ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

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六話

★平行線の先へ

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 ***


 店に戻った俺達は地下に猟師を隔離して、グレイ達を待つことにした。今回の猟師の一件は「人間が幻獣を殺した」という複雑な罪になる。警察に通報したところで俺とソルへの暴行でしか訴えられない。一度グレイの判断をあおぐべきだろう。

「まだ二人は戻らなそうだな。ライ、先にシャワーに入っておくのはどうだろうか」
「いやー…」

 言い淀む。背中の傷がしみる上に、中の傷も手当てしないといけない。道中で薬局に寄ったので必要な物は揃えてある(フィンの上着で傷だらけの背中は隠した)。ズボンはなんとか無事だったしパッと見は背中だけ負傷してるように見えてるはず。
 (このまま隠し通さねえと)

「フィンが先入っていいぜ。俺は背中の手当てがあるし」
「洗ってからの方がいいのではないか?」
「うっ、えっと…まだ傷が開いてるし、少しお湯に当たるのは待ちたいっつーか…」
「人間の治癒能力だと待ったところで差はほとんどないだろう」
「そうなんだけどさ……」

 廊下に追いやられながら必死に言い訳する。フィンが難しい顔をして見下ろしてきた。やばい、これは怪しんでる顔だ。これ以上気取られないよう横を向いて目線を合わせないようにする。

「ライ」

 ぐいっ

 顎を掴まれ前を向かされた。オレンジの瞳とぶつかる。

「何か私に隠してるな」
「……気のせいだ」
「ライはあまり嘘をつかない。つくとしても相手を傷つけない為につく場合が多い。今回も私か誰かに気を遣って隠しているのだな」
「俺はそんなおキレーな奴じゃねえよ」
「いや、ライは綺麗だ。顔も、体も、瞳も、生き様すらも…真っ直ぐで美しい」
「~~っ」

 壁ドンされたと思えば胸焼けしそうな甘い台詞を吐かれる。口説き耐性がついてなかったら速攻白旗をあげていただろう。だがここで折れるわけにはいかない。フィンの腕をどけつつ、苦し紛れに言い返す。

「あんたみたいなイケメンに褒められても嫌味にしか聞こえねえよ」
「そうか?ライはもう少し鏡を見た方がいい」

 俺の顔を覗き込むようにして顔を近づけてきた。

「こんなに愛おしいのに」

 チュッ

 唇を奪われる。なんだかんだ久しぶりのキスで顔が熱くなった。

「ライ、私に何を隠してるのか、教えてくれるな…?」

 顎を掴まれ白状しろと再度目を合わせてくる。彫刻のように美しい顔が真剣に見つめてくるのだ。これで耐えられる奴はいるのだろうか。

「ライ」
「っっ…!」
「言わないとキスするぞ」
「今したろ…っ!」
「グレイたちの前で、という意味だ」
「!!!」

 赤くなっていた顔が真っ青になる。

「グレイの前でって…はあ?!正気か??」
「ああ、正気だし会う度にするつもりだ。言うまでずっとな」
「このっ…!わかった!言う!言うから!絶対やるんじゃねーぞ!!」

 流石俺の事をよくわかってる。人前で、しかも毎日顔を合わせる同僚の前でやられるキスほど気まずいものはない。あっさりと降参した俺にフィンは満足げに頷いた。

「もちろん、ライが話してくれるなら意地悪はしない」
「ったく。自分で聞いたんだから怒るんじゃねえぞ…。あと、ソルにも危害を加えないと誓え」

 じゃないと言わない。そう告げると、

「……わかった」

 フィンは眉間の皺を濃くした後渋々頷いた。こんな前ふりされて喜べる奴はいないだろう。

「…はあ。…その…」
「…」
「聞いても楽しい話じゃねえと思うが…」
「…」
「ソルに…レイプされてな…」
「?!」
「ほら、狼になると理性飛ぶだろ?そんな感じで…」

