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第十九話(マークス視点)
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「ヘムロス、それにしてもあの男は何なんだ? 国庫が空になっただのあり得ぬことを言っておったが」
若い役人に国庫が空になったと絡まれたが、冷静に考えればそんなはずがあるまい。
僕は倹約しまくってたし、国民にも無駄金は使わせず、税金もきっちりとった。返済分は簡単に補えるくらいになっているはずなのである。
「空っぽ……、とまではいきませぬが、それに近いくらいの状態にはなっておりますな」
「何ぃっ!? 何をしとる! 宰相であるお前はそうなる前に何もしとらぬのは責任問題では無いのか!?」
「はぁ、返す言葉もありませぬなぁ。ヘムロス、一生の不覚だと思っております」
なんだ、なんだ、ヘムロスのやつ。まさか、僕の政策を怠けて行っていたのではないか?
こいつは忠義心に厚いと思って信頼してきたが、ここに来て僕の期待を裏切りやがった。
まったく、どいつもこいつも使えぬ連中ばかりで気分が悪い。
「いやはや、マークス殿下がお怒りなのも尤もです。陛下のご病気もようやく回復の兆しが見え、来週には国政に復帰なさりますからなぁ」
「そうだぞ、ヘムロス。父上がお前のせいで国庫が空になったと知れば、ただでは済まさんだろう。死罪もあり得ると思え」
この男、責任感が無いわけじゃないのか。だが、世話になったことがあるとはいえ、無能であることはそれだけで罪だからな。
しかも、こいつは宰相という地位だ。無能な働き者ほど周囲に迷惑をかけているという言葉もある。
やはり、許されることじゃあないだろう。
「ええ、ええ。やはりやってしまったことへの責任は取らないとなりませぬ。殿下も共に責任を取ることになることはご承知でしょうが、冷静さを失わずにいらっしゃるのは流石でございますなぁ」
「………………………はぁ?」
んっ? なんか、こいつ変なこと言わなかったか?
父上が復帰したら僕が責任……? 何で……?
だって、僕がやったことって倹約を政策を進めたことだけだよ? 良いことしかしてないじゃん。
ジェーンの件も本当は誰の子か分からないけど純愛ってことにして、事なきを得ているし。
「ヘムロス、責任逃れがしたいからって、馬鹿なことを言うな。考えてみたが、僕に怒られる要素は一つも無かったぞ」
「一つも……ですか?」
「もちろんだ! 有能な僕が考えた政策は贅沢病に冒された国民たちに良薬を処方したも同然! 王都の様子を見よ! 質素で慎ましい生活を皆が行っているのだぞ。この団結は僕に皆が賛同してくれた結果だ! みんな質素にしようと努力してくれるようになったのだからな!」
僕は贅沢なことをしていないか、毎日街に行って国民の生活をきっちりと監視している。
雨の日も風の日もどんなに体調が悪くとも、根性のある僕は一日たりともそれを怠らなかった。
するとどうだろう。国民たちがどんどん慎ましく、質素倹約に努めていったのだ。
やはり、必死で頑張る人間の気持ちって伝わるんだなーって。
「国民は努力などしとりませんよ。特に平民は単純に貧しくなっただけでごさいます」
「はぁ……?」
「収入が減れば財布の紐は締めざるを得ないでしょう。殿下の倹約政策とはすなわち活動することを止めようと努力すること。経済活動が死んでいるのですよ。様々な業種の業績が悪化して、それが連鎖的に他の業種を苦しめました。――ですから、平民たちは総じて貧しくなったのですよ」
あー、なるほどね。みんな貧乏になったから、お金を大事にするようになったのか。
じゃあ、良いことじゃないか。金なんて後から稼げば良いし。
「陛下が貧しくなった国民たちを、バーミリオン家への借金返済に喘ぐ王室を、その状況を作り出した殿下を見るとどうお考えか分かります?」
「んっ?」
「殿下、陛下は決して許しません。このヘムロスのことも、殿下のことも。それは覚悟しておきましょう」
ったく、ヘムロスのやつ、自分が怒られるからって僕を脅そうとするのはやめろ。
僕が演技を見抜けなかったらどうするんだ。まったく、面倒な男だ――。
若い役人に国庫が空になったと絡まれたが、冷静に考えればそんなはずがあるまい。
僕は倹約しまくってたし、国民にも無駄金は使わせず、税金もきっちりとった。返済分は簡単に補えるくらいになっているはずなのである。
「空っぽ……、とまではいきませぬが、それに近いくらいの状態にはなっておりますな」
「何ぃっ!? 何をしとる! 宰相であるお前はそうなる前に何もしとらぬのは責任問題では無いのか!?」
「はぁ、返す言葉もありませぬなぁ。ヘムロス、一生の不覚だと思っております」
なんだ、なんだ、ヘムロスのやつ。まさか、僕の政策を怠けて行っていたのではないか?
