ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

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十話

新体制

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 それから鮫島達は二時間ほど飲んで帰っていった。

「鮫島さん優しそうな人だったな」
「ふふ、あのなりだから怖がられがちだけど、中身は人情系のイイ男なのヨ」
「そんな感じする」

 お見舞いの花は早速カウンターのある壁側に飾ることにした。花をもらうことなんて滅多にないが、嬉しいものだなと感動する。ちなみに鮫島達が滞在してる間も他の客は来なかったが、二人のおかげで店内のお通夜みたい空気は晴れていた。

 チリリーン

 椅子を拭いている所でフィンが見回りから戻ってきた。

「あ、フィンおかえり」
「ただいま」

 フィンはにこりと微笑えみ、颯爽と歩いてくる。まるでハリウッド俳優のような洗練された動きに見惚れているとあっという間にフィンが目の前に移動してきて、腕の中に抱かれた。ドキリと胸が高鳴る。

「ああ夢のようだ。ライが店にいる…」
「そりゃ…いるだろ、ここの従業員なんだし、んん、…おいっ」

 言葉の途中で唇を奪われぎょっとした。客はいないがグレイにはガッツリ見られてる。「アラアラ~」とからかうような声が聞こえた瞬間カアッと顔が熱くなった。

「ばか、グレイが見て…んぐ、こらっ!」

 懲りずにもう一度キスしようとしてきたので、顔面を掴み止めさせた。

「フィン!やめろ!それ以上やるなら今日は廊下で寝てもらうからな!」
「そ、そんな…」

 しょんぼりと肩を落とすフィンにやれやれとため息を吐く。
 (ったく…)
 退院してからずっとこの調子だ。最初は俺も一緒にいられる幸せを噛み締めていたが、こうも毎日“感動の再会"をやられては感動も薄れるというもの。

「ふふふ」

 酒を片手に眺めていたグレイがくすくすと笑った。

「あんた達が店でイチャコラしてると平和って感じで穏やかな気持ちになるワネ~」
「グレイまで…勘弁してくれよ」
「ふふ、いいじゃない減るもんじゃあるまいシ。それよりも、見回りはどうだった?今日パトロールの日だったんでデショ?」
「ああ、特に問題はなかった。ただ、明日から一週間は、毎日町内パトロールをやると言っていた」
「今日行ってきたのに一週間もやるノ?」
「イベントがあるとかで…より広範囲に、増員して行うとの事だ」
「イベント?」

 グレイがカレンダーを確認し目を見開く。

「あらあたしとした事が…開店準備ですっかり忘れてたワ。もうそんな時期が来たノネ」
「「そんな時期?」」

 俺とフィンが声を揃えて言うと、グレイは煙草に火をつけながら短く頷いた。

「この月の第三週の土日はネ。年に一度の“お祭り”があるのヨ」
「!」
「その名も鈴凪すずなぎ祭り。メイン会場の鈴凪神社から名付けられたお祭りでネ。結構歴史も古いのヨ。港近くにある神社から歓楽街までの広い範囲が歩行者天国になって、屋台もたくさん出るワ」
「歩行者天国って…かなり大がかりなんだな」
「そうヨー。屋台の多くはテキ屋…本業の人達がやってるけど、歓楽街の飲食店も参加できるようになってるから、その日は歓楽街全体がお祭り一色になるワ」
「飲食店って事はうちも屋台を出すのか?」
「いいえ、今年は当番じゃないからやらなくていいはずヨ。ただ…町内会議には出席する事になるでしょうネ。そっちは後で確認しておくワ。…って、そうだった、二人に大事な話があったのヨ」

 そういってグレイはカウンターから二つのスマホを取り出した。

「それは?」
「あんた達用のスマホよ。色々考えたのだけどこれからも一緒に店をやっていくのなら必要だと思ってサ。社用スマホとでも思って持っといて」
「社用スマホ…」
「ヘブン事件みたいな不測の事態はもちろん、業務連絡にも使えるし、何より“つじつま合わせ”の為にはスマホが必要不可欠だからサ」
「??…“つじつま合わせ”はあんたの個人的な副業だろ?俺らに関係あるのか?」
「それが大アリなのヨ」

 グレイがいつにも増して真剣な顔で切り出した。
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