ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

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七話

★約束

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「こんなに張ってて痛いだろう?出したくないか?」
「うっ…くそ、…」

 イクには弱すぎる力でするする撫でられる。言わせたいらしいがこっちだって人並みの自制心は残ってる(ここまでやっといてあれだけど)。顔を横に向けて拒否すれば、ふふっと笑われた。諦めたか?とチラリと視線だけ戻すと、オレンジの瞳とぶつかってぎょっとする。一連の仕草を全部見られてたのかと思うと恥ずかしすぎる。

「ライ、」

 名前を呼ばれながら下着の隙間に手を差し込まれる。まさかと体を強張らせた。

「だめだっ、て!そこ、はっ!」
「確認するだけだ」
「確認って…!ンンッ!お、いっ!フィンっ!」

 キスで誤魔化そうとしてくるがその手には乗らないと顔を背ける。力比べでは分が悪いが、力を込める場所さえ工夫すればなんとかなる。肘が曲がる方へ力一杯押せばフィンの腕がずり上がってきた。ズボンからなんとか離させることに成功する。

「こんなに焦らされたのに、ライは頑固だな…」

 フィンは不満げに呟いて再び膝をついた。先走りでどろどろの先端をぱくりと咥えたと思えばぬるりと一気に奥まで飲みこんでいく。

「うくっ…!まてっ、ンンッ、はっ、ああー…っ」

 待ちに待った強い刺激に腰がはねそうになり、フィンの手が下腹に置かれた。俺の動きを封じてから再びフェラを再開する。

「フィンっあっ、ああ…っ、もっ、!」

 限界だから、と息も切れ切れにして訴える。フィンは承知したとでもいうように奥まで飲み込み先ほどと同じ締め付けをしてきた。ゴクリと嚥下する動きに耐え切れず前のめりになる。

「ひっ!…くっ、う、ああぁ…っ、イッ、イク…!」

 ぐぐっ

「うあっ?!」

 猫背のように肩が丸まってあとはイクだけ、出すだけの状態だった。なのに出てこない。どうして。

「出したら立っていられなくなるだろう?もう少しだけ、我慢してくれ」
「はあっ?!イッー!あアッ、ン…!やめっ」

 限界まで膨れた根本を指の輪で押さえられていた。とんだ拷問だ。普段は過保護なぐらい大切にする癖にこういう時だけ鬼畜っておかしいだろ。どんな思考回路してんだコイツ。内心ブチ切れてる俺をよそにフィンはまた咥え始めた。けれど根元を押さえられた状態で愛撫されても苦しさの方が強いわけでほぼ悲鳴に近い喘ぎ声が出る。

「アアアッ、やっめっ!!ハアッ、はっ、うああっ!フィンっ!も、いいっ!出させ、っ、くっっ…!」

 俺が喘いでるうちにフィンの指先が後ろに回ってきた。今の俺は与えられる灼熱の刺激を逃がすのに必死でフィンの思惑に気付く余裕もない。早く、早くとフィンの髪を握める。

 ぐちゅり

「んあ…!?いっ、なん、っ!ああっ!やっ、めろ!」

 後ろに指先が入ってくる異物感でやっと我に返った。なんでそこに入れてんだ、これ以上他の刺激はいらない、そんなところ触るな…色んな感情がせめぎ合う。

「ハアッハッ…ああぁっ!!んぐっ…も、むりっ、んく…!だって…っ!!」

 必死に訴えるとフィンが指を中に入れたまま口だけを離した。ぺろりと舌なめずりする。

「よかった。中の傷もほとんど治ってるな。指程度なら問題なく飲み込んでくれる」
「んんっ、言わん…でっ…いいっ!」
「しかもこの狭さなら狼男とやってないというのも本当のようだな」
「だ…からっ!そうっ!言ってん…だろ?!!」

 もう蹴り飛ばすぞと睨みつければフィンが膝にキスを落としてきた。先走りやらなんやらでドロドロになってんのに王子様みたいな仕草が板についてるって意味わからん。イケメン税をかけてくれ。

「ライは優しい嘘をつくから、言葉だけでは信用できないのだ。だが…そうだな。こんなに素直に教えてくれるなら今度からは回りくどい事はせずこっちに聞くとしよう」
「?!」

