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【第5章】王都突入 立ちはだかる数多の壁

テンパるアレクシス嬢と称賛するエリック・ベルンシュタイン

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「やってしまいましたわああああ!? 人殺し!! 淑女のすることではありませんのにやってしまいましたわああああ!!? いやまだ諦めてはいけませんわよ、アレクシス!! 急いで治癒魔法を!!! もしくは119を!!!」

 慌てふためくアレクシスだったが一方の真っ二つに割れたエリックは冷静だった。

御見事ブラボー、さすがはアレクシス嬢。まさかこの僕に一撃を与えるとは」
「エリック……あなた、偽物ですのね!?」

 冷静になってみるとエリックの身体は作り物だった。

「精巧な愛玩用泥人形ラブゴーレムに僕なりのアレンジを加えたのですよ。呼吸を偽装し、得意の鉱石魔術で僕の魔力を遠隔操作で纏わせれば大抵の人間は騙せます」
「道理でときめかないはずですわ……いや待ってください、では本体は!?」
「国境付近のビーチでバカンス中です。ええ、いつでも国外に逃げられるようにしてます」
「くっ、強かですわね! 待ってなさい、カルロス様を助けた後にすぐさまそっちに向かいますので!」
「おっと、アレクシス嬢。何か誤解されていませんか?」

 地下水道にたくさんの足音、そして水をかき分ける音が響き渡る。

「僕はあなたを称賛はすれど勝ちを譲ったわけではありません」

 アレクシスは周囲を確認してため息をこぼす。

「……そうですわね、ネズミ一匹を見たら十匹はいるものだと思え、ですわね。憂鬱になりそうですわ」

 エリックの愛玩用泥人形ラブゴーレムは一体ではなかった。

「生憎僕の分身はその倍、二十体です。あなたの元にその全てを送り込みました」

 あまりに異様な光景。どんな爽やかな笑顔でも同じ顔の眼鏡美男子が二十人も揃って囲まれれば誰しも恐怖と不気味さに震えあがるだろう。

「はあ、夢のような光景ですが全部壊さなくちゃなりませんのね……本当に憂鬱ですわ」

 たった一人、アレクシスを除いて。

「あっはっはっは! 壊せるものなら壊してみてください! あなたが壊した一体は雷電瓶を三個しか積んでいない試作品です! 二体目からは改良を重ねた雷電瓶を十二個積んでいる! 単純計算で先ほどの四倍の雷電を食らうことになります!! さあ、あなたでもこの愛玩用泥人形ラブゴーレムたちを……相手するのは」

 次の瞬間、二十体もの愛玩用泥人形ラブゴーレムは一体も残さず胴体を真っ二つに破壊されていた。

「よく聞きなさい、宮廷魔術師エリック・アルフォンス。今までのカスターニャ王国への貢献に免じ今日のところは見逃してあげます。ですが次はありませんわよ。あなたの声が聞こえればすぐにそちらに向かいます。足音、呼吸音、あなたにかかわる全ての音を私は覚えておりますの。絶対に逃がしませんわよ。それでは御機嫌よう」

 アレクシスは梯子を上って地下水道を後にした。
 エリックの残骸は問答する。

「……今のは……雷電よりも早く超高速で移動した? いやありえない。破壊された感覚は全て同時に伝わってきた……時間の流れを遅く感じるようになった僕が同時に……ああ……ああああああああ!!!!! つまりそういうことなんだね、そういうことなんだねえええええええええ!!! なんてことだ、これは最高のイレギュラーだあああああ!! 君は、君は時間すら超越した!!! 息を止めただけの僕の遥かその先!!! 君は太陽を止めたに等しい!!! ああ、アレクシス!!! やはり君は最高だあああああああ!!! 僕のほうこそ、いや! 僕のほうが! 次会える時を楽しみにしてるよおおおおお~~~~~~~~~~!!!!!!」

 彼の盛大なラブコールはドブネズミにも届かなった。
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