 俺達を包む空気が急速に下がっていくのを感じる。詳しく話すとソルの身が危ないと判断し結果だけを伝える形に軌道修正した。

「中が切れたから、軟膏塗って、大人しく寝たい…なあ…みたいな…?」

 フィンの方が見れない。視線をそーっと戻すと、笑顔のフィンと目が合った。

 ニコリ

「ひいっ」

 びくりと震える。にこちゃんマークを彷彿とさせる笑顔に恐怖を覚えるのだった。

「おい!その顔やめろ!こえーよ!!」
「何も怖くない。笑ってるじゃないか」
「この場面で笑ってんのが怖いんだって!ソルに危害を加えないって約束忘れてねえだろうな??!」
「ああ、ライとの約束は守る」

 うんうんと頷いてくる。ホッとしたのも束の間。

「危害を加えずに殺せばいいのだろう?」
「――ちげーよ?!」

 一瞬安心してしまった自分を殴りたかった。

「殺すのも燃やすのも禁止!狼男になったらソルにはどうしようもねえんだから許してやれよ」

 襲ったのは意図的だったので仕方なくもないのだが。それを言ってしまうともっとソルの立場がやばくなりそうなので黙っておく。

「奴め…ケダモノとは思っていたが…だめだ。百回殺しても許せそうにない」
「…はあ。やっぱそうなるよな」

 だから言いたくなかった。俺の体を大切に思ってくれてるからこそ言いたくなかった。辛そうにするフィンの顔を見てため息を吐く。

「はあ、ごめんな…不快な思いさせて」
「なっ違う!ライは何も悪くない!謝らないでくれっ」
「いや…俺が黙ってたらよかったんだ。言ったところであんたにはどうしようもないし不快にさせるだけだってわかってたのにさ」
「違う…待ってくれ、ライ」

 フィンの体を押し退けながら壁際から移動する。すかさずフィンが腕を掴んで引きとめてきた。

「今のは私が悪かった。ライは私のために嘘をついてくれたのに…それを話させて怒るのは、愚かだった。本当に申し訳ない」
「いいって。殺すってのはやりすぎだけど、逆の立場だったら俺もそれぐらい怒ってたと思うし」
「しかし……はあ、自分が情けない」

 大きくため息を吐いて頭を抱えるフィン。その横顔には様々な葛藤が見て取れた。

「なんで私はいつもこうなんだ。ライの前でちゃんとしていたいのに…もっと余裕がある状態でいたいのに。ライといると全てが振り出しに戻ったような…初めての経験のような感覚に陥る」
「フィン…」
「喜びも、悲しみも、怒りも…感情が大きく揺れて、むきだしになってしまう。最初の頃よりもっと酷くなってきてる。なんて醜いんだろう…」
「そんな事ねえよ」

 愛するというのは美しくい続ける事じゃない。俺がかつて真人に抱いていた感情も同じようなもので。何もわからないなりに感情をぶつけ合って求め合って…その先で自然と相手を自分より大切に思うようになった。たとえ偽物の関係だったとしても、真人へ抱いていた気持ちに嘘偽りはなかったと思う。だからこそわかる。
 (フィンは俺を愛してくれてるし、俺も、多分…)

「フィン…あのさ」

 唾をのみこみ乾いた口内を潤す。フィンは俺の言葉をじっと待っていた。

「俺は、最初…あんたの事を仕事の同僚というか友人としてしか見れてなかった。助けてくれて、懐いてくれて、嬉しかったけど…真人への気持ちを消化させていくので精一杯だった。あんたを心の懐にいれる程の余裕はなかった」
「…ライ」
「でも今回のソルの一件で、俺の中で変化が起きてる事に気づいた。ソルには抱かなかった感情を、あんたには抱いてたんだよ」
「狼男には抱かなかった感情…?」
「もっと前から抱いてたのかも知れねえけど、見ないふり…してたんだろうな。また傷付くのが怖くて、それ以上踏み込めなかった」

 ふとグレイの言葉が脳内に再生された。

『人間と幻獣だし価値観は永遠に平行線だから』

 グレイの呟きは時間をかけて俺の中で重みを増していた。俺とフィンの価値観は交差することがないし一生向き合えないのか、と怖くなった。ソルの一件は幻獣と人間の違いを思い知らされる場面が多かったから余計にだ。

