ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

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九話

★“恋人”をやめた獣

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「その体はどうした」

 低く唸るように言われ、一瞬何の事かと呆けていたが、下をみて思い出す。そうだ、学生姿のままだった。

「これは…ユウキ、いや、狐ヶ崎の羽織の力で姿を変えてて」
「羽織を脱げば治るのか」
「ああ、中身は俺のままだから」
「…」

 フィンはベッドには乗らず冷たく見下ろしてくる。言葉が通じてくれて安心したが、いつも物腰が柔らかいフィンが真顔で腕を組んだ状態でいるとやけに威圧感がある。ハッキリ言って怖い。目のギラつきも相まって知らない人間のようだ。

「それは奴の趣味か?」
「いや、成り行き…で…」
「……」

 どんな成り行きだと責めるように眉をひそめられた。空気がひりつくのを感じる。
 (やばい、)
 この姿では更に状況が悪化しそうだ。今すぐ羽織を脱ごうと手をかけ…あっと気づく。羽織の下は浴衣だけ、しかもユウキに抱かれた痕跡が体中に残っている。このまま変化を解けば全てが晒されてしまう。

「え、っと、俺…シャワーに」
「壊れていて使用不可だ」
「うっ」

 そりゃそうだと黒焦げの店内を思い出す。

 ギシッ

 フィンがベッドに乗り上げてくる。慌てて制止した。

「まっ、待て!近づくな!えっと…俺はあんたと話がしたくてついてきたんだ!やりたいわけじゃ…っ」
「…私の事が嫌いになったから拒絶するのか?」
「違うって!」

 苛立ちを強めたフィンが羽織を引っ張ってくる。

「わかった!脱ぐ!脱ぐから!」

 狐ヶ崎の羽織を破いたら後が怖い。フィンの手から逃げて、自分から脱いだ。

 ぽふん

 裸に浴衣のみを身に着けた…なんとも防御力の低い恰好になったが、これ以上脱がなければ問題ない。そう言い聞かせてフィンの様子を伺う。

 ギロリ

「ひっ…」

 何故か更に怒りを強めたフィンが見下ろしてくる。

「お、おいフィン…なんでそんな怒ってんだよ…」

 温泉旅行でも似た感じでキレていたが、今回は温度感が全く違う。あの時は熱く煮え滾るような感情が伝わってきたが、今回はどこまでも冷え切っていて、様子のおかしいフィンに動揺していると、短く「匂いがする」と言われた。

「匂い…?」
「ああ、ライの体から狐の匂いが濃く漂ってくる」
「!」
「昨日も今日もずっとだ。羽織のせいかと思ったが…どうやら違ったらしい」

 そう言って浴衣の下に手を入れてくる。

 ゾクリ

 熱い掌が肌を撫でていくとそれだけで腰の奥が熱くなった。

「っ…あ、…」

 早く欲しい。期待するように体が火照り、止めようとしたはずの手は縋る形で添えられてしまう。俺の反応を見たフィンが薄く笑った。

「随分可愛い反応をするようになったな」
「…!」

 カアッと顔が熱くなる。とっさに俯くが、顎を掴まれ上を向かされた。そのまま乱暴な仕草で唇に噛みつかれ舌をねじこまれる。

「うンンッ、んぅっ…!!」

 口付けというより食われてるみたいなキスだった。とっさに胸を押し退けようと手が伸びたが…これでフィンの気が少しでも済むのならと思い直し、腕をおろした。

 ぱたり

「…」

 俺の手がシーツに落ちたのを見て、フィンは目を細め、…ぎちりと舌に歯をたててくる。

「んうぅ……!」

 痺れるような刺激に堪らず声が漏れた。フィンはしばらくそうして舌を責めた後、ゆっくりと体を引いた。互いの舌が唾液の糸で繋がっているのをボーっと眺め、はっと我に返る。フィンの冷たい視線がこちらに注がれていた。

「狐には何をされた?」
「…そ、れは…」
「言いたくないなら言わなくていい」
「…」
「口で言いたくないなら…前のように“体に聞く”だけだ」
「い、やめろ…言うから…!」

 トラウマになってる“尋問"を引き合いに出され、速攻降参する。こんなボロボロの体で焦らし地獄は絶対に耐えられない。肩を落とし、伏し目がちに懺悔した。

「…監禁された。屋敷の離れで三日間。気づいたら縛られてて…逃げられなかった」
「縛られただけか?」
「いや……その時の事は薬を使われてて…何されたかは…ほとんど覚えてない。でも…レイプされたのは確実だ………ごめん、…」

