【完結】殿下が倹約に目覚めて婚約破棄されました〜結婚するなら素朴な平民の娘に限る?では、王室に貸した国家予算の八割は回収しますので

冬月光輝

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第二十六話

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「お前ら、僕は人質だぞ……、この扱いはあまりにも酷いではないか。布切れ一枚のみを渡され床で寝せて、食べ物は芋をスープに入れたものだけ。マッサージもない。読書する本もない。三日も同じ服を着させる……」

 早いものでハウルトリア軍がこちらに攻め込んできて二週間もの月日が経過しました。
 檻に閉じ込められているマークス殿下はうわ言のように待遇について文句を言われます。

 すでにハウルトリア軍が押し寄せて来てる時点で人質でないことは彼も分かっていますし、いつ殺されてもおかしくない立場なのは理解出来てると思うのですが、それでも今の待遇に我慢出来ないみたいです。

「殿下は倹約がお好きだと聞いていますので、せめて大好きな倹約生活を体験させて差し上げているのですが。ご不満でしょうか?」

「け、倹約だと……? バカを言うな。こんな人を縛り付けてみすぼらしい生活を強制することが倹約なはずがない。だ、だって、このままだと僕は栄養も足りずに死んでしまう……」

 マークス殿下はこんな生活を強制されることが倹約のはずがない、と答えます。
 この方、確かに贅沢、贅沢と口にする割にはご自身の質素倹約の水準がかなり高かったように思えたような気がします。  
 しかし、あの必死な形相。よほど今の生活が辛いのですね……。

「死にはしませんから安心召され。修験者の暮らしの中でも特に甘い水準で食事を与えておりますから。むしろ徳を積めるかもしれませんな。尤も、殿下が贅沢をしたいと望めば直ぐにでも豪華な食事をプレゼントして差し上げましょう」

「……ぜ、贅沢を誰が望むか。僕は無理を強制するなと言っておるのだ!」

「倹約を強制させる法律を作ったのに……ですか? 為政者が国民に強制したにも関わらず、自分は勘弁願いたいというのは理屈に合わぬと思われませんか?」

「うっ……」

 ぐうの音も出ないとはまさにこの事を言っているのでしょう。
 国民に贅沢を禁ずる法律を課して、自分はそれから逃れたいというのは矛盾しているということにマークス殿下はやっと気が付いたみたいです。
 
 本来はもっと早い段階で気付くべきだと思うのですが、これは快挙です。

「こ、こんな辛い暮らしをしている国民などいるはず――」

「仕事がなくなって、明日食べるものすら無くなったと泣いている国民がいることはご存知ですかな? 家族のために親の形見を売るしかなくなったと悔しい思いをした者がいることはご存知ですか? そんな思いをする者を一人でも減らすために政治を執り行うことこそ、貴方の仕事だったのではありませんか?」

「う、うるさい! そいつらは今まで贅沢したツケが回ってきただけだ! 僕はちゃんとやってきた!」

 自己矛盾に気付いたと思いきや、殿下は最後まで自分の間違いだけは認めません。
 確かにあれだけのことをしておいて、今さら全部が間違いだと認めるとプライドの高いこの方はどうかしてしまうかもしれませんね。
 
 ですが殿下……、そろそろ認めてしまった方がよろしいですよ。
 ハウルトリア軍が敗北する前に――。
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