「ライ…一体その感情は何なんだ?」

 フィンが心配するように覗き込んでくる。そのオレンジの瞳を正面から受け止めて、微笑んだ。
 (だからなんだよ)
 人生一度きりだ。後になってあの手を取っておけばよかったなんて思いたくない。

「あんたの事が、好きだって事だよ」
「!!!!」

 ポカンと口を開けて停止するフィン。まさか俺に告白されると思わなかったのか、瞬きを何度かした後、頭をふってこちらを見てきた。

「え?!い?!今っなんて!!?」
「あんたが好きだって言った」
「ッッッッッッ?!」

 まだ信じられないのか、眉間に皺を寄せながら肩を掴んでくる。

「指が痛えよ」
「すまないっ…つっ、つまり…私たちは…両想い…ということか…?」
「たぶん」
「多分!?何故そこで多分になる??私の精神を試してるのか?!!弄んで闇落ちさせたいのか?!?」
「んなわけねえだろっ!…ほら、真人の事とか…引きずってるのは確かだし…。完全にあんたに感情が向いてるかって言ったらまだ言いきれねえからさ…」

 愛がなくなったといっても真人と築いた思い出や感情が消えてなくなるわけではない。
 (こればっかりは日薬だと思いたいが…)
 多分俺は恋人への未練を消化するのに時間がかかるタイプだ。このまま待ってるといつまで経ってもフィンとも、自分の感情とも向き合えない気がした。というか現在進行でそうなのだしきっとそうだ。

「だから一旦踏み込もうと思ってさ。セフレって思われんのも嫌だし、ちゃんと付き合おうぜ」
「…ライ」
「こんな面倒臭い俺でもいいならって話だけど」
「面倒臭いわけないだろう!!」

 俺の言葉にフィンは目を輝かせて抱きついてきた。それから頬にキスをしてくる。両手で顔を包まれたと思えば口にも吸い付かれた。

「ああ、夢みたいだ。ライが…私の恋人になってくれるのだな。嬉しい…。死ぬまでずっと一緒にいよう」
「重いって」
「何故だ。当たり前の事だろう?恋人とは一生添い遂げるものだ」
「まあそうだけど…言っとくけど浮気したら即別れるからな」

 真人の事もあって浮気された瞬間愛せなくなる自信がある。フィンはないと思いたいが俺が見てるフィンはいくつもある内の一面に過ぎない。たとえすぐ隣にいたとしても、どれだけ時間を共にしても所詮他人だ。真人の一件で思い知らされた。
 (信じるしか、俺にはできねえんだ…)
 この先また真人の時のような100%の気持ちで愛せる・信じられる日がくるのだろうか。

「ライ、安心してくれ。私は愛の重さだけは自信がある」
「それは今理解した」
「ふふ、よかった。しかし、ライこそどうなんだ?狼男や狐の子に絆されてしまわないかとても不安だ」
「俺をなんだと思ってんだよ」

 これでも恋人はまだ一人しか(フィン含めれば二人)作ってないんだぞ。しかも一年かけて関係構築して付き合い、三年間ずっとその人だけを想い続けた。問題が起きなければ死ぬまでその人を見ていた自信がある。

「ライが一途なのは知ってる。だが言い寄られた時に弱いのも知ってるのだ。ライはそういうのに狙われやすい。というか狙いたくなる性質をしてるのだ」
「どんな性質だよ。ユウキとソルは…恋人ができたって言えば諦めるだろ」
「奴らがそんなに物わかりがいいわけないだろう?!脳が下半身にある子供なんだぞ!また襲われたらどうする!」
「殴ってから通報する」
「幻獣が警察でどうにかなるわけないだろう!」
「はは、仕事もヤクザとハッカーでアングラだしな」
「笑ってる場合かーっ!」

 ぷんぷんと怒ってくる。冗談のつもりがより不安にさせてしまったらしい。ごめんごめんと謝りつつフィンの頭を撫でてやると一気に大人しくなった。俺に撫でられて嬉しそうにしてる。その素直すぎる反応に不覚にもキュンとしてしまった。