 呟くように謝って、部屋が静まり返る。その後の事も話そうか悩んだがフィンはもういいと首を振って、ため息を吐いた。

「やはり行かせるんじゃなかった。奴の危うさを知っていたのに…私が愚かだった」
「違う、あんたは何も悪くないっ」
「いや全て私のせいだ。あの時無理矢理にでも止めていたら、こんな風にライが傷付つけられる事はなかった」

 どさっ

 押し倒される。上から見下ろしてくるオレンジの瞳は、まるで敵対する相手を見るように強い拒絶を映していた。

「ここで少し休んだら移動しよう」
「へ…?」
「安心してくれ。場所ならいくつか思い当たる所がある。海を渡った先に幻獣も人も近寄らない秘境がある。そこなら幻獣に好かれやすいライでも安全に過ごせるだろう」
「ちょっ、ま…」
「物理的に隔離を行った後は、私の目の届く範囲で過ごしてもらう。これからずっと、何があっても私から離れる事は許さない。最初は慣れないかもしれないが、その内ライもわかってくれるはずだ。これが私とライの幸福のためになると」
「は…?何、言って、隔離…?秘境??冗談だよな…?」
「私は本気だ。今回のような事を二度と起こさない為にも、私が傍にいなくていけない。誰にも傷つけられず、二人きりで静かに愛し合うんだ」
「二人きり、って、そんな……」

 自由を奪い他者との交流を断絶して管理下に置く。まるで所有物を扱うようなやり方に鳥肌が立った。
 (そんなの…今回のユウキと同じじゃねえか……)
 この数日間で俺は物のように扱われる屈辱を知った。あれは精神を削り人として生きる意志を奪っていく。たとえ愛してる相手だとしても、そんな横暴受け入れられるわけがない。

「ありえねえ、俺は絶対行かねえからな…ッ!」

 本気で逃げようと腰を上げる。その瞬間、腹に膝がめり込んだ。

 メリッ

「うぐっ、…いっ、…!」
「どうして私を拒否する?逃げようとするんだ?」

 フィンはどこまでも冷たい目で見下ろし、淡々と責めてくる。その瞳に俺は映ってなかった。藻掻けば藻掻く程腹に食い込ませた膝が重くなり、痛みに呻く事しかできない。

「やはり狐の方が良いのか?」

 バシッ

 空いていた方の手でフィンの横っ面を思いっきり叩いた。あまり手応えはなかったが“俺が本気で殴った"という事象にフィンは驚いているようだった。俺がフィンを殴ったのも、本気で抵抗したのも初めての事だ。

「ライ……?」
「ふざけんじゃねえ!誰がユウキの方が良いだって???こっちの気も知らねえで…、その上拉致監禁だと??俺の事馬鹿にしてんのか!!」
「私は…ライの為に…」
「俺の為??俺は人間だぞ!誰にも飼われるつもりはねえし、人間を止める気もねえんだよ!!ペットが欲しいなら他を当たれ!」
「…私の傍にはいられないと?」
「少なくともあんたが言った形では無理だ!心配させたのは…本当申し訳ないけど…だからって無茶言っていいわけじゃねえ、それとこれとは話が別だ!いいか、これ以上言うならマジで殴るからな。足もどけろ、今すぐだ」

 フィンはショックを受けたように固まり、ゆっくりと膝をどけた。気が変わる前にとフィンの下から抜け出しそのままベッドから出ようと足を滑らせた。

 ぐっ

 床に足がつくその瞬間、腰に腕が回り、再びシーツの上に引きずり込まれる。

「おい!!はなせッ!」
「…どこへ行く」
「どこって病院だよ!今のあんたとじゃ話にならねえ…グレイ達の所に行く!」
「だめだ」
「はあっ?!いい加減にしろよ!話なら明日聞いてやるから放せ!」
「だめだ、私の見える範囲にいろ」

 ぎゅっと背中に密着したと思えば、羽交い締めにされ…身動きできなくされた。

「フィンッ!」
「…く…な……」

 ボソリと耳元で囁かれ、体の動きが停止する。


「行かないで、くれ…」


 (え…?)

