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第三十六話(マークス視点)

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「なーはっはっはっ! 酒だ! 酒をもってこい!」

 正義とは何か……僕はずっと考えてきた。そして、やっと僕は自らの正義を見つけるに至る。

 そう、正義とは自分の信念を曲げぬこと。そしてどんな障害があろうと挫けずに突き進むことなのだ。

 僕の目的とは真のハウルトリア王国を創ること! そのためには物資も金も必要だ!
 申し訳ないとは思うが正義を貫くためには多少の犠牲は仕方ない。
 正義の強奪――僕の新たな国家建設に同志が集い、それを実行した。
 必要な物資が無いなら奪うしかない。無一文で大儀を果たすことは不可能だからだ。
 仲間たちはちょっと気性が荒いが、僕を若大将として持ち上げてくれて、ようやく本来のリーダーの椅子に戻れたような気がした。

「若大将! 次はどこを襲う!? サウスプールの町の貴金属店か!? それとも王都の外れにある貴族共の屋敷か!?」
 
「うーむ。金は出来るだけ多く欲しいからな。貴金属店にするか!」

「よっしゃ! 野郎共! 武器を用意しろ! 若大将が強奪を許してくれた! いいか、これは正義の強奪だ! 罪は問われない! 好きなだけやれ!」

「「おおーーーーっ!!」」

 んん~~! き、も、ち、い、い、な~~~!!

 僕の鶴の一声に同志たちが力を合わせて理想郷を作るために働いてくれるのは……言いようのない程の高揚感を与えてくれる。

 そう、僕の理想郷はここから始まるのだ。そもそもバーミリオンに与することが重罪に値する。
 この国はハウルトリアのものだったにも関わらず、好き勝手してやがる連中に反抗もせずに従うなんて許されることじゃあないのだ。

 だから、そんな不埒な連中はせめて僕の理想郷の為の糧になれば罪に贖うことが出来るというもの。
 普通は強奪など言語道断な犯罪だが、僕にそれが認められる正当性はここにあるのだ。

「若大将! 隣国のジゼット王国が融資をしてくれるみたいですぜ!」

「何っ!? 本当か!? くっくっくっ、隣国まで僕の理想郷に賛同してくれるとは! 向いてきたぞ! ついに僕に運が向いてきたぞ! もう一回乾杯するぞ!」

「「おおーーーっ!!」」

 き、き、き、気持ちいいーーーーーーーっ!!

 この一体感……! 仲間というものの、絆というものの、素晴らしさを僕は知ってしまった。
 そうか。世の中で一番大事なものそれは仲間たちとの大いなる絆――というわけか。
 
「しかし、若大将。一つだけ、融資を受ける為の条件があります」

「なーはっはっはっ! んっ? 条件だって?」

「へい。北の国境近くの金鉱山を占拠して、権利の一部を渡してほしいとのことです。それだけで10億ゼルドもの軍資金が……」

「金鉱山の一部……、んっ? 10億ゼルドだとっ!? よしっ! それだけあると、理想郷にかなり近付くことが出来るな! 任せろ!」

「くっくっくっ、さすがはバカ大将……じゃなかった、若大将……」

 若き英雄にして、歴代最高の国王――マークス・ハウルトリア。
 伝説の男となる予定のこの僕の快進撃が始まろうとしていた――。
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