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70.デート
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「えーそんな事ないよぉっ。これでも一途なんだからっ。恋する乙女はね、いつだって純情なのっ。エッチするのは気持ちいいからするってだけなんだから。かっこいい彼のためなら遠いアカシャにだっていけるんだからねっ。悪い子じゃないモン!ぷんぷん」
「はははは、悪気のない無自覚な天然ってやつか。女から嫌われるタイプだな。まあいい。いっぱい楽しませてくれたらアカシャまで連れて行ってやるよ。お嬢ちゃんみたいな可愛い子とヤレるなんて数年ぶりだからな。ただ、病気が……」
「おじさん?」
「あーなんでもないよ。いっぱい楽しもうな、朝まで……」
彼女は国外追放にされても全く懲りていなかった。まともな両親に勘当されても白馬の王子様とされるメルキオールを追いかけて、ここからアカシャへと自慢の誘惑攻撃で向かうのだった。
*
「アカシャって広いなぁ。ヴァユ国とは全然違って広いし、人がたくさんだよ。東京の新宿駅並に人がいるし」
「そうだろうねえ~。ていうか前世ぶりに新宿駅とかって単語聞いた~」
メルは久しぶりにホームレスの格好で外に出た。マフラーはパスカルが編んだものを身に着けている。今日はアカシャの町中を散策する日。まだアカシャに来て数日しか経っていないパスカルに町の案内をし、そのついでにデートもする事になっている。
「その格好、久しぶりに見た」
「この格好だと皇太子ってばれないからね。それなりなお店には入れないけど、余計なお邪魔虫除けになるし、逆にみんな避けてくれるから好都合なんだ」
「たしかに避けてくれるから都合がいいよね」
二人は手を繋ぎ合って町中を見て回る。お互いはホームレスとただの町人。彼があのメルキオールだと気づく者は当然おらず、行き交う人々からは小汚いホームレスと平民が仲良く歩いているという光景にしか見えない。
「メルキオール様が運命の番と結婚かぁ。いいなあ」
「ちょっとショックだけど、メルキオール様の運命の番のお相手はきっと素敵な人なんでしょうね」
「運命の番だからお相手は平民って話でしょ?平民でも運がよければ皇太子様と結婚できるなんてロマンチックな話だよね」
アカシャでは昨日、メルキオール皇太子殿下が運命の番と出会い、番契約をしたと新聞各社に報じられたばかり。だから町中ではお祭りムードで祝福する声が圧倒している。皇太子は国民からは歴代に稀に見る実力者と呼ばれ、その上あの美しい容姿。絶大な人気を誇っている。
「メルは国民から大人気だね」
「民があっての国だから。国のために尽くすのが皇太子。国民の税金で生活させてもらってるから、そこはそれなりにちゃんと仕事しないとね」
商店街の方にやってくると、運命の番セールなんてのもやっていて、あらゆるお店がいつもより割安になっていた。小さな雑貨店を見つけて入ってみると、可愛らしいリスの人形があってつい反応してしまった。
「これメルにそっくり。なんか可愛い」
「むっ、どこが似てるのさ~」
「食べてるとことか仕草がたまにリスみたいじゃん。頬とか膨らませて食べてる所なんて特に」
「だってパスカルの作るパンや弁当が美味いんだもん。時々入ってる唐揚げなんて、前世でよく行った弁当屋の唐揚げの味に似てるなぁって思って大好物なんだ」
「え、その弁当屋ってもしかしてわくわく亭って名前だったりする?」
「あーそうそう。仕事の帰りとかにたまに買いに行ってたんだ。知ってるの?」
「知ってるも何も前世の親がやってた店なんだ」
「ええ、そうなの!やっぱりオレとパスカルって前世での繋がり多いよねー」
パスカルがリスの人形を買っているのを微笑ましく見ていると、メルも近くにあったパスカルそっくりなウサギの人形を手に取り、なんとなく購入する事にした。
「メルも買ったんだ」
「うん。なんかこれパスカルに似てるし。いない時にこれをパスカル代わりにしよっかなー」
「そんな事言ったらこのリスだってメルがいない時の代わりにするぞっ」
「ふふ、ぜひそうしちゃってよ。なんかそれを想像すると可愛いなあって思っちゃうし。マフラーとセーターもセットで飾っておくね」