「はあー…イケメンの無駄遣いだな、ほんと…」
「ライを捕らえる事ができたなら無駄遣いではないだろう?」
「俺は別に顔で釣られてねーし」
「そうか?」

 ぐっ

 フィンが突然俺の体に腕を回して持ち上げた。そのまま横抱きにされる。

「何す…んだよっ?!」
「手当てをするために部屋まで連れていく。治療の途中でグレイたちが帰ってきたら困るだろう」
「自分で歩けるって!」

 文句を言えば、ちゅっと頬に口付けられた。

「恋人なんだ。もっと甘えてくれ」
「―――っ?!」

 満面の笑みを浮かべて囁いてくる。こんな顔をされて反論できるわけがない。直視できずとっさに横を向いた。暴れる気力は削がれ、大人しくフィンの首に腕を回すのだった。

 すっ

 俺達の部屋に入り、優しくベッドに下ろされる。

「まずは傷の確認をしなければ」

 服に手が伸びてくる。ボロボロのシャツを脱がされた後しまったと思った。

「……ライ、この痕はなんだ?」

 体につけられた無数のキスマをみてフィンが凍りついている。

「あー…ご想像に…お任せで…」
「………奴の口を焼いて塞いでおけばよかった」
「ばか、怖えよ」

 それからフィンは黙々と背中の引っ掻き傷を消毒した。かなりしみるし痛いが、消毒行為自体は丁寧で優しかった。フィンの中で必死に怒りを抑えてるのがわかる。それが余計申し訳なくなった。

「引っ掻き傷自体は浅い。消毒もしたしこれで問題ないだろう。この痕については…」
「…放っとけば消えるだろ」

 運良く全てのキスマが服で隠れる場所につけられていた。
 (まさかソルの奴、意識残ってたんじゃ…)
 不安になるほど正確な位置でつけられている。これなら服を脱がない限り問題ない。新しい服に着替えようとしたところで手首を掴まれた。

「なに…え?!」

 フィンが唇を手首に押し付けてくる。そして強めに吸い付いてきた。ジュッと吸い付いたと思えばそこには赤い痕ができていて…

「んっ、コラ!何増やしてんだよ!しかもこれ見える場所ーっ、ひっ、はあ?!」

 手首だけじゃなく肘や二の腕にまで痕をつけてきた。肩を掴んで後ろに押しても今度はその腕に吸い付いてくる始末。

「おいっ…っ、んんっ、やめっろ!そこも、見えるだろが!」

 うなじや首の裏にもつけられ、流石に黙ってられなかった。グレイたちとどんな顔して会えばいいのかわからない。

「コラ!やめろ!フィン!」

 首に噛みついていたフィンの顔を無理矢理引き剥がす。するとフィンは口の端を舐めながら渋々体を離した。

「ふむ。これで奴の痕がわかりにくくなったか」
「増えてたら意味ねえんだって…」
「意味はある。恋人の私がつけた痕を見せつけることが重要だ」
「見せつけるって俺の体見るのなんてグレイかスナックの客ぐらいだろ…??つっこまれたら気まずすぎんのに…!うっ?!ああもう!聞けよ!」

 手の甲にまで吸い付いてくる。ここまでくると一つや二つ増えても変わらない気がした。

「ライは私の恋人になったのだから何の問題もない」
「問題しかねえわっ……はあ…もういい、わかった。あんたの気が済むまでやってくれ…」

 一日二日恥ずかしい思いをするだけでフィンの気持ちが楽になるなら安いものだ。俺が諦めて好きにやらせているとフィンは段々上機嫌になってきた。

 ススッ

 腰から太ももに手を動かし、柔らかい場所にも吸い付かれる。

「ん、くっ、ばかっ、そこ!」
「ここにもつけたい」
「なんでだよっ!もう十分つけたろがっ」

 フィンの口を覆うようにして手で押さえる。これ以上はヤバイ。色々と催してしまう。後ろが使い物にならないのに気持ち良くなったら藪蛇だ。

「…」

 フィンは少し間を空けた後、黙って体を引いた。それから大きく深呼吸する。

 スウッ

 息を吸って吐き出す時、フィンの体がビクリと震えた。それから少しずつ縮んでいく。比喩ではなく本当に体の大きさが変化しているのだ。俺は信じられない光景に目を見開いた。
 (え?!)