 何言ってんだと目を見開く。
 (こんなのを毎回??!)
 もうないと思いたいが俺の身に何かある度にこんな拷問(尋問?)を繰り返されるなんてたまったもんじゃない。今日一の恐怖を抱いた。

「ライ、大丈夫だ。怯えないでくれ」

 フィンは根本を押さえてる方ではない手でガチガチになった俺のを絞るように擦った。そのあまりにも強い刺激に体が仰け反り、背もたれにしてる木の幹に思いっきり後頭部をぶつけてしまう。
 
「あああぁぁっ!!マジっ!や、めっ!!死ぬっ、て!!」
「この程度では人間は死なない」
「~~~~っ!!!」

 マジレスすんな!後で覚えてろよ!!口で言い返せない分思いっきり睨みつけて伝えた。フィンはその視線すら心地よさそうに受け止めて笑みを浮かべる。

「ふふ、これに懲りたら私の問いには素直に答えるように。下で聞かれたくなければこっちのお口で話すんだ。わかったか?」 

 こっち、と唇をつつかれて俺は半ばやけくそで頷いた。フィンが満足げに目を細める。

「よろしい」
「い、からっ!!早く、ゆびっ…!!」
「ああ、わかっている」

 ちゅっと唇に吸い付いてくる。舌を絡めとられ、必死に応えているとふと根本の圧迫がなくなる感覚がした。それに気づくのとほぼ同時で下から上に擦られる。

「ンう…!うああァァっ…!!」

 腰が熱く溶けるような感覚ととんでもない放出感に襲われる。限界まで留められていたものがどくどくと流れ出す感覚は麻薬のようにきまってハッキリ言ってやばい。癖になったら危険なやつだろう。息をするのもいっぱいいっぱいな状態で「やっと出せた」「終わった」と心底ホッとする。
 (もげるかと思った…)
 焦らしというには長すぎる時間を終えて力が抜けた体はズルズルと下へ落ちていく。

 とすっ

 フィンの腕が脇に差し込まれた。俺はぐったりと目の前の肩に顔を埋め深呼吸をくりかえす。耳元でぴちゃぴちゃと音がして視線だけ横に向ければ、フィンの作り物のように美しい掌にベットリと白いのが張り付いていた。

「ご、め……手…」
「ふふ、食後のデザートにちょうどいい」
「へんたい、が…」

 これが今言える最大限の悪態だった。項垂れている俺に腕を回してフィンはベンチまで戻った。そこに俺の体を寝かして、額をよしよしと撫でてくる。まるで事後のような優しい手つきに戸惑った。

「あん、た、の…が…まだ…」
「やってくれるのか?」
「いっ、ここじゃ、嫌だけど…」

 このままじゃ俺だけ気持ちよくなって不公平だ。そう言いかけた時だった。

 ドドン!!

 腹に響くような音と共に視界が明るくなる。何事だと顔を上げればピンク色の花火が空にあがっていた。
 (なんで突然花火??てかもう暗くなってんのかよ…!)
 フィンとの攻防で気付かなかったがすでに辺りは真っ暗になっていた。見晴台は外灯がある為辛うじて視認できるが森の中とかは真っ暗である。

 ドドンッ!

 花火が続いて上がりまた視界が明るくなった。
 
「ふむ、山の方からあがってるようだな」
「…バズ山の、方か。花火の予定なんて聞いてねえし、まさか迷惑配信者のガキ共が飛ばしてんのか…?」
「かもしれないが…」
「だとしたら今すぐ戻らねえと!フィン!鳥の姿に、って…今真っ暗だし目立ちすぎるよな。徒歩で行くか」

 ベンチから降りて見晴台の階段へ移動する。暗いしよく見えないがここから下山できるはずだ。

「待ってくれライ。…妙だ。奴ら、あんな大音量の音と光でわざわざ位置をバラして、まるで私達に気付かせようとしてるみたいだ」
「肝試し前に遊んでんじゃねえの?どっちにしろあんたと俺で行けば問題ねえだろ」
「…」