 そのあまりにも弱弱しい囁きに沸騰寸前だった怒りがみるみる萎んでいく。振り向けば…悲し気に眉を寄せるフィンと目が合った。

「頼む、ライ…、行かないでくれ。私の事は嫌っていい。憎んでいい。だからお願いだ、どこにも行かないでくれ……、私の傍に…いてくれ……」

 ぎゅっと、肋骨が折れそうな程強く抱かれる。物理的な苦しさに喘ぐが…胸の方がもっと苦しかった。

 “行かないでくれ"

 きっと今の言葉は一週間前に聞くべきものだった。ユウキの車に乗る時に足を止めて、耳を傾けていたら…聞けていたはずの台詞だった。

 (俺があの時、変に意地を張ったせいで…)

 こんな顔をさせてしまった。後悔で胸が締め付けられる。

「愛してるんだ。誰にも取られたくない。傷付けられたくない。触られたくも、見られたくもない。知られることすら許したくない…ずっとこうして腕の中にしまっておきたい…」

 重い言葉を吐くフィンにじわりと熱いものが込み上げてきた。他の奴に言われたら寒気がする台詞でも、フィンに言われると不思議な程嫌悪はなくて。逆に嬉しさすら感じてしまう俺は相当重症なのだろう。

 すっ

 叩いてしまった方の頬をそっと撫でた。

「相変わらず、あんたは重いな…」
「……」
「ったく、最初からそう言えよ。怖い顔で拉致監禁を迫ってくるから何事かと思ったじゃねえか…」
「ラ、イ…」

 頬を撫でて「ごめんな」と呟いてから触れるだけのキスをする。フィンは瞬きをせずジッと俺を見つめていた。その揺れ動くオレンジの瞳に囁く。

「心配しなくても…俺にとっての一番はあんただ。離れてみてよく…わかった。俺はあんたの事が好きだ」
「!!」
「縛らなくても、あんたの傍にいる…ちゃんと帰ってくるからさ。今回みたいに帰れなくなったらあんたが迎えに来ればいいし、そんなに怖がるなよ」

 安心させるようにぽんぽんと膝を叩いてやれば、フィンは一度腕を解き、俺の体を反転させて正面から見つめてくる。

「ライ…」
「落ち着いたか?」
「ああ、…すまない…」

 しおらしく謝られ、苦笑してしまう。

「んなのいいから、他に言う事があるだろ?」
「……」

 俺の言葉に、フィンは俯き、一呼吸置いてから…今日初めての笑みを浮かべて言った。

「…おかえり、ライ」

 ぎゅうっと正面から抱かれ胸が熱くなる。

「ただいま」

 やっとこの腕に帰ってこれた。感無量でそれ以上は何も言えず、代わりに自分からも腕を回し、抱きしめた。
 (暖かい…)
 肩に顔を擦り付け、数日間の寂しさを埋め合う。

「ライ、愛してる」
「!」
「誰よりも愛してる…」
 
 甘く囁かれ、誘われるように顔を上げた。先程よりも熱の灯ったオレンジの瞳がこちらを向いていた。その美しさに見惚れる。もっと近くで見ていたいと顔を近づければ、優しく唇が重なり、吐息を奪われる。

「ん、…、んぁ…は…」

 今までの刺々しい態度が一転して、フィンはすがりつくように愛を伝えてくる。それが無性に嬉しくて背中に回した手で引っ掻いた。フィンもお返しのように熱い掌で膝から太ももの付け根へと撫でてくる。途端に浴衣がはだけ、ユウキに嬲られた体が露わになった。

「んうう…っ、ん…」

 舌の裏を舐められ、歯列をなぞられ、絡ませた舌で嬲られ…どんどんとキスに溺れていく。頭の奥が白みボーッとしてくると、胸の近くを撫でられた。中心には触れず焦らすようにくるりと円を描く。

「ああ…、や、フィ、ん、…ま、て…」

 触られたくないのに、体はゾクゾクと期待に震えてしまう。そしてとうとう指先が中心をかすめた。

「んあぅッ…」
「?!」

 甘い声が部屋に響く。フィンは目を見開き、胸と顔を交互に見てきた。

「ライ…?」

 気まずくてフィンの方を見れずにいると、確かめるようにもう一度、今度は押し潰すように指の腹で押された。

 ぐりっ

「んくぁっ、やめっ…ッ!」
「まさか…」
「…」
「ここも奴に嬲られたのか?」
「はぁ…、ん……覚えて、ねえ、けど……そ、らしい…」
「奴め……」

 フィンは胸への愛撫はそのままに殺意を溢れさせた。後輩の肩を食い破っていた姿と重なり本能的に震えが走る。

「…すまない」

 俺が怯えてるとわかるとすぐさま殺意を抑え込み、キスの雨を降らせてくる。優しく甘いキスに溺れ、また何も考えられないぐらい溶けてきたら

 グッ

「ンンぐっ、ああっ、ばかっ」

 すり潰すように指で摘ままれた。ムズムズと痒くなる感覚と共に甘い痺れが広がる。押したり、摘まんだり…俺の反応を見ながら試してくるのだ。悶えながら「やめろ」と身を捩った。

