79 / 159
十話
新体制
しおりを挟む
それから鮫島達は二時間ほど飲んで帰っていった。
「鮫島さん優しそうな人だったな」
「ふふ、あのなりだから怖がられがちだけど、中身は人情系のイイ男なのヨ」
「そんな感じする」
お見舞いの花は早速カウンターのある壁側に飾ることにした。花をもらうことなんて滅多にないが、嬉しいものだなと感動する。ちなみに鮫島達が滞在してる間も他の客は来なかったが、二人のおかげで店内のお通夜みたい空気は晴れていた。
チリリーン
椅子を拭いている所でフィンが見回りから戻ってきた。
「あ、フィンおかえり」
「ただいま」
フィンはにこりと微笑えみ、颯爽と歩いてくる。まるでハリウッド俳優のような洗練された動きに見惚れているとあっという間にフィンが目の前に移動してきて、腕の中に抱かれた。ドキリと胸が高鳴る。
「ああ夢のようだ。ライが店にいる…」
「そりゃ…いるだろ、ここの従業員なんだし、んん、…おいっ」
言葉の途中で唇を奪われぎょっとした。客はいないがグレイにはガッツリ見られてる。「アラアラ~」とからかうような声が聞こえた瞬間カアッと顔が熱くなった。
「ばか、グレイが見て…んぐ、こらっ!」
懲りずにもう一度キスしようとしてきたので、顔面を掴み止めさせた。
「フィン!やめろ!それ以上やるなら今日は廊下で寝てもらうからな!」
「そ、そんな…」
しょんぼりと肩を落とすフィンにやれやれとため息を吐く。
(ったく…)
退院してからずっとこの調子だ。最初は俺も一緒にいられる幸せを噛み締めていたが、こうも毎日“感動の再会"をやられては感動も薄れるというもの。
「ふふふ」
酒を片手に眺めていたグレイがくすくすと笑った。
「あんた達が店でイチャコラしてると平和って感じで穏やかな気持ちになるワネ~」
「グレイまで…勘弁してくれよ」
「ふふ、いいじゃない減るもんじゃあるまいシ。それよりも、見回りはどうだった?今日パトロールの日だったんでデショ?」
「ああ、特に問題はなかった。ただ、明日から一週間は、毎日町内パトロールをやると言っていた」
「今日行ってきたのに一週間もやるノ?」
「イベントがあるとかで…より広範囲に、増員して行うとの事だ」
「イベント?」
グレイがカレンダーを確認し目を見開く。
「あらあたしとした事が…開店準備ですっかり忘れてたワ。もうそんな時期が来たノネ」
「「そんな時期?」」
俺とフィンが声を揃えて言うと、グレイは煙草に火をつけながら短く頷いた。
「この月の第三週の土日はネ。年に一度の“お祭り”があるのヨ」
