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Ep20 談笑
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朝になりました――。セリスとエリーカにいつもの様に着替えを手伝ってもらいます。
「このように綺麗な格好をしたのは初めてです。お義姉様、本当にあたしがこんなに着飾ってもよろしいのですか?」
クラリスももちろん貴族らしい格好をさせます。特にアレンデールの話では今日、教皇がやって来ますので、彼女には特にきちんとした服装で居てもらわなくては――。
アレンデールが羨ましいです。そりゃあ、見事に策謀を張り巡らしたことは認めますが、結局は私が機を伺って皇太子を糾弾する流れに持って行かなくてはならないのですから。
そんなことを考えながら朝食へ向かいます――。
「グレイス、クラリス、おはよう。グレイス、お客様だよ」
お父様が私とクラリスに声をかけました。
私にお客様? 今日に限って……、どなたでしょうか?
「あら、貴方様は、昨日のアレンデール様ではないでしょうか?」
クラリスが先に客人を見つけて声をかけました。
アレンデール? どうしてここに? 貴方は昨日帰ったのでは――。
私はびっくりして彼を見ました。
「あっアレンデールさん? 何をされているのですか?」
驚きのあまり声が上手く出ません。
「コーヒーを飲んでます。うーん、いい香りです。おっ、この酸味はモカ系ですかねぇ」
アレンデールは呑気そうな顔をして、我が家で両親と談笑しながらコーヒーを飲んでいました。
「それは私がモカが好きですから――じゃ、なくてですね! どうして、貴方がここに居るのですか!?」
私はつい、大きな声が出てしまいました。
「あら、グレイス。あなた、大きな声を出してはなりませんよ――。アレンデール様は親切でこちらにいらっしゃったのですよ。貴女のブローチを拾って来て下さったのですから感謝なさい」
お母様が私を咎めるように言いました。
「――ブローチですか? はぁ、確かに私の物ですね……。これを貴方が? 昨日ですか?」
私はアレンデールの目を見ました。
――絶対に気付かない内に昨日盗みましたね……。もう、油断もスキも……。
しかし、どうやら彼も本気みたいですね。今日、決着をつけることに……。
私の視線を感じ取ったのか、アレンデールは不敵に微笑んで瞳を光らせました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
異常なコミュニケーション能力を発揮しているアレンデールはすぐに両親と仲良くなりました。
「ほう、それでは今度拝見させてもらおうかな。君の歴史研究発表とやらを――。しかし、その歳でねぇ、立派なものだ。ウチのグレイスなんて、勉学はそれなりだが、独自の研究などとてもとても……」
「いえいえ、お嬢様の噂は聞き及んでおります。アレクトロン王立学校始まって以来の才女だとか――」
私は今日のことで気が気ではないのですが……。よく、貴方はお父様と楽しそうに会話ができますね。
「兄が厚かましくてすみません……」
リルアもアレンデールの隣で小さくなって座っていました。彼女はかなり気まずそうな顔をしています。
「いえ、お気になさらないでください。父も母も喜んでますから」
私は恐らく無理やり連れてこられたであろうリルアに少し同情しました。
「リルアさんっていうんですねー。年齢は――。へぇーあたしと同じですぅ」
クラリスは持ち前の人見知りしない天真爛漫さ加減を遺憾なく発揮して、リルアを質問攻めしていました。
リルア――、申し訳ありませんが、しばらくこの子のお守りをお願いします……。
そんな賑やかで一見平穏な朝の時間は瞬く間に過ぎていきました。
アシュクロフトが来客を告げたのです。
遂にやって来ましたか。教皇が……。
しかし、予想はハズレました。来客の正体はなんと皇太子だったのです。
「ほう、皇太子殿下がこちらに……」
「殿下……」
皇太子の出現に反応したアレンデールは真剣な表情に、そして、クラリスは昨日見せた冷たい表情を僅かに見せました。
「くっクラリスをとっとと寄越すんだ。クラムー教皇様がこちらに向かっていると聞いた! クラリスを【聖女】にするって言ってるんだ! 冗談じゃないっ! コレは僕のモノだ!」
皇太子は色々と余裕がないのかいつも以上に乱暴な口調で、兵士を数人引き連れて、我が家の談話室まで駆けてきました。
いくら、皇太子とはいえ、これはあまりにも不躾です。
「コレ? モノ? 殿下……?」
クラリスは俯きながらブツブツ何かを唱えています。
「ちょっとさぁ、びっくりよ! クラムー教皇って人がいらっしゃったぞ」
そんな状況で更にセリスは来客を告げました。
役者が全て揃ってしまいました。この状況を活かせないともう後がありません。
私は生唾を飲み込み、全神経を集中させました。
いよいよ最後の戦いです――。
「このように綺麗な格好をしたのは初めてです。お義姉様、本当にあたしがこんなに着飾ってもよろしいのですか?」
クラリスももちろん貴族らしい格好をさせます。特にアレンデールの話では今日、教皇がやって来ますので、彼女には特にきちんとした服装で居てもらわなくては――。
アレンデールが羨ましいです。そりゃあ、見事に策謀を張り巡らしたことは認めますが、結局は私が機を伺って皇太子を糾弾する流れに持って行かなくてはならないのですから。
そんなことを考えながら朝食へ向かいます――。
「グレイス、クラリス、おはよう。グレイス、お客様だよ」
お父様が私とクラリスに声をかけました。
私にお客様? 今日に限って……、どなたでしょうか?