店を出て、公園のベンチの上でお弁当でも食べようかとのんびり歩いていると、向こう側にはたくさんの人の群衆が見えた。憲兵まで来ていたのでなんとなく気になって遠巻きから眺めていると、聞いたことがある声につい顔が引きつった。
「はははは、悪気のない無自覚な天然ってやつか。女から嫌われるタイプだな。まあいい。いっぱい楽しませてくれたらアカシャまで連れて行ってやるよ。お嬢ちゃんみたいな可愛い子とヤレるなんて数年ぶりだからな。ただ、病気が……」
「おじさん?」
「あーなんでもないよ。いっぱい楽しもうな、朝まで……」
彼女は国外追放にされても全く懲りていなかった。まともな両親に勘当されても白馬の王子様とされるメルキオールを追いかけて、ここからアカシャへと自慢の誘惑攻撃で向かうのだった。
*
「アカシャって広いなぁ。ヴァユ国とは全然違って広いし、人がたくさんだよ。東京の新宿駅並に人がいるし」
「そうだろうねえ~。ていうか前世ぶりに新宿駅とかって単語聞いた~」
メルは久しぶりにホームレスの格好で外に出た。マフラーはパスカルが編んだものを身に着けている。今日はアカシャの町中を散策する日。まだアカシャに来て数日しか経っていないパスカルに町の案内をし、そのついでにデートもする事になっている。
「その格好、久しぶりに見た」
「この格好だと皇太子ってばれないからね。それなりなお店には入れないけど、余計なお邪魔虫除けになるし、逆にみんな避けてくれるから好都合なんだ」
「たしかに避けてくれるから都合がいいよね」
二人は手を繋ぎ合って町中を見て回る。お互いはホームレスとただの町人。彼があのメルキオールだと気づく者は当然おらず、行き交う人々からは小汚いホームレスと平民が仲良く歩いているという光景にしか見えない。
「メルキオール様が運命の番と結婚かぁ。いいなあ」
「ちょっとショックだけど、メルキオール様の運命の番のお相手はきっと素敵な人なんでしょうね」
「運命の番だからお相手は平民って話でしょ?平民でも運がよければ皇太子様と結婚できるなんてロマンチックな話だよね」
アカシャでは昨日、メルキオール皇太子殿下が運命の番と出会い、番契約をしたと新聞各社に報じられたばかり。だから町中ではお祭りムードで祝福する声が圧倒している。皇太子は国民からは歴代に稀に見る実力者と呼ばれ、その上あの美しい容姿。絶大な人気を誇っている。
「メルは国民から大人気だね」
「民があっての国だから。国のために尽くすのが皇太子。国民の税金で生活させてもらってるから、そこはそれなりにちゃんと仕事しないとね」
商店街の方にやってくると、運命の番セールなんてのもやっていて、あらゆるお店がいつもより割安になっていた。小さな雑貨店を見つけて入ってみると、可愛らしいリスの人形があってつい反応してしまった。
「これメルにそっくり。なんか可愛い」
「むっ、どこが似てるのさ~」
「食べてるとことか仕草がたまにリスみたいじゃん。頬とか膨らませて食べてる所なんて特に」
「だってパスカルの作るパンや弁当が美味いんだもん。時々入ってる唐揚げなんて、前世でよく行った弁当屋の唐揚げの味に似てるなぁって思って大好物なんだ」
「え、その弁当屋ってもしかしてわくわく亭って名前だったりする?」
「あーそうそう。仕事の帰りとかにたまに買いに行ってたんだ。知ってるの?」
「知ってるも何も前世の親がやってた店なんだ」
「ええ、そうなの!やっぱりオレとパスカルって前世での繋がり多いよねー」
パスカルがリスの人形を買っているのを微笑ましく見ていると、メルも近くにあったパスカルそっくりなウサギの人形を手に取り、なんとなく購入する事にした。
「メルも買ったんだ」
「うん。なんかこれパスカルに似てるし。いない時にこれをパスカル代わりにしよっかなー」
「そんな事言ったらこのリスだってメルがいない時の代わりにするぞっ」
「ふふ、ぜひそうしちゃってよ。なんかそれを想像すると可愛いなあって思っちゃうし。マフラーとセーターもセットで飾っておくね」
店を出て、公園のベンチの上でお弁当でも食べようかとのんびり歩いていると、向こう側にはたくさんの人の群衆が見えた。憲兵まで来ていたのでなんとなく気になって遠巻きから眺めていると、聞いたことがある声につい顔が引きつった。
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