「はぁ、ンンんっ…だからッ、さわ、んなっ…て!」
「奴の恩恵と思うと腹立たしいが、ライが良い思いをするのなら…触らないままでいるのは惜しい」
「いい、って…ああっ、変な、感じ、だかっ、ひゃあっ!」

 ぴちゃりと舌先で胸を舐められみっともない声がでた。フィンは喉で笑ってもう一度舐めてくる。怒りと楽しさを半々にした据わった目で見上げられ、ゾクリと鳥肌が立つ。ギラつくオレンジの瞳は野生みが強い。
 (食われそうだ…)
 恐ろしいのに、触れ合う肌はいつも通り熱くて、その恋しさに胸が焼ける。

「はあっ、ああぁっ、ふぃん、…イッ…ッ!」

 ふやけそうな程舐められていた時だった。ガジッと鋭く歯を立てられ、あまりに強い刺激に悲鳴が出た。

「いッ、てぇ、よ、ばか!」

 ヒリヒリと痛むそこに喘ぎながら「こら!」と髪を引っ張った。フィンは気まずそうに顔をしかめ謝ってくる。

「すまない、加減を間違えた」
「間違えたって、…」

 (ガッツリ歯形ついてんだけど…)
 何をどう間違えたらこうなるんだと睨みつける。もしこれが性器にやられてたら大事故になってただろう。想像してブルっと身震いした。

「本当にすまない。わざとじゃないんだ。今は少し、調整が難しくて…」

 そう言ってちろりと突起を舐めてくる。痛むそこを刺激されると更にムズムズが強まり気持ち良…じゃなくて変な感じがした。

「調整、って…どういう、意味だ…?」
「実はライと離れてる間に…時雨に殺されて、一度生まれ変わってる」
「!!」
「その時、近くにシュウがいて…」
「……!」

 “生まれ変わって最初に見た存在を好きになる”

 その習性が後輩で発動してしまったのか。とんでもない新事実に愛撫で溶かされていた脳内が一気に冴えていく。

「シュウへの愛着衝動の方は抜けてるが…シュウの性質に合わせた、その、…荒いやり方が体に残っていて…、」
「習性って好きになるだけじゃなかったのか?言動も変わっちまうのかよ?」
「愛されたいという欲望が…性癖や性格も捻じ曲げる。といっても、大体は微々たる変化程度で収まるんだが…今回はちょっと例外らしい」
「マジ、か…」

 どうりで扉を蹴り開けたり、無理やり襲ったりとやけに強引だったわけだ。

「それ、ちゃんと元に戻るんだよな?」
「ああ。本来は愛着衝動と同時に抜けて全てリセットされるんだが、今回は荒療治で先に愛着衝動だけ抜けてしまった」
「荒療治?」
「昨日ライと会った時に、ショックで抜けたんだ」
「…!」
「あの時の私は、シュウへの愛着を抱く一時的な自我と、ライを想う根元の自我が同時に存在する事になって…酷い混乱状態に陥った」
「精神が二つに分かれたって事か?それ大丈夫なのかよ?」
「全くもって大丈夫ではない。気が触れてシュウに精神を乗っ取られかけた」
「……」

 つまり、今朝からフィンが正気を失っていたのは俺のせいだったと。色々繋がったが、その分責任を感じ絶句してしまう。

「違う、ライのせいではない」

 フィンが優しく抱きしめてくる。ふわりとフィンの匂いに包まれ泣きそうになった。

「ライのおかげで戻ってこれたんだ。シュウの世界で“私”を見つけてくれてありがとう」
「フィン…」
「ライを愛おしく思える。こんなに幸せな事はない」

 ちゅっと頬に吸いつかれ顔が熱くなる。

「…俺もあんたが正気に戻ってくれて…嬉しいよ」

 小さく呟くように言ってから、ぐいっと白金の頭を胸の前に引き寄せた。

「…ライ?」

 フィンは胸の位置で、きょとんと見上げてくる。

「今日だけだからな」
「?」
「習性なら仕方ねえし、今日だけ特別で…あんたの好きにしていい」
「!!」
「いいか?俺はドМじゃねえんだ。痛みじゃ気持ちよくなれねえから、噛み切るなよ、わかったな??」
「…ああ、…なるべく優しくする」

