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第1章 世界の研究者、猪飼瑠璃

第3話 ダンジョン出現

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『地震です! 地震です!』

 ……その音声の後、地面が縦の方向に揺れ始めた。

「何!? 何!?」

 私は動揺を隠せず、その場でしゃがんだ。
 このレベルの地震は久々だ……周りには高い建物が結構ある、この場は危険だ。
 私は周りを見渡し、安全なところがないかを確認する。

「……あそこなら」

 私は周りに警戒しながら、広めの公園へ駆け込んだ。
 同じ考えの人がいたのか、皆そこに集合している。
 私たちは真ん中に集合し、揺れが収まるまで頭を抱えてしゃがんでいた。

 ……しばらくして、揺れが収まった。
 幸い、大きいとは言っても、震災レベルではなかったようだった。
 皆、安堵のため息を上げ、立ち上がった……その時だった。

「お、おい! なんだありゃ!?」

 男性が向こう側を指差してそう叫んだ。
 ふとその方向を見ると、何やら巨大な塔のようなものができていた。
 生半可な大きさではない、雲にも届くような大きさだった。
 私たちは同様のあまり、それを見続けるしかできなかった。
 ……そんな中。

「キャアアアア!! な、なにあれ!?」

 女性が叫び声を上げ、塔の下の方を指差す。
 そこを見てみると……緑色の二足歩行の生物がいた。
 あんな動物……見たことが無い、少なくとも私の見識の中では。
 動物は私たちに向かって牙をむき、走り出す。
 身の危険を感じた私たちは背を向けて逃げ出そうとした……その時。

「ファイアボール!」

 遠くからそんな声が聞こえ、ふと動物の方を見ると……動物は火だるまになり……消滅した。
 皆が逃げる中、私は立ち止まって、その様子を凝視していた。

「おーい! そこの人! 大丈夫か!?」

 突然、私を呼び掛ける声が聞こえる。
 ふとその方向を見ると、「とんがり帽子にマントを身に着けた二足歩行の猫」がこちらに向かって声を掛けるのが分かった。

「な、何!? ね、猫!?」

 意味不明な事の連続に、私は混乱してしまった。

「ここがどこなのかいまいちわかんないけど……モンスターを倒すのが俺っちの役目! そこの平たい顔の人間! 早く逃げな!」
「ひ、平たい顔!?」

 そういう貴方は顔が猫なんですけど!? と言いたいところだったが、ここは言う通りにした。

「おっしゃあ! ゴブリンども! 俺っちが相手だ!」

 公園に背を向けて逃げる中、そんな声が響いた。
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