 まだ納得がいかないのかフィンは口を閉ざしたまま俯いてしまう。この会話の間もパラパラと俺達の背景で花火は続いていたがいつ止まるかもわからない状況だ。花火が終わってしまえば奴らの位置を探る手段はなくなる。時間との勝負なのだ。

「なあ…あんたがあの山にいい感情を抱いてないのは知ってるし、行きたくないなら無理強いはしねえ。でもあの山は陸郎や吾郎さんが大切にしてる山でもある…やっぱり放っとけねえよ」
「ライ…!」

 フィンの心配する声を無視して階段を下りていく。暗すぎて足元が見えない為スマホのライトをつけて進んだ。だが、先程までの太陽光がある状態での薄暗さとは段違いの暗闇が森の中に広がっていた。生い茂る黒い影に覆われた世界へ足を踏み入れるのは、まるで化物の口の中に入るような不気味さと恐ろしさがある。

 “くれぐれも、夜の森へは立ち入らないようにしてください。獣や人…何が潜んでいるかわかりませんからね。絶対に入っちゃいけませんよ”

 吾郎の言葉が脳内で再生されると同時にぶるるっと身震いした。

「ライ」
「うわあ!」

 フィンが真後ろから声をかけてくる。振り返れば先程とは違って決意の固まった顔がこちらを向いていた。

「ライの気持ちはわかった。夜の森を抜けるのは危険すぎるし、私が空から連れて行こう」
「!…だ、大丈夫なのか?」

 真っ暗な空で飛べば目立つどころの話ではない。もしも近くに人間がいたら見られてしまう。

「問題ない。あの山の木々は空を蓋するように立ち並んでいた。真上を飛ばない限り見えないはずだ」
「そういやそうだったな…ならいけるか」
「ああ、その代わり約束してくれ。狼男や迷惑者と遭遇しても、私が傍にいない場合はすぐに逃げてくれ。どんな状況でも必ずだ」
「逃げるって…ソルも駄目なのか?」
「ああ、狼男も…狼男の方がより気を付けてほしい。奴はライが一人で行動する事になれば必ず接触しようとするはずだ」
「なんでわかるんだよ」

 ソルは俺らと一緒にいたくねえって飛び出したのだ。わざわざ自分から近づいてくるとは思えない。そもそもこの森から出ていってしまってる可能性もある(都会に戻ってたりして)。俺の言葉に対してフィンは苦々しく顔を歪めた。

「奴と昔の私が似てると言っただろう。不愉快極まりないが…奴の思考が少しだけわかるのだ」
「つまり勘って事か」
「ああ、根拠はない。だがほとんど確証に近い勘だ」
「はあ…わかったよ。あんたとはぐれた場合は隠れるか合図する…って、合図ってできるか?」

 ここは通信も使えなければ目印になる場所もない。はぐれてしまった場合の連絡手段がないのだ。唯一俺らにできるのは思念を使うぐらいだが。

「思念は止めた方がいい。あの山では聞いてる者が多すぎる」
「こ、怖い事言うなよ…」
「その代わりと言ってはあれだがこれを」

 いつぞやの小さな巾着を渡される。中を覗いてみるとフィンの羽根が入っていた。燃えない巾着に包まれて色鮮やかなオレンジの羽根がきらめいている。
 (綺麗だな…)

「何かあればこれを使ってくれ。必ず助けに…いや、駆けつける」

 “助けに行く”という台詞から“共に行こう”に修正されてポカンと口をあけた。フィンは真剣な顔で頷いてくる。
 (フィン…)

「ああ、頼んだぜ」

 俺は、熱くなった頬を隠すようにフィンの背中を叩くのだった。


 ***


 ボコ…ボココッ…

 真っ暗の世界。くぐもった水音。ゴオオと鳴り続ける耳鳴り。
 (苦しい…重い…)
 手足を動かそうとしても全身を締め付ける圧迫感のせいで指一本動かせそうになかった。どうしてこんなことになったのかと必死に思考を巡らせる。
 (そうだ、大鳥になったフィンと…バズ山に向かって…)
 空を旋回しながら花火の位置から少し離れた場所に着地しようとした時だった。グラリと大鳥の体が斜めに傾いたのだ。

『?!お、おい!フィン??』

 俺の呼び掛けにも反応せず、そのまま大鳥は裏返るように体を回転させた。どんな飛び方かと思えば、大鳥の瞼は重く閉じられていてピクリともしなかった。

『気絶してんのか?!フィン!?フィン!!うわあああっ!』

 大鳥の背中から滑り落ちた俺は重力に逆らわず高層ビル並みの高さから落下していく。フィンの体は翼があるおかげか俺より降下が遅い。俺だけがどんどん地面へと近づき、大鳥の姿は小さくなっていく。
 (やばいっ…っ!!)

