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48.運命の出会い
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「それでも、打ち明ける勇気が出なかった。もっとそれを早く知っていれば、こんな回り道をしなくてよかったかもしれないのに。俺が臆病だったから」
「パスカルは臆病じゃないよ。オレの事を考えてくれる他人想いのけな気で頑張り屋でとっても可愛い子」
「可愛いは余計だよ」
「その通りでしょ。でももういいよ。なんであれどうであれ、パスカルと無事こうして一緒になれたんだから。オレも皇太子だって打ち明けなかったからお互い様だろうしね」
そんな高貴な生まれの人間が、なぜホームレスをしていたのかとか、いろいろ聞きたい事はあるけど、それは落ち着いた時にでも聞けばいいかと切り替える。
「パスカルの苦しみを蔑ろにしてるって思われるかもしれないけど、むしろオレはパスカルがレアオメガでよかったと思ったんだ」
「え……」
「これはさっき知ったばかりなんだけど、運命の番ってね、普通のオメガだと運命になれない確率が高いんだって。エミリーから聞いたんだ。もちろん、普通のアルファとオメガの運命の番もいるけど、幸福度が全然違うみたい。だからもし、パスカルが普通のオメガだったら運命にはなれない確率が高かったし、オレとパスカルがこうして結ばれる事も薄かった」
「あ……」
「だからね、オレとパスカルは本当に紙一重っていうかね、運が良かったんだよ。アルファとレアオメガの方がいろいろと恩恵にあやかれるんだから」
そう思うと、なんだか感慨深い気持ちになる。あれほどレアオメガとして生まれたことに絶望して最悪だと毎日嘆いていたのに、メルと出会えたことで状況はいい方にも180度に転がっていたのだ。
あの土手で出会った事は奇跡であり、運命の出会いだった。
「だから嬉しいんだ。初恋が実ったから」
「初恋、だったの?」
「うん。パスカルが初恋。それに運命の番だって知ってどれだけ嬉しかったか」
「……俺も、嬉しかったよ。メルが相手で。レアオメガだって判明したばかりの時、人生に絶望してた。そんな時にメルと出会ったんだよ」
「パスカル……」
「そこでメルに出会えてどれだけ救われたか」
そうして改めてメルの顔を見つめると、視線が真正面から溶け合った。どきりとして視線をそらそうとしたら、メルに手を握り重ねられて心音が早くなる。
「オレを見ろ、パスカル」
「――っ」
急に口調が変わって驚く。男なのにときめいてしまうのは、やっぱり惚れた贔屓目もあるのだろう。男らしいメルの表情と態度に心臓の音がさらに早鐘を打つ。
二次元で見慣れている少女漫画の展開だというのに、実際自分がその立場になってみると気恥ずかしくて爆発しそうだった。
「目を閉じて。キス、したい」
「き、きすって……」
「だめか?」
「っ、わ、ワカタ。ワカリマシタ」
番になったのだからキスくらい普通にできないとね。と、パニックになりながら促されるままに目を閉じた。近寄ってくるメルの気配に、心臓がはち切れんばかりにドキドキして待っていると――……
がら。
「浴室空いたわよ~!!」
空気を読めずに病室の扉を開けた母パステル。二人が今現在ラブシーンの最中なのを察してぽかんと口を開けると、
「あらあらうふふ。お邪魔だったわね。ごめんなさいねー」
そそくさ帰ろうとする母を慌てて止める。
「ちょ、母さん!なんの用だったの!?」
「浴場が空いたって看護師が言いに来たから呼びに来たんだけど……いい所邪魔してごめんね二人共。特にメル君」
「いえ。浴場なら仕方ありません。パスカルを連れて入りに行こうと思います。一緒に」
「え、ちょ」
メルが軽々とパスカルの胴と足膝に腕をまわして持ち上げた。いきなりのお姫様抱っこに一気に別の羞恥心がわく。
「ひゃ、お、おろしてぇっ!」
「さ、入浴しに行こう。丁寧に洗ってあげるよ」
「丁寧にとか余計だからっ!あとさすがに風呂まではいいからっ!」
「だーめ。ちゃんと治るまでは手とり足取り世話するんだから。もちろん、オナニーの手伝いもしてあげるよ」
「そんなんいらないってば!メルのえっち!」
「えっちだもーん。さ、行こうね」
