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78.媚薬
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冗談ではない。番解消なんてそんな事ができるのかと逆に疑問だ。そんな話を聞いたことがないのでなんとも言えない。だが、本当に他人に襲われながらうなじを噛まれてしまえば、たとえ解消にはならなくても男に凌辱されたなんて相当ショックな事には変わりない。
「リリアたんのためだ。野郎を襲うってのは柄じゃないが今回だけだ」
「最初は痛いかもしれないが、じきによくなる」
いや、痛い思いだけならまだいい。こんな奴らに尻穴を掘られる方がもっと嫌である。そう思って逃げたいのに、枷が身動きを封じているので逃げられない。
「おい、この薬なんてどうよ」
一人の男が棚からよくわからない小瓶を出した。ピンク色の液体が中に入っていて、いかにも怪しい。
「オメガやレアオメガに効くらしいぜ。一口飲んだだけですぐにフェロモンを増幅させてデロデロのドロドロになるって話だ。特にレアオメガはフェロモンの濃度が普通のオメガより三倍増しなんだろ」
「だったら、こいつにとっては効果抜群だな。レアオメガらしいから」
ようするに、この小瓶は媚薬みたいなものだろうという事を察する。オメガやレアオメガのフェロモンを誘発させて性的興奮を上げる用途の物。番のフェロモンを垂れ流してメルをおびき出そうとする魂胆なのだろう。
「へぇ、男のレアオメガだなんてかなり貴重じゃねえか。こんな所で味見するより、オークションに出した方が儲けられそうじゃね。男のレアオメガってだけで世界に数人しかいない話だから、闇オークションなら数千万は下らねえと思うが。見た目は平凡だが、結構可愛い顔してるしよ。ショタコンホイホイだろ」
「まあまあ、リリアたんがそうしろって言うんだから姫の命令は聞いておけよ。んで、媚薬で興奮させて味見して殿下とリリアたんがハッピーエンドを迎えたなら闇オクにコイツを売ればいい」
闇オークションとか……まじか。
唖然としているパスカルの横でそんな恐ろしい会話を繰り広げている男共。二次元エロゲでお馴染みの媚薬とかオークションとか、そんな単語をこんな場所で聞く羽目になるとは思わなかった。ますます逃げ出したくて、枷を外そうとなんとかもがくが、やはり鍵がないと外れない形式のものだ。
「で、この媚薬飲ませりゃあリリアたんがお望みの殿下もフェロモンを辿って来てくれるだろうよ」
「でも早く来てもらっても困るよなぁ。俺達はこんな平凡地味男でもしばらくは楽しみたいしよ」
「少しずつ飲ませりゃあいいんじゃないか?ゆっくり、ゆっくり、な」
「なるほど、そりゃあいい」
じいっと男共がこちらを見てきたので、すぐに顔を背けて蹲ろうとしたが、無理やり顔を固定されて口をこじ開けられた。
「ん、ぐ、っ」
すぐに吐き出そうとしても指を入れられて無理やり飲ませられてしまった。喉奥に流れ込んでしまってゾッとしたのもつかの間、すぐに効果が現れ出したのか体の熱が急激に上昇してきた。
「ふふ、効果出るの早すぎ」
「即効性らしいぜ。強い薬らしいからそりゃあもうすっげぇ濃度のフェロモンがピーク時に出るらしい。まあ、番契約してる相手にしかそのフェロモンを感じないのが残念だけどよ」
番契約が済んでいるので、フェロモンが漂っても番相手にしかフェロモンを感じられない事は幸いだが、こんな密閉した空間でフェロモンなんて漂わせてもわかるはずがないだろうと思うのだが……。そう思っていると、自分と同じ疑問に思った奴が口を開く。
「壁越しだとこいつのフェロモンが殿下に届かねえんじゃねえか?」
「それがな、窓を開けてりゃあ風に流れて漂うらしいぜ、レアオメガのフェロモンって。それにレアオメガのフェロモンは普通のオメガより何倍も強烈だ。10Mどころかこの薬なら数百メートル離れてても届くって話だから、裏の業界では重宝してるらしい」
「へえ、やべえ薬だな。番契約していないレアオメガに飲ませたら町中は大パニックだな」
「でも、こいつに飲ませて大丈夫だったのか?それだけすげえ薬なら副作用が……」
「大丈夫だろ。強い薬とはいえ死にはしねえよ。ただ、快楽欲しさにバカになるだけだ」
男共がにやりと笑ってこちらに魔の手を忍びよせてきた。
*
陽の光があまり当たらない路地裏の向こうには、表通りの平民街にはない裏の顔が存在する。
曲がり角に差し掛かったばかりならば大人向けの酒場がぽつんとあるだけだが、奥に進めば進むほど怪しさは増し、ピンク色のイカガワシイ看板がチラホラ立ち始める。あきからかに色を売るような店が増え始め、屯している者もやたらと強面だったり獰猛な男共だったりと柄が悪い。
普通の者がひとたび間違って入ろうものなら、人相の悪い連中の強引な客引きにあい、その暗部の世界へと引き入れられてしまう。
そして、しこたま酒を飲ませて女やオメガを宛がい、最後には法外な値段を吹っ掛けるのだ。抵抗すれば暴力に従わせられ、無理やり借金を背負わされる。腕に自慢がなければたちまち屈伏させられてしまう闇が深い場所である。
女やオメガであったならもっと最悪だ。身包みを剥がされてその手の店で無理やり働かせられる事案も発生している。