 ほんとかよと顎を擽って挑発してやるとフィンはくすりと笑いを溢した。赤い舌が出てくる。

 ぺろり

「…っっ!!」

 中心は舐めず、お伺いをたてるように、優しく周りだけを念入りに舐めてくる。右を舐めたら次は左に。決定的な刺激は与えず輪郭を辿るだけ。そのまどろっこしい刺激に耐えきれず「ああもう!」とやけくそのように自分から引き寄せた。こんな生殺し状態では気が狂ってしまう。

「早くやれよ…っ!」
「ふふ、」

 俺の限界を捉えたフィンは小さく笑って、ぺろりと舌なめずりする。濡れた唇が近づいてきて、優しく食んでくる。

 ちゅぷり

「はぁあっ…、っく、ああっ…」

 ほとんど感じた事のないそこからの甘い刺激にゾクゾクと背筋が震えた。体から力が抜けて、起きてられない。フィンは俺の弛緩した体をベッドに押し倒し、一度キスに戻ってきた。舌を根元から奪い、吸って、舌先に甘噛みする。キスで更に弛緩したところで、ぎゅうっと胸を摘ままれた。

「アアアッ…!!」

 仰け反りながら新たな快感に溺れる。舐められる度に、電気が走るように熱い刺激が駆け上ってきて、腰が砕けそうになる。

「んああッ、はぁう、くっ、ああッ…!」

 腹や腰を撫でて甘やかしながら、歯を立てられ、きつく吸われ、性感帯へと変わらされていく。いつの間にかそこは赤く腫れていて、いやらしく立っていた。

「これは…グレイも驚くだろうな…」
「んぐ、はっ、言うな、よっ、あああ…ッ!」
「言うものか。こんなライの可愛い姿、見せられるわけがない」
「うるせっ!ンンッ、も、っ、そこ、いいっ…てっ!!」
「今日は私の好きにしていいんだろう?」
「いい、けど…っ、長いっ、ひゃっ、両方、やめろ!うああっ…!」

 ジンジンとひりつく中心は吐息が触れるだけで気持ちがいい。これ以上敏感にされたら私生活に影響が出そうで怖い。…もう手遅れかもしれないが。

「フィン、ん…っ」

 助けを求めるように下を見れば、ギラつく瞳とぶつかった。まだやる気なのかと不安になったが

「…トラウマにしても良くない、このくらいにしておこう」

 惜しむようにもう一度舐めてから離れていった。
 (やっと解放された…)
 ホッと胸をなでおろすが、すぐさま太ももの付け根という敏感な場所を舐められ、飛び上がる。

「うああ?!」
「痛そうだな」

 勃ちあがったそれを一瞥し、笑う。わかってんなら早く触れよ…と乞うように見つめるが、フィンは太ももから膝へぬるりと舌を這わせ無視してくる。あまりにも念入りに太ももに吸いつくもんだからどうしたのかと思えば、ユウキのつけた痕を上書きしてるらしい。

「はあ、うっく、はっ、ンン…、うぅ…」

 一つ一つ自分の痕で塗り替えていく。時間をかけて両足を自分のものにした後、やっと太ももの付け根に戻ってきた。その頃にはもう、俺はシーツに沈み込むようにして意識を朦朧とさせていた。

「はぁ、はっ、はぁ…」
「ライ」
「ん…はぁ、…?」

 甘く囁くように呼ばれて、のろのろと顔を上げる。まだ焦らされるのかと濡れた瞳で見つめると、フィンは苦笑を浮かべ、ゆっくりと俺の固く張り詰めたそれを握り込んできた。

「うああッ!はっ、ああぁっ…!」

 軽く上下に擦られただけなのに、待ちに待った刺激が駆け上ってきて、限界だったはずの体が跳ねた。とぷとぷと先走りが溢れフィンの綺麗な手を汚していく。
 (やばい、マジですぐイキそ…ッ)
 夢心地でフィンの手に任せていると

 ちろり

「んあっ…?!!!」

 先端を舐められ、ぎくりと体が強張った。溶かされ限界まで張り詰めたそこは熱いものが触れた瞬間驚く程強い刺激に襲われる。しかも濡れた舌先で尿道口を弄るように抉られ…腰が勝手に揺れた。