 ドボオオンッ

 俺の体は木々のクッションを貫通した後そのまま地面…ではなく滝の中に突っ込んだ。滝壺に落ちたおかげで体を粉砕せずにすんだようだが
 (全身いってえ…)
 水面に打ち付けた事で激痛が走っていた。痺れと痛みでうまく動かないまま滝から流れ込む力によって水底へと沈んでいく。しかもいくら落ちても底にぶつからない。永遠にも思える深さに恐怖を感じた。

 ボココッ

 空気の泡がまた一つ溢れていく。
 (そうか、俺…フィンの背中から落ちて…溺れたんだった…)
 上に戻ろうにも真っ暗でどちらが上なのかもわからない。絶望的だ。

 スウ…

 すると、白く光る人影が音もなく現れる。
 (?!)
 死にかけてとうとう幻覚を見てるのかと、さほど驚く事もなく見つめていると、その人影は俺の腰を抱いてぐいぐいと引っ張りだした。その力は恐ろしい程強い上に水底の方へ向かってることに気付く。
 (こいつ、俺を水底に沈ませて殺すつもりか…?)
 バズ山には亡霊がいると言われていたが本当にいたのか。こんなに暗くて寒くて苦しい場所で死んだのなら亡霊になってしまうのも頷けるが。
 (可哀想に)
 シルエットだけみれば子供か小柄な女性のように見えた。きっと寂しくて俺を引き込もうとしてるのだろう。

 “…いいぜ”

 自嘲するように笑った後、小さく呟く。水の中だから声なんて出てない。そもそも水流がすごい中音の振動が伝わるわけがない。それでも続けた。

 “ここで、あんたと死んでやる……でも、体だけは、上に返してくれ”

 夜の滝壺に落ちた俺に助けが来るとは思えない。すでに水を飲みすぎて体は自由に動かないし死ぬのはほぼ確定してる。どうせ死ぬならみっともなく命乞いする気はない。ただその代わり「体はフィンに渡してくれ」と強く願った。このまま水底に沈めばフィンとは二度と会えなくなる。遺体を見つけてもらえないという恐怖もあるが、一番は、フィンはきっと俺の死を直接確認しなければ一生受け入れられないだろうという事だ。俺の死を受け入れられず永遠に森をさ迷い続けるなんて死よりも恐ろしい末路だ。

 “たのむ”

 白い人影は俺の願いに呼応するようにふわりと揺れて…唐突に離れた。
 (…?)

 ゴオオオ…ッ

 どこからともなく強い水流が押し寄せてくる。突然吹き出した水流は俺の体をぐんっと持ち上げたあと、滝がある方とは逆の水面へと運んでいく。
 (助けてくれる、のか?)
 激しい水流の中振り返って確認するが…すでに人影は消えていた。

 

 ザバっ!!

「ぷはっ!うっ、ゲホゲホっ、ゴホッ!」

 水面から顔をだし、手前にあった地面に乗り上げる。

「げほっげほっ、ケホッ、うぐっ、ゲホッ、ゴホッ…」

 肺にまで入り込んだ大量の水を吐き出し、喉と背中がひきつる程の痛みを感じながら呻いた。後ろを確認すれば足はまだ川に浸かっていたままだった。このまま川に引き込まれても困る。重い体に鞭をうって川の外へと避難した。滝と川から離れてやっと落ち着けるかという所で騒がしい足音が近づいてくる。

