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79.アジト
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「何だテメエ!」
「ここはお坊ちゃんとジジイががくるようなところじゃねえぞ」
「それともなんだ?商品になりにきたのか?んん?」
獰猛な男共がメルとセバスチャンを一目見て侮る。
「お前達に聞きたいことがある。ここら辺にピンクの髪のツインテール女を見かけた事はあるか?」
「ハア?ついんてーる?そんなもん知らねーなぁ。つかなんでそんな事テメエに教えなきゃならねーんだよ」
「そうだぜ。知ってても教えてやるかっつーの。そんな事よりお前はいい商品になりそうだなぁ。どっかで見たことがある顔だが、すっげぇ上玉だし文句はnっいでええええ!!」
ニヤニヤしていた男がメルに触れようとする前に、横からセバスチャンが男の腕を軽くひねっていた。
「気安くこの方に触らないでいただけますかね」
「こ、このジジイ!」
「いってぇ……くそっ、てめえらなんなんだ!」
男はひねられた腕を涙目で押さえている。
「まずは質問にはちゃんと答えてほしいのですがねえ」
「うるせえ!この、なめやがってぇ!やっちまえ!!」
「うおおおおお」
男共の沸点は低く、あっさりとカッとなって襲い掛かってきた。
「はあ……やれやれ。面倒ですなぁ」
「セバスチャン、手加減してやれ。一応、わが国民ではあるからな」
「かしこまりました」
案の定、笑顔のセバスチャンがものの数秒で圧倒し、地面には男共が目をまわして倒れている。
「それで、ツインテールの女性の方を見かけましたか?」
「は、はいぃ……ええと、こ、この先の廃墟のアパートをアジトにしていると思います……」
老人相手とはいえ力の差を見せつけられて、セバスチャンにビビりながら男がたどたどしく答える。
「わかりました。ではそちらに伺ってみようと思います」
セバスチャンが男に笑顔で礼を言って振り返ると、メルが苦し気に口元を押さえていた。
「殿下?どうかされましたか?」
「ああ、いや、なんでも……ない」
「顔色が優れませんが……どこか具合でも」
「……平気、だ」
頭がクラクラし、下半身を筆頭に体がドクドクと熱く血潮が滾ってくるのを感じる。
ベータなセバスチャンでは当然気づく事はないだろうし、これは紛れもなく自分の愛する番の香りだ。
なぜ、こんな場所から――?レアオメガは一度番うとヒートにはならないと言われているはずがなぜ。もしかして、何か例外が起きているのだろうか。
パスカルが危ない。
焦燥感にじっとしていられず、体の異変を押し込めて漂う愛する者のフェロモンを辿る。
フェロモンを辿ってきた先は、先ほどの男の一人が言っていた通りアパートの一番最上階の窓から香ってきている。急いでその場所へ階段を駆け上がり、その部屋の扉の前までやってくる。鍵がかかっていたが、面倒なので蹴破った。
「ぎゃあっ!」
扉の前には運悪く男がいたらしく、扉と共に吹っ飛んで下敷きになっていた。
「きゃっ、なに!?どうしたのっ!?」
吹っ飛んでいった男のすぐ隣にはリリアもいる。
「殿下、いきなり扉を蹴破るのは常識としてどうかと思いますぞ」
「緊急事態だ。大目に見ろ。早くパスカルを助けなければと焦っていた。セバスチャン、お前はキャロライン嬢と他の者の救出を頼む。その後に憲兵にも連絡を」
「かしこまりました」
クラクラする頭と熱を帯びていく体に鞭を打って室内に入る。
「リリアか」
「きゃっ!メルキオール君っ!きてくれたのね!しかも私の名前を憶えてくれて嬉しい!待ってたのっ!私、あなたにあいたくてぇ、ずっと恋焦がれててぇ、ちょっとよくないと思ったけどパスカル君を囮に使ってぇ……」
リリアの話を完全に無視した様にメルは横を通り過ぎて、パスカルのいる部屋へ歩を進める。それに気づいたリリアが慌ててメルを引き止めようと追ってきた。
「ちょ、ちょっとぉっ!私の話を聞いてよっ!可愛い女の子の話を無視するなんてひどいんだからっ!」
「KAWAII?女と訊いて呆れる。脳タリンな女の間違いではないのか。訂正しときなよ。そもそもなぜお前のくだらん話に付き合わなければならないの」
「えっ、えっ、えっ」
「パスカルを探しに来た。それだけだ。どけ邪魔だ」
「じゃ、邪魔だなんてひどい!どうしてそんな事言うの!?私、ずっと待ってたのにっ!それに体辛そうだね、私、楽にさせてあげられるよっ。パスカル君のフェロモンを感じちゃって辛いんでしょ?いっぱい気持ちよくさせてあげるからぁ」
「――ッ!」
ようするに、番であるメルにしか感じられないフェロモンを漂わせて、おびき寄せられたという事だろう。パスカルのヒートをダシにされ、その事実に秘めていた怒りがぐっと増す。リリアが自分の腕に触れようとした刹那、嫌悪感が凄絶に走った。
「気安くオレに触るなッ!!」
リリアを片手で突き飛ばす。相手は女だろうがなんだろうがどうでもよかった。パスカル以外に今の敏感な体に触れてほしくなかった。
「きゃっ!い、いたあい!いたいよぉっ!えええーん!」