「あら、貴方様は、昨日のアレンデール様ではないでしょうか?」
クラリスが先に客人を見つけて声をかけました。
アレンデール? どうしてここに? 貴方は昨日帰ったのでは――。
私はびっくりして彼を見ました。
「あっアレンデールさん? 何をされているのですか?」
驚きのあまり声が上手く出ません。
「コーヒーを飲んでます。うーん、いい香りです。おっ、この酸味はモカ系ですかねぇ」
アレンデールは呑気そうな顔をして、我が家で両親と談笑しながらコーヒーを飲んでいました。
「それは私がモカが好きですから――じゃ、なくてですね! どうして、貴方がここに居るのですか!?」
私はつい、大きな声が出てしまいました。
「あら、グレイス。あなた、大きな声を出してはなりませんよ――。アレンデール様は親切でこちらにいらっしゃったのですよ。貴女のブローチを拾って来て下さったのですから感謝なさい」
お母様が私を咎めるように言いました。
「――ブローチですか? はぁ、確かに私の物ですね……。これを貴方が? 昨日ですか?」
私はアレンデールの目を見ました。
――絶対に気付かない内に昨日盗みましたね……。もう、油断もスキも……。
しかし、どうやら彼も本気みたいですね。今日、決着をつけることに……。
私の視線を感じ取ったのか、アレンデールは不敵に微笑んで瞳を光らせました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
異常なコミュニケーション能力を発揮しているアレンデールはすぐに両親と仲良くなりました。
「ほう、それでは今度拝見させてもらおうかな。君の歴史研究発表とやらを――。しかし、その歳でねぇ、立派なものだ。ウチのグレイスなんて、勉学はそれなりだが、独自の研究などとてもとても……」
「いえいえ、お嬢様の噂は聞き及んでおります。アレクトロン王立学校始まって以来の才女だとか――」
私は今日のことで気が気ではないのですが……。よく、貴方はお父様と楽しそうに会話ができますね。
「兄が厚かましくてすみません……」
リルアもアレンデールの隣で小さくなって座っていました。彼女はかなり気まずそうな顔をしています。
「いえ、お気になさらないでください。父も母も喜んでますから」
私は恐らく無理やり連れてこられたであろうリルアに少し同情しました。
「リルアさんっていうんですねー。年齢は――。へぇーあたしと同じですぅ」
クラリスは持ち前の人見知りしない天真爛漫さ加減を遺憾なく発揮して、リルアを質問攻めしていました。
リルア――、申し訳ありませんが、しばらくこの子のお守りをお願いします……。
そんな賑やかで一見平穏な朝の時間は瞬く間に過ぎていきました。
アシュクロフトが来客を告げたのです。
遂にやって来ましたか。教皇が……。
しかし、予想はハズレました。来客の正体はなんと皇太子だったのです。
「ほう、皇太子殿下がこちらに……」
「殿下……」
皇太子の出現に反応したアレンデールは真剣な表情に、そして、クラリスは昨日見せた冷たい表情を僅かに見せました。
「くっクラリスをとっとと寄越すんだ。クラムー教皇様がこちらに向かっていると聞いた! クラリスを【聖女】にするって言ってるんだ! 冗談じゃないっ! コレは僕のモノだ!」
皇太子は色々と余裕がないのかいつも以上に乱暴な口調で、兵士を数人引き連れて、我が家の談話室まで駆けてきました。
いくら、皇太子とはいえ、これはあまりにも不躾です。
「コレ? モノ? 殿下……?」
クラリスは俯きながらブツブツ何かを唱えています。
「ちょっとさぁ、びっくりよ! クラムー教皇って人がいらっしゃったぞ」
そんな状況で更にセリスは来客を告げました。
役者が全て揃ってしまいました。この状況を活かせないともう後がありません。
私は生唾を飲み込み、全神経を集中させました。
いよいよ最後の戦いです――。
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