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【第4章】ロデオに吹く情熱の風 フラメンコも愛も踏み込みが肝心
過去編 カルメンの心の傷 カルロス王子のお願い
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子供は現場近くの孤児院に住む孤児だった。
カルメンは隊としては罰せられなかった。故意に狙ったわけでもない。スパイを追い詰めるためにやむなしとして判断された。同僚からは同情の声もあれば厳しい言葉もあった。
「どうして一人で突っ走った……仲間と連携を組めば人払いして包囲もできたんだぞ……」
しかし、どんな処分、どんな言葉を受けようと関係ない。
誰よりも彼女を罰するのは彼女自身だったからだ。
即日、彼女は自ら望んで除隊した。理由は銃を握れなくなったからとした。
その後彼女はカスターニャ王国北西部の実家に引きこもった。王都でカルロス王子暗殺未遂事件で騒動になるも彼女は出ることはなかった。
そんな彼女が実家を出て王都に戻った。理由はカルロスに呼ばれたからだった。
宮殿の客間で二人は再会する。
「やあ、カルメン。久しぶり。こうやってゆっくり話すのは学校を卒業以来かな」
「相変わらず締まりのない笑顔だ。そう弛んでいるから命を狙われるんだぞ」
二人は友人だった。学校内でもよく会話をしていた。王族であるカルロスは家柄で接し方を変えないカルメンを気に入り、友人として慕っていた。
「相変わらず手厳しいね、君も変わらなくて何よりだ……いや変わったか、その仮面とか」
カルメンは家を出る時は仮面を被るようになった。分厚い黒仮面。
「君にはちょっと似合わないかな」
「世間話をするために拙を呼んだのではあるまいな。用がないなら帰る」
「やっぱり王都は居づらいかい?」
「貴様には関係ない。それとかの有名なアレクシス嬢との交際を始めたらしいな。彼女は親衛隊内でもヘラクレスと評判だぞ。将来はせいぜい尻に敷かれることだな」
「ちょっと待ってくれ。話は終わっていないんだ。ヘラクレスが気になるところだがまずは友人の君に、ぜひ頼みたいことがあるんだ」
「学友のピンチに駆けつけなかった拙に頼み事? 正気か?」
「……良かった。まだ僕のことを友として見ていてくれたんだね」
「やはり貴様の笑顔は気に食わん。イバンと良い勝負だ」
「イバン……彼もまた僕が不甲斐ないせいで苦労を背負わせることになった……」
「慰めてほしいのであればアレクシスに頼め」
「すまない、話が逸れたね……僕の依頼は、僕の異母弟のアルフォンスの護衛を君に任せたいんだ」
「弟、だと……」
「我が弟アルフォンスはロデオに幽閉状態にある。あそこなら自由こそはないが安全ではある。しかしとても盤石とは言い難い、そこで最後のピースとして君に護衛を頼みたいんだ。優秀ではあるが……まだ若いんだ。側に誰かいてあげてほしいんだ」
「弟は、何歳だ」
「今年でちょうど十になる」
カルメンの感情が繋がった水道のようにあふれ出る。
「貴様ぁ……! 拙の失態を知りながら、そんな戯言を言うか!!」
彼女はカルロスの胸倉を掴んだ。掴んだ相手は未来の国王であり身を滅ぼしかねない危険な行為であったが彼女に冷静になる余裕はなかった。
「取り囲むに高い壁に囲まれた中庭と洒落たつもりか!?」
「僕はいたって大真面目だ」
「どこが真面目だ!!! 子供を殺した拙に、弟を守れというのか!!??」
仮面の下を被っていても溢れる激情ははっきりとわかった。
カルロスは引かなかった。
「僕は君をよく知っているつもりだ。彼の側には君が必要なんだ」
「そして必要とあれば拙に弟を殺せと命令するつもりか」
「そんな命令、未来永劫ありえない」
「どうだかな? お前がそうでも弟がどう思うかな」
「……理解してくれる、なんてのは僕の甘えだ。嫌われるかもね」
「その答え、傲慢だ。まだ嫌われていないと思っているのか」
「返す言葉がない……それで受けてくれるかい、僕のお願い」
「拙に拒否権はない。王子であるお前に命令されれば従うほかあるまい」
「命令ではなくお願いのつもりなんだけどね……でも会う気になってくれたのならそれでいいや」
「条件が一つだけある」
「言ってみて。可能な限り答えるよ」
「弟君が拙を拒んだり怖がったりしたら、拙は護衛をやめる。それでいいな」
「わかった、それでいい」