リリアは半泣きで床に倒れる。甲高い声で喚くので余計にその声が耳障りでしかたがない。仲間の他の男共がなんだなんだと増援にやってきた。
「ここはお坊ちゃんとジジイががくるようなところじゃねえぞ」
「それともなんだ?商品になりにきたのか?んん?」
獰猛な男共がメルとセバスチャンを一目見て侮る。
「お前達に聞きたいことがある。ここら辺にピンクの髪のツインテール女を見かけた事はあるか?」
「ハア?ついんてーる?そんなもん知らねーなぁ。つかなんでそんな事テメエに教えなきゃならねーんだよ」
「そうだぜ。知ってても教えてやるかっつーの。そんな事よりお前はいい商品になりそうだなぁ。どっかで見たことがある顔だが、すっげぇ上玉だし文句はnっいでええええ!!」
ニヤニヤしていた男がメルに触れようとする前に、横からセバスチャンが男の腕を軽くひねっていた。
「気安くこの方に触らないでいただけますかね」
「こ、このジジイ!」
「いってぇ……くそっ、てめえらなんなんだ!」
男はひねられた腕を涙目で押さえている。
「まずは質問にはちゃんと答えてほしいのですがねえ」
「うるせえ!この、なめやがってぇ!やっちまえ!!」
「うおおおおお」
男共の沸点は低く、あっさりとカッとなって襲い掛かってきた。
「はあ……やれやれ。面倒ですなぁ」
「セバスチャン、手加減してやれ。一応、わが国民ではあるからな」
「かしこまりました」
案の定、笑顔のセバスチャンがものの数秒で圧倒し、地面には男共が目をまわして倒れている。
「それで、ツインテールの女性の方を見かけましたか?」
「は、はいぃ……ええと、こ、この先の廃墟のアパートをアジトにしていると思います……」
老人相手とはいえ力の差を見せつけられて、セバスチャンにビビりながら男がたどたどしく答える。
「わかりました。ではそちらに伺ってみようと思います」
セバスチャンが男に笑顔で礼を言って振り返ると、メルが苦し気に口元を押さえていた。
「殿下?どうかされましたか?」
「ああ、いや、なんでも……ない」
「顔色が優れませんが……どこか具合でも」
「……平気、だ」
頭がクラクラし、下半身を筆頭に体がドクドクと熱く血潮が滾ってくるのを感じる。
ベータなセバスチャンでは当然気づく事はないだろうし、これは紛れもなく自分の愛する番の香りだ。
なぜ、こんな場所から――?レアオメガは一度番うとヒートにはならないと言われているはずがなぜ。もしかして、何か例外が起きているのだろうか。
パスカルが危ない。
焦燥感にじっとしていられず、体の異変を押し込めて漂う愛する者のフェロモンを辿る。
フェロモンを辿ってきた先は、先ほどの男の一人が言っていた通りアパートの一番最上階の窓から香ってきている。急いでその場所へ階段を駆け上がり、その部屋の扉の前までやってくる。鍵がかかっていたが、面倒なので蹴破った。
「ぎゃあっ!」
扉の前には運悪く男がいたらしく、扉と共に吹っ飛んで下敷きになっていた。
「きゃっ、なに!?どうしたのっ!?」
吹っ飛んでいった男のすぐ隣にはリリアもいる。
「殿下、いきなり扉を蹴破るのは常識としてどうかと思いますぞ」
「緊急事態だ。大目に見ろ。早くパスカルを助けなければと焦っていた。セバスチャン、お前はキャロライン嬢と他の者の救出を頼む。その後に憲兵にも連絡を」
「かしこまりました」
クラクラする頭と熱を帯びていく体に鞭を打って室内に入る。
「リリアか」
「きゃっ!メルキオール君っ!きてくれたのね!しかも私の名前を憶えてくれて嬉しい!待ってたのっ!私、あなたにあいたくてぇ、ずっと恋焦がれててぇ、ちょっとよくないと思ったけどパスカル君を囮に使ってぇ……」
リリアの話を完全に無視した様にメルは横を通り過ぎて、パスカルのいる部屋へ歩を進める。それに気づいたリリアが慌ててメルを引き止めようと追ってきた。
「ちょ、ちょっとぉっ!私の話を聞いてよっ!可愛い女の子の話を無視するなんてひどいんだからっ!」
「KAWAII?女と訊いて呆れる。脳タリンな女の間違いではないのか。訂正しときなよ。そもそもなぜお前のくだらん話に付き合わなければならないの」
「えっ、えっ、えっ」
「パスカルを探しに来た。それだけだ。どけ邪魔だ」
「じゃ、邪魔だなんてひどい!どうしてそんな事言うの!?私、ずっと待ってたのにっ!それに体辛そうだね、私、楽にさせてあげられるよっ。パスカル君のフェロモンを感じちゃって辛いんでしょ?いっぱい気持ちよくさせてあげるからぁ」
「――ッ!」
ようするに、番であるメルにしか感じられないフェロモンを漂わせて、おびき寄せられたという事だろう。パスカルのヒートをダシにされ、その事実に秘めていた怒りがぐっと増す。リリアが自分の腕に触れようとした刹那、嫌悪感が凄絶に走った。
「気安くオレに触るなッ!!」
リリアを片手で突き飛ばす。相手は女だろうがなんだろうがどうでもよかった。パスカル以外に今の敏感な体に触れてほしくなかった。
「きゃっ!い、いたあい!いたいよぉっ!えええーん!」
リリアは半泣きで床に倒れる。甲高い声で喚くので余計にその声が耳障りでしかたがない。仲間の他の男共がなんだなんだと増援にやってきた。
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