「はは!こりゃすげえ!人が落っこちてきたと思ったら昼間のお兄さんじゃーん!」

 声と共に閃光のように明るい光が目に入ってくる。とっさに目を閉じるがすでに遅く、瞼の裏にまで光がちらついてきて生理的な涙が滲んだ。
 (今の声、まさか…)
 フラッシュの痛みに耐えていると突然髪を掴まれぐいっと上を向くように引っ張られる。

「イっ…っ!」
「ほら、濡れてて一瞬わかんなかったけど顔一緒だろ?」
「ほんとじゃーん!バリすげえ~!」

 ぎゃははと耳障りな笑い声が降ってきて、なんでこのタイミングで、と呪いたくなった。

「水も滴る~と言いたいけどなんか死にかけてんじゃん?溺れたの?ダッセーなあ」
「っ…!はなせ!」

 髪を引っ張る手を払いのけて睨み付ける。まだ光に目が慣れてないがぐっと無理やり目を凝らした。すると目の前に迷惑配信者のガキ共が並んでいるのが見えた。俺の横にしゃがみこんでいた銀髪の男がニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべている。

「やっほーお兄さん、さっきぶりだねえ」
「お前らやっぱり来たのか…」
「そりゃ来るでしょ。動画の予告だしちゃってるし、何よりお兄さんには借りもある」

 男が「借り」と意味ありげに呟く。

「いやーにしても驚いた。花火なんかで呼びだせるか不安だったけどまさか空から降ってくるとはね。動画撮っとけばよかった」
「花火で呼び寄せる…」
「そうそう。飛んでっちゃったから呼び出すにはこれしかないかなって。車に何個か積んどいてよかったよ」
「飛ぶ…??」
「まあまあ、そんなどうでもいい話は置いといて。一旦俺らと一緒に来てくれるかなー?」

 そういって男が手を伸ばしてくる。俺の体に触れようとした瞬間、手首を素早く捻りあげて関節を決めながら横に倒した。

 どさあ!

 倒れた男の腰に馬乗りになって後ろ手に拘束する。一秒にも満たない間に起きた事象に思考がついていかなかったのか、押し倒されてから男は悲鳴をあげた。

「いいっいててて!!ストップストップ!!痛い!てか重いっ!あんた本当に強いなっ!格闘家でも目指してるわけ?!」
「ガキ共、すぐに山を下りて家に帰れ」
「イデデデデっこの馬鹿力っ!あー!もう!これ見ろ!」

 男が俺に馬乗りにされた状態でスマホを取り出す。それから画面を見せてきた。

「!!」

 そこにはフィンが俺を乗せて飛び立つ瞬間がバッチリと映っていた。二人で見晴台に向かう時のシーンだ。炎を纏いながら美しい翼を羽ばたかせる幻獣とそれに乗っかる俺の姿。最悪なのは、フィンが人間から大鳥になる瞬間もしっかり撮られている事だ。これでは人型のフィンにも実害が出る。

「待てっ…それはっ!!ぐっ!」

 スマホを奴から取り上げようとするが背後から羽交い締めにされて無駄に終わった。そのまま無理矢理立たせられ針と呼ばれた男と向き合わされる。

「くく、やっと大人しくなったな、お兄さん」
「……っ」
「さっきの動画さあ、すごくね?人が化物になったのも信じらんねえけど、空飛んだんだぜ?一体何者?てかこの動画なら100万インプレッションどころか1000万いくぜ??海外とかこういう化物系好きだろ??海外デビューじゃん!撮れ高すぎるうー!」
「やめろっ…そんな事をしたら…!!」

 1000万もの見知らぬ人間にフィンの幻獣の姿を曝される。そんな事絶対にさせられない。そもそも幻獣の存在がバレたらどうなってしまうのか。グレイがつじつま合わせで必死に繋げてくれている人間と幻獣のバランスが一瞬にして消えてしまうのではないか。
 (なんとしてでも消さないと…)
 とても恐ろしいことになる。それだけは人間の俺にもわかった。
 
「まあまあそんな怖い顔すんなって。そんなに嫌なら、別にこのデータを消してやってもいいぜ。元々俺らはそっち目的じゃなかったしな」
「!!」
「その代わり、俺らの動画に協力してくんねえ?」

 男はニヤリと悪い笑みを浮かべるのだった。
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