「ふう、このぐらいか」
「え…なっ…??」
「どうだ、ライ。十歳ほど若返ってみたぞ」
「!!」

 十歳若くと言われて納得した。確かにフィンは色気の溢れる男から少し幼さの残る青年に変わっていた。二十歳ぐらいの見た目で、背丈も俺ぐらいになってる(座高的に)。筋肉や声も幼さが残ってるしまるで別人だ。

「まっじかよ…」
「若くなった私は嫌いか?」
「き、嫌いじゃねえけど…突然やるなよ。ビビるだろ…」
「突然じゃない。前に話していただろう。私の見た目を操作した姿が気になると」
「話したけどっ、このタイミングはずるいっ、おいっ!んっ、やめろって…っく!」

 また懲りずに吸い付いてくる。額を押そうとした所でフィンと目があった。前髪の隙間から少し幼いフィンが甘えるように見てくる。ダメなのか…?と切なそうな顔で。

「~っ!!」

 ぐっと心を鷲掴みにされる。
 (そこで可愛い顔すんじゃねえよっ!!)
 反則だと頭をふった。無理矢理引き剥がしたい所だがこの姿のフィン相手だと何故だか強く出れない。フィンは拒絶されなかったことをいいことに太ももに吸い付き赤い痕をつけていく。

「くっ、このっ…フィン、んんっ、卑怯だ、ぞっ!」
「ふふ、こんな事なら最初からしておけばよかった」
「いっ…なにっいって!?」
「狐の子も狼男もライより年下だろう。奴らに態度が軟化する理由は何だと必死に考えた甲斐があった。ライは年下の存在に弱かったのだな」
「はあ?!」

 何言ってるんだと睨み付けると、顔を上げたフィンと目があった。太ももから手を離さないまま体だけ倒して口付けてくる。今度は舌が入ってきて絡み付いてきた。幼いフィンとキスをしてるといけない事をしてる気分になりソワソワする。

「んう、ふっ、ンッ…ぷはっ!フィン!もう、ほんとにっやめろって」

 姿形が少し変わったとしても与えられる気持ちよさは変わらない。すでに俺の体は刺激を拾い始めていた。前も反応しかけてる。このまま進むのはヤバイ。フィンの胸を押し返して必死に拒絶する。

「…そうだな。治療しなければ」

 フィンはふと我に返ったのか棚に置いてある袋に手を伸ばした。薬局の袋に入っていた軟膏を取り出して蓋を開けていく。慌てて起き上がった。

「いや待て待てっ!それは自分でやる!やらせてくれ!」
「大丈夫だ。任せてくれ」
「何が大丈夫なんだよっ!自分の顔、鏡でみてみろ!」
「…鏡はこの部屋にない」
「物騒な顔してるって言ってんだよ!」

 軟膏を取り返そうとするが寸でのところで避けられる。フィンはふと動きを止めた。

「ライ、怖いのか?」
「…、」
「前回無理矢理薬を抜いたから、私に身を委ねるのに抵抗感が強くなってるのか」
「そりゃ…まあ、軽くトラウマになってるし」

 薬は抜けたが色々と自分の体やフィンに恐怖したのは確かである。もう二度とあんな思いはしたくない。

「訳がわからない感覚は怖すぎる…」
「今回は薬の影響はない。それに負傷してるライを抱くつもりはないから安心してくれ」
「…」

 抱くつもりはないとハッキリ言われるとそれはそれでもやっとする。面倒臭い自分に吐き気がした。

「わかった…。じゃあ…血とか洗ってくるから待っててくれ」
「…洗うのも私がしたい」
「ついてきたら嫌いになるぞ」
「……待ってる」
「よろしい」

 これで無理矢理ついてきたら殴り飛ばしてたかもしれない。一安心してシャワー室に向かった。
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