラリスが両手を口をあてて驚いた表情をしていました。微かに震えながら――。
彼女の中で少しずつ自分の世界が壊れてきているようですね。
なるほど、本当の狙いはクラリスという訳ですか、やはりアシュクロフトは頼りになりますね――。
アレンデールはわざとらしくリアクションをとりながら、ローレンスの肩を叩きました。
そっそうですよね。流石に冗談ですよ。こんな、数分で惚れた腫れたなんて――。
目が本気に見えたのも演技ですよね。お人が悪いです。
「君と一緒にしないでくれ。私は冗談は言わない――。クラリスさん、君に惚れてしまったんだ――。僕と一緒に来てくれ――」
アレンデールの手を払い、ローレンスは再び求婚のような告白をしました。
どうやら、本気みたいですね。
まだ、さすがにクラリスがダルバートに行くようなことになるのは避けねば色々と問題が起こります。
仕方ありません。あまり干渉するつもりはなかったのですが――。
「ローレンス殿下、クラリスの問題はアルティメシア家の問題となります。殿下は見たところ今日はお忍びで足を運ばれたご様子。もし、殿下が本気なのでしたら、然るべき形式に則って改められたほうがよろしいかと存じます。この子も混乱して言葉を失っております。何卒、その点をご配慮頂きたいです」
私はクラリスを庇うようにローレンスに意見しました。
もちろん、あの皇太子から目を逸らさせ、裏切らせようとする目的はありましたが、まだ準備も出来ていない内に話が飛躍するのは面倒です。
「――はぁ。確かに、グレイスさんの言うことはもっともですね。私としたことが感情的に思慮浅い行動をして申し訳ありません。非礼を詫ましょう」
ローレンスはため息をつき、そして頭を下げました。
ふぅ、ギリギリのところで理性が勝ってくれましたか。クラリスに迷いがあったのにも助けられましたね。
おそらく彼女が積極的になっていれば、私の説得など無効にされてしまうでしょうから。
ローレンスはアレンデールと歴史書の交換や議論をするためにやって来たらしいのですが、求婚の準備をすると言って側近の護衛を引き連れて急いで帰ってしまいました。
これは、時間があまり無さそうですね。急いでこちらの問題を片付けなくては――。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アレンデールと別れ、クラリスを馬車に乗せて連れて帰りました。
今回のクラリスをアルティメシア家の養子にする件はもちろん両親の許可も取っています。
皇太子の所業は理不尽だと憤っていましたが、なんとか宥めてクラリスを受け入れる形は作りました。
まぁ、それでも完全に納得はしていないのですが、その点はクラリスの天性の愛され力で何とかしてもらいましょう。
馬車を降りて門から玄関に向かおうとしたところ、アシュクロフトに声をかけられました。
「初めまして、クラリスお嬢様。私はアルティメシア家の執事、アシュクロフトと申します。何かお困りごとがございましたら何なりと申し付けください」
彼はクラリスに頭を下げて、丁寧に挨拶しました。
「あっ、はい、どっどうもありがとうございます。ご丁寧にすみません。あたしなんかに……」
「いえいえ、クラリスお嬢様も今日から立派な令嬢です。ですから、間違っても“あたしなんか”なんて仰ってはなりませんよ。如何なるときも“凛として毅然と――”の精神を身につけてください」
アシュクロフトは優しく微笑みながらクラリスに話しかけています。
“凛として毅然と――”は良いですが、2つほど気になることを質問したいです。
「そこでボロボロの布切れに包まれて倒れている人達は誰ですか? あと、何故、皇太子殿下の子とその母親が我が家の庭にいるのですか?」
私はアシュクロフトの後方が気になって仕方がありませんでした。なんせ、4人のズタボロの男たちと、2人の母親と2人の赤ん坊が居たのですから。
「お嬢様が命じたのでしょう。この方々が狙われそうということで、私に護衛するように――。案の定、皇太子殿下が暗殺者の刺客を放ちまして、少々痛い目を見てもらいました」
やはり、あの浅はかな男はこういう手段に訴えましたか――。
しかし、少々痛い目と言う割に暗殺者たちの体が変な方向に曲がっていると思うのですが――。
「ご心配には及びません。逃亡防止のために体中の関節を外しているだけですので、命に別状はありません」
アシュクロフトはにこやかに答えました。
平然と怖いことをされますね……。しかし、この方たちをどうするつもりでここに連れてきたのか説明が終わってませんね。
「いえ、このまま4人を返しても、また狙われるだけですので、一時的にこちらで預かって死んだことにされたほうがよろしいかと思いまして――。暗殺者共は私が脅しをかけて、皇太子殿下から報酬をもらい次第国外に出ていってもらうつもりでした」
「なるほど、さすがはアシュクロフトです。頼りになりますね」
「そう仰っていただいて、恐縮でございます」
彼はそう言って丁寧にお辞儀をしました。
「えっ、殿下が赤ん坊を――。そんなはず――」
クラリスが両手を口をあてて驚いた表情をしていました。微かに震えながら――。
彼女の中で少しずつ自分の世界が壊れてきているようですね。
なるほど、本当の狙いはクラリスという訳ですか、やはりアシュクロフトは頼りになりますね――。
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