そんなこの暗部に、リリア率いる連中に攫われたパスカル達がいるのではという情報をもらい、メルと御付のセバスチャンが堂々と正面から出向いていた。
「リリアたんのためだ。野郎を襲うってのは柄じゃないが今回だけだ」
「最初は痛いかもしれないが、じきによくなる」
いや、痛い思いだけならまだいい。こんな奴らに尻穴を掘られる方がもっと嫌である。そう思って逃げたいのに、枷が身動きを封じているので逃げられない。
「おい、この薬なんてどうよ」
一人の男が棚からよくわからない小瓶を出した。ピンク色の液体が中に入っていて、いかにも怪しい。
「オメガやレアオメガに効くらしいぜ。一口飲んだだけですぐにフェロモンを増幅させてデロデロのドロドロになるって話だ。特にレアオメガはフェロモンの濃度が普通のオメガより三倍増しなんだろ」
「だったら、こいつにとっては効果抜群だな。レアオメガらしいから」
ようするに、この小瓶は媚薬みたいなものだろうという事を察する。オメガやレアオメガのフェロモンを誘発させて性的興奮を上げる用途の物。番のフェロモンを垂れ流してメルをおびき出そうとする魂胆なのだろう。
「へぇ、男のレアオメガだなんてかなり貴重じゃねえか。こんな所で味見するより、オークションに出した方が儲けられそうじゃね。男のレアオメガってだけで世界に数人しかいない話だから、闇オークションなら数千万は下らねえと思うが。見た目は平凡だが、結構可愛い顔してるしよ。ショタコンホイホイだろ」
「まあまあ、リリアたんがそうしろって言うんだから姫の命令は聞いておけよ。んで、媚薬で興奮させて味見して殿下とリリアたんがハッピーエンドを迎えたなら闇オクにコイツを売ればいい」
闇オークションとか……まじか。
唖然としているパスカルの横でそんな恐ろしい会話を繰り広げている男共。二次元エロゲでお馴染みの媚薬とかオークションとか、そんな単語をこんな場所で聞く羽目になるとは思わなかった。ますます逃げ出したくて、枷を外そうとなんとかもがくが、やはり鍵がないと外れない形式のものだ。
「で、この媚薬飲ませりゃあリリアたんがお望みの殿下もフェロモンを辿って来てくれるだろうよ」
「でも早く来てもらっても困るよなぁ。俺達はこんな平凡地味男でもしばらくは楽しみたいしよ」
「少しずつ飲ませりゃあいいんじゃないか?ゆっくり、ゆっくり、な」
「なるほど、そりゃあいい」
じいっと男共がこちらを見てきたので、すぐに顔を背けて蹲ろうとしたが、無理やり顔を固定されて口をこじ開けられた。
「ん、ぐ、っ」
すぐに吐き出そうとしても指を入れられて無理やり飲ませられてしまった。喉奥に流れ込んでしまってゾッとしたのもつかの間、すぐに効果が現れ出したのか体の熱が急激に上昇してきた。
「ふふ、効果出るの早すぎ」
「即効性らしいぜ。強い薬らしいからそりゃあもうすっげぇ濃度のフェロモンがピーク時に出るらしい。まあ、番契約してる相手にしかそのフェロモンを感じないのが残念だけどよ」
番契約が済んでいるので、フェロモンが漂っても番相手にしかフェロモンを感じられない事は幸いだが、こんな密閉した空間でフェロモンなんて漂わせてもわかるはずがないだろうと思うのだが……。そう思っていると、自分と同じ疑問に思った奴が口を開く。
「壁越しだとこいつのフェロモンが殿下に届かねえんじゃねえか?」
「それがな、窓を開けてりゃあ風に流れて漂うらしいぜ、レアオメガのフェロモンって。それにレアオメガのフェロモンは普通のオメガより何倍も強烈だ。10Mどころかこの薬なら数百メートル離れてても届くって話だから、裏の業界では重宝してるらしい」
「へえ、やべえ薬だな。番契約していないレアオメガに飲ませたら町中は大パニックだな」
「でも、こいつに飲ませて大丈夫だったのか?それだけすげえ薬なら副作用が……」
「大丈夫だろ。強い薬とはいえ死にはしねえよ。ただ、快楽欲しさにバカになるだけだ」
男共がにやりと笑ってこちらに魔の手を忍びよせてきた。
*
陽の光があまり当たらない路地裏の向こうには、表通りの平民街にはない裏の顔が存在する。
曲がり角に差し掛かったばかりならば大人向けの酒場がぽつんとあるだけだが、奥に進めば進むほど怪しさは増し、ピンク色のイカガワシイ看板がチラホラ立ち始める。あきからかに色を売るような店が増え始め、屯している者もやたらと強面だったり獰猛な男共だったりと柄が悪い。
普通の者がひとたび間違って入ろうものなら、人相の悪い連中の強引な客引きにあい、その暗部の世界へと引き入れられてしまう。
そして、しこたま酒を飲ませて女やオメガを宛がい、最後には法外な値段を吹っ掛けるのだ。抵抗すれば暴力に従わせられ、無理やり借金を背負わされる。腕に自慢がなければたちまち屈伏させられてしまう闇が深い場所である。
女やオメガであったならもっと最悪だ。身包みを剥がされてその手の店で無理やり働かせられる事案も発生している。
そんなこの暗部に、リリア率いる連中に攫われたパスカル達がいるのではという情報をもらい、メルと御付のセバスチャンが堂々と正面から出向いていた。
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