こいつは忠義心に厚いと思って信頼してきたが、ここに来て僕の期待を裏切りやがった。
まったく、どいつもこいつも使えぬ連中ばかりで気分が悪い。
「いやはや、マークス殿下がお怒りなのも尤もです。陛下のご病気もようやく回復の兆しが見え、来週には国政に復帰なさりますからなぁ」
「そうだぞ、ヘムロス。父上がお前のせいで国庫が空になったと知れば、ただでは済まさんだろう。死罪もあり得ると思え」
この男、責任感が無いわけじゃないのか。だが、世話になったことがあるとはいえ、無能であることはそれだけで罪だからな。
しかも、こいつは宰相という地位だ。無能な働き者ほど周囲に迷惑をかけているという言葉もある。
やはり、許されることじゃあないだろう。
「ええ、ええ。やはりやってしまったことへの責任は取らないとなりませぬ。殿下も共に責任を取ることになることはご承知でしょうが、冷静さを失わずにいらっしゃるのは流石でございますなぁ」
「………………………はぁ?」
んっ? なんか、こいつ変なこと言わなかったか?
父上が復帰したら僕が責任……? 何で……?
だって、僕がやったことって倹約を政策を進めたことだけだよ? 良いことしかしてないじゃん。
ジェーンの件も本当は誰の子か分からないけど純愛ってことにして、事なきを得ているし。
「ヘムロス、責任逃れがしたいからって、馬鹿なことを言うな。考えてみたが、僕に怒られる要素は一つも無かったぞ」
「一つも……ですか?」
「もちろんだ! 有能な僕が考えた政策は贅沢病に冒された国民たちに良薬を処方したも同然! 王都の様子を見よ! 質素で慎ましい生活を皆が行っているのだぞ。この団結は僕に皆が賛同してくれた結果だ! みんな質素にしようと努力してくれるようになったのだからな!」
僕は贅沢なことをしていないか、毎日街に行って国民の生活をきっちりと監視している。
雨の日も風の日もどんなに体調が悪くとも、根性のある僕は一日たりともそれを怠らなかった。
するとどうだろう。国民たちがどんどん慎ましく、質素倹約に努めていったのだ。
やはり、必死で頑張る人間の気持ちって伝わるんだなーって。
「国民は努力などしとりませんよ。特に平民は単純に貧しくなっただけでごさいます」
「はぁ……?」
「収入が減れば財布の紐は締めざるを得ないでしょう。殿下の倹約政策とはすなわち活動することを止めようと努力すること。経済活動が死んでいるのですよ。様々な業種の業績が悪化して、それが連鎖的に他の業種を苦しめました。――ですから、平民たちは総じて貧しくなったのですよ」
あー、なるほどね。みんな貧乏になったから、お金を大事にするようになったのか。
じゃあ、良いことじゃないか。金なんて後から稼げば良いし。
「陛下が貧しくなった国民たちを、バーミリオン家への借金返済に喘ぐ王室を、その状況を作り出した殿下を見るとどうお考えか分かります?」
「んっ?」
「殿下、陛下は決して許しません。このヘムロスのことも、殿下のことも。それは覚悟しておきましょう」
ったく、ヘムロスのやつ、自分が怒られるからって僕を脅そうとするのはやめろ。
僕が演技を見抜けなかったらどうするんだ。まったく、面倒な男だ――。
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