「やっ、んああっ!!はあ、やば、いっ…アアッ!まっ、いっ、く、から…ああ!!」

 いきそうだと伝えてもフィンは口から離さなかった。喉まで咥え、吸い上げながら舌先で裏筋を抉ってくる。こんなの我慢できるわけがない。さらさらの髪を掴み腰へと引き寄せた。

「あああっ!ダメ、だっ、…い、く…っ!はっ、んあああ…っ!」

 どくりとフィンの口の中に吐き出す。ユウキとの時に何度も出したはずなのに、どろどろと止まらなくて、あまりの快感に視界が白く染まった。

「はぁぁ…、ん、うぅ、…はぁ…」

 ゴクリと嚥下される感覚すら気持ちよくて。息をするのも忘れて呆けているとぺちぺちと頬を叩かれた。

「ライ、大丈夫か」
「…は…はぁ…」
「ライ?」
「……、…し…にそ…」

 泥のように溶けて指の一本も動かせない状態で辛うじて答えた。声が掠れてて余計哀れ感が出る。フィンは獰猛な笑みを浮かべたと思えば、体を倒し、鎖骨を齧ってくる。

「ふふ、死んでもらっては困る。ライは生き返れないんだぞ?」
「…じゃ……少しは…手加減、しろ、や…」

 こっちは色々ボロボロなんだからな、と涙目で睨みつけた。フィンは笑いながら再び足の間に手を入れてきた。すぐには後ろに行かず、腹を撫でてからゆっくりと掌を肌の上で滑らせて、股の方に近づけてくる。そこではっと我に返った。
 (ヤバイ、中に…まだユウキのが…)
 思い出した瞬間、ドロリと伝う感覚がして青ざめる。

「フィ、ンッ、まって…んっ、ああっ、まてっ」

 腹の中にユウキの精液が残ってる。そう思うと一気に血の気が引いた。

「どうした、ライ」

 突然暴れだした俺の様子にフィンは目を見開き、やんわりと押し倒してくる。

「中を弄られたくないのか?」
「ち、がう…す、すぐ戻る、から…」
「トイレか?」
「それも違う……なあ、マジでどいて、逃げねえから…」

 フィンに他人の精液を触らせたくない。せめて自分で処理させてほしい。必死に「どいてくれ」と懇願するが無情にもフィンは首を振って俺の半勃ちのものを擦ってくる。

「ああっ…!ば、かっ、んんぅ、さわ、んなっ」

 イったばかりで敏感なままのそこは擦られると痛い程感じてしまう。先端を親指で擦られ、トロリと先走りなのか精液なのかわからない液体が溢れる。しかもそれを塗り込むようにして上下に擦られるもんだから…悲鳴のような声が出た。

「んあアッ、はあっ、そこはっ、ああっ、だめ、だっ、また、いっ、ちまう、って…!」
「いくらでもイけばいい」 
「ちがっ、もっ、ああっ、も、出ねえから…ッ」
「…ああ、先程飲んだ精液も薄かったしな、今日既に何度か出してるのだろう?」
「!!」

 フィンの言葉に、青ざめてるんだか赤くなってるんだかよくわからない状態になる。顔を見られたくなくて横に向くと、顎を掴まれ目を合わせられた。

「今日も抱かれたのか?」

 オレンジの瞳が諭すように見つめてくる。先程までの体の底から冷えきるような強い怒りは感じないが、有無を言わさぬ圧のようなものはあった。俺は目をそらせぬままコクリと頷く。

「…なるほど」

 フィンが据わった目で小さく呟いた。前を擦っていた手を開き口元に持っていく。

 ぴちゃり、ぴちゃ…

 先走りで濡れた手を舐めて根元まで唾液で濡らしていく。赤い舌が這っていくその酷く扇情的な光景に目を奪われた。逃げたいと思ってたはずの体は見入られたように固まってしまう。フィンは俺の様子を眺めながらしっとりと自分の指を濡らし、再び股の間に手をいれてきた。今度は性器ではなく、つーっと股の間を辿り、疼くそこで指先が停止する。

「ま、まてっ、フィンっ…」

 ぐちゅり

「あああっ…!!」

 唾液で濡らされた指が中に入ってくる。ユウキを数時間前に受け入れたせいですんなりと飲み込んでしまう。フィンはそれに暗い笑みを浮かべた。
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