問答無用でお姫様抱っこで浴室まで連行され、衣服までもれなく全部メルに脱がされて、隅々まで手で洗いつくされたパスカルは羞恥心で死にそうになるのだった。
「パスカルは臆病じゃないよ。オレの事を考えてくれる他人想いのけな気で頑張り屋でとっても可愛い子」
「可愛いは余計だよ」
「その通りでしょ。でももういいよ。なんであれどうであれ、パスカルと無事こうして一緒になれたんだから。オレも皇太子だって打ち明けなかったからお互い様だろうしね」
そんな高貴な生まれの人間が、なぜホームレスをしていたのかとか、いろいろ聞きたい事はあるけど、それは落ち着いた時にでも聞けばいいかと切り替える。
「パスカルの苦しみを蔑ろにしてるって思われるかもしれないけど、むしろオレはパスカルがレアオメガでよかったと思ったんだ」
「え……」
「これはさっき知ったばかりなんだけど、運命の番ってね、普通のオメガだと運命になれない確率が高いんだって。エミリーから聞いたんだ。もちろん、普通のアルファとオメガの運命の番もいるけど、幸福度が全然違うみたい。だからもし、パスカルが普通のオメガだったら運命にはなれない確率が高かったし、オレとパスカルがこうして結ばれる事も薄かった」
「あ……」
「だからね、オレとパスカルは本当に紙一重っていうかね、運が良かったんだよ。アルファとレアオメガの方がいろいろと恩恵にあやかれるんだから」
そう思うと、なんだか感慨深い気持ちになる。あれほどレアオメガとして生まれたことに絶望して最悪だと毎日嘆いていたのに、メルと出会えたことで状況はいい方にも180度に転がっていたのだ。
あの土手で出会った事は奇跡であり、運命の出会いだった。
「だから嬉しいんだ。初恋が実ったから」
「初恋、だったの?」
「うん。パスカルが初恋。それに運命の番だって知ってどれだけ嬉しかったか」
「……俺も、嬉しかったよ。メルが相手で。レアオメガだって判明したばかりの時、人生に絶望してた。そんな時にメルと出会ったんだよ」
「パスカル……」
「そこでメルに出会えてどれだけ救われたか」
そうして改めてメルの顔を見つめると、視線が真正面から溶け合った。どきりとして視線をそらそうとしたら、メルに手を握り重ねられて心音が早くなる。
「オレを見ろ、パスカル」
「――っ」
急に口調が変わって驚く。男なのにときめいてしまうのは、やっぱり惚れた贔屓目もあるのだろう。男らしいメルの表情と態度に心臓の音がさらに早鐘を打つ。
二次元で見慣れている少女漫画の展開だというのに、実際自分がその立場になってみると気恥ずかしくて爆発しそうだった。
「目を閉じて。キス、したい」
「き、きすって……」
「だめか?」
「っ、わ、ワカタ。ワカリマシタ」
番になったのだからキスくらい普通にできないとね。と、パニックになりながら促されるままに目を閉じた。近寄ってくるメルの気配に、心臓がはち切れんばかりにドキドキして待っていると――……
がら。
「浴室空いたわよ~!!」
空気を読めずに病室の扉を開けた母パステル。二人が今現在ラブシーンの最中なのを察してぽかんと口を開けると、
「あらあらうふふ。お邪魔だったわね。ごめんなさいねー」
そそくさ帰ろうとする母を慌てて止める。
「ちょ、母さん!なんの用だったの!?」
「浴場が空いたって看護師が言いに来たから呼びに来たんだけど……いい所邪魔してごめんね二人共。特にメル君」
「いえ。浴場なら仕方ありません。パスカルを連れて入りに行こうと思います。一緒に」
「え、ちょ」
メルが軽々とパスカルの胴と足膝に腕をまわして持ち上げた。いきなりのお姫様抱っこに一気に別の羞恥心がわく。
「ひゃ、お、おろしてぇっ!」
「さ、入浴しに行こう。丁寧に洗ってあげるよ」
「丁寧にとか余計だからっ!あとさすがに風呂まではいいからっ!」
「だーめ。ちゃんと治るまでは手とり足取り世話するんだから。もちろん、オナニーの手伝いもしてあげるよ」
「そんなんいらないってば!メルのえっち!」
「えっちだもーん。さ、行こうね」
問答無用でお姫様抱っこで浴室まで連行され、衣服までもれなく全部メルに脱がされて、隅々まで手で洗いつくされたパスカルは羞恥心で死にそうになるのだった。
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