ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

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十話

“つじつま合わせ”へ

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「少し前から人間と幻獣のトラブルが増えていて、しかも種族間のすれ違いとかじゃなく…悪意的なトラブルが増えてるノ。問い合わせもパンク寸前。はっきり言って猫の手も借りたい状態ダワ」
「なるほど。だから俺らも手伝えって事か」
「ええ…これはあたしのエゴ、ボランティアみたいなもんだから、ライ達を巻き込むのはおかしいのだけど…できたら二人にも協力をお願いしたいノ」
「そういう事なら俺は…」

「――待ってくれ」

 フィンに遮られ、グレイと共に顔を向けた。

「私としては…ライをあまり幻獣と関わらせたくない」
「!」
「トラブルを解消し治安を改善するのは…巡り巡ってライの幸福に繋がるし、協力する事自体に異論はない。だが、私だけ協力する形ではだめなのだろうか?ライは龍矢に目を付けられている可能性がある。わざわざ猛獣の群れの中に放り込むような愚かな真似はしたくない」
「そうネェ…あたしだって無駄にライを危険な目に遭わせたくないしフィンがそう言うのなら…」

「二人共、何言ってんだよ。人手足らねえのに贅沢言ってる場合か?」

 ヘブンの一件があったばかりだし警戒したくなるのもわかるが、だからといって戦力外通告をされるほど頼りないと思われるのは心外だった。

「ただの人間の俺が幻獣あんたたちの話に首を突っ込むのは…おかしいのかもしれねえけど、んなの今更だろ?どうして急に俺を除外しようとするんだ」
「ライ…私は」
「落ち着いて二人とも」

 ヒートアップしかけた俺達をグレイが冷静な声で遮ってくる。

「ライ、除け者にするみたいになっちゃってごめんなさい。あんたを信用してないわけじゃないノヨ?ただ、…周りに厄介な奴が多いから心配になっちゃって、フィンも他意はないと思うワ」
「他意はないって言われても…てか、厄介な奴ってあんたらも含めて言ってんのか」
「ふふふ」

 笑いつつグレイは否定はしなかった。
 (はいはい、あんたらに比べたら人間の俺なんてちっぽけな存在ですね…)

「あまりここで揉めてもいけないし、一旦ここは間をとって“ライは単独で行かせない"って事にしときまショ。あたしかフィンが付き添うならフィンも心配ないだろうし、ライも除け者にせずにすむワ」
「それなら」
「…わかったよ」
「ありがと、二人共。ちなみに“つじつま合わせ”はソルも協力してくれるから何かあったら連絡してみて。きっとフォローしてくれるはずヨ」
「へえ…ソルも…」

 スマホを立ち上げ電話帳を確認すると、店の電話番号と三人分の連絡先が登録されていた。ご丁寧な事にメッセージアプリには四人グループも作られている。通知が一件。開いてみるとソルのスタンプが一時間前についていたので「よろしく」と俺も送っといた。

 ぴこん

 すると秒で既読1になり「ゲームやろうぜ」とキャラクターのスタンプが送られてきた。

「はは、はっや」

 この四人グループを動かす意味は薄いと思うが…電話ですぐに連絡しあえるようになったのは大きい。

「じゃあ早速だけど、今から二人で一件目を調べに行ってくれる?問い合わせ内容は共有フォルダに入れてあるワ。タイトルはえっと…“社の神隠し”だったカシラ。人が消えるとかなんとか…多分悪戯だと思うんだけど、幻獣が絡んでないかだけ確認してきて」
「神隠し?!って、え、今から?」

 店を見回す。客がいないとはいえ今は営業時間内だ。店を放って出歩くのは抵抗がある。

「ふふ、この時間で誰もいないんだから今日はあたし一人で大丈夫。せっかくの人員を遊ばせててももったいないし、あんた達はそっちを進めてチョーダイ」
「マジですか…」
「大マジヨ~といっても“つじつま合わせ”は人間と幻獣の摩擦を無くすこと。終わった事の軌道修正役。だから幻獣が関係してなかったらスルーでいいし、関係してても深入りはしなくていいワ。安全第一でやって」
「わかった」
「くれぐれも町中での獣化は気を付けて。コワ~い大人に囲まれちゃうからネ?ふふふ」

 スナックおとぎを再開する際にいくつかの取り決めを狐ヶ崎と結んだが、その一つに「フィンとソルの獣化の禁止」があった。二人が好きな時に獣化できては危険すぎる為、狐ヶ崎のシマ内では禁止された。例外的にソルの生理的獣化は許されたが(眠気とかでなるやつ)、グレイは霧を、二人は獣化を禁止されて、かなり牙を抜かれた状態となる。

「うふふ、何度も確認させられたのにあたしまでくどく言っちゃってゴメンナサイネ~」
「問題ない。ライやグレイと過ごす為と思えばこの程度の不便、気にはならない」
「きゃ~アリガト~」

 グレイが投げキッスをしたのをフィンはさらりと避けて、扉の方に向かっていく。俺もエプロンをカウンターに置いてそれを追いかけた。

「二人共、気をつけていってくるのヨ~」

 グレイが微笑みと共に手を振ってくる。

 そんなわけで、俺たちは何故か新装オープン初日から“つじつま合わせ”に向かわされるのであった。
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