カルロスは爽やかな笑顔を見せる。
「してやったりの笑顔、やはり気に食わん」
カルメンは仮面の下で大きく舌打ちをこぼした。
カルメンは隊としては罰せられなかった。故意に狙ったわけでもない。スパイを追い詰めるためにやむなしとして判断された。同僚からは同情の声もあれば厳しい言葉もあった。
「どうして一人で突っ走った……仲間と連携を組めば人払いして包囲もできたんだぞ……」
しかし、どんな処分、どんな言葉を受けようと関係ない。
誰よりも彼女を罰するのは彼女自身だったからだ。
即日、彼女は自ら望んで除隊した。理由は銃を握れなくなったからとした。
その後彼女はカスターニャ王国北西部の実家に引きこもった。王都でカルロス王子暗殺未遂事件で騒動になるも彼女は出ることはなかった。
そんな彼女が実家を出て王都に戻った。理由はカルロスに呼ばれたからだった。
宮殿の客間で二人は再会する。
「やあ、カルメン。久しぶり。こうやってゆっくり話すのは学校を卒業以来かな」
「相変わらず締まりのない笑顔だ。そう弛んでいるから命を狙われるんだぞ」
二人は友人だった。学校内でもよく会話をしていた。王族であるカルロスは家柄で接し方を変えないカルメンを気に入り、友人として慕っていた。
「相変わらず手厳しいね、君も変わらなくて何よりだ……いや変わったか、その仮面とか」
カルメンは家を出る時は仮面を被るようになった。分厚い黒仮面。
「君にはちょっと似合わないかな」
「世間話をするために拙を呼んだのではあるまいな。用がないなら帰る」
「やっぱり王都は居づらいかい?」
「貴様には関係ない。それとかの有名なアレクシス嬢との交際を始めたらしいな。彼女は親衛隊内でもヘラクレスと評判だぞ。将来はせいぜい尻に敷かれることだな」
「ちょっと待ってくれ。話は終わっていないんだ。ヘラクレスが気になるところだがまずは友人の君に、ぜひ頼みたいことがあるんだ」
「学友のピンチに駆けつけなかった拙に頼み事? 正気か?」
「……良かった。まだ僕のことを友として見ていてくれたんだね」
「やはり貴様の笑顔は気に食わん。イバンと良い勝負だ」
「イバン……彼もまた僕が不甲斐ないせいで苦労を背負わせることになった……」
「慰めてほしいのであればアレクシスに頼め」
「すまない、話が逸れたね……僕の依頼は、僕の異母弟のアルフォンスの護衛を君に任せたいんだ」
「弟、だと……」
「我が弟アルフォンスはロデオに幽閉状態にある。あそこなら自由こそはないが安全ではある。しかしとても盤石とは言い難い、そこで最後のピースとして君に護衛を頼みたいんだ。優秀ではあるが……まだ若いんだ。側に誰かいてあげてほしいんだ」
「弟は、何歳だ」
「今年でちょうど十になる」
カルメンの感情が繋がった水道のようにあふれ出る。
「貴様ぁ……! 拙の失態を知りながら、そんな戯言を言うか!!」
彼女はカルロスの胸倉を掴んだ。掴んだ相手は未来の国王であり身を滅ぼしかねない危険な行為であったが彼女に冷静になる余裕はなかった。
「取り囲むに高い壁に囲まれた中庭と洒落たつもりか!?」
「僕はいたって大真面目だ」
「どこが真面目だ!!! 子供を殺した拙に、弟を守れというのか!!??」
仮面の下を被っていても溢れる激情ははっきりとわかった。
カルロスは引かなかった。
「僕は君をよく知っているつもりだ。彼の側には君が必要なんだ」
「そして必要とあれば拙に弟を殺せと命令するつもりか」
「そんな命令、未来永劫ありえない」
「どうだかな? お前がそうでも弟がどう思うかな」
「……理解してくれる、なんてのは僕の甘えだ。嫌われるかもね」
「その答え、傲慢だ。まだ嫌われていないと思っているのか」
「返す言葉がない……それで受けてくれるかい、僕のお願い」
「拙に拒否権はない。王子であるお前に命令されれば従うほかあるまい」
「命令ではなくお願いのつもりなんだけどね……でも会う気になってくれたのならそれでいいや」
「条件が一つだけある」
「言ってみて。可能な限り答えるよ」
「弟君が拙を拒んだり怖がったりしたら、拙は護衛をやめる。それでいいな」
「わかった、それでいい」
カルロスは爽やかな笑顔を見せる。
「してやったりの笑顔、やはり気に食わん」
カルメンは仮面の下で大きく舌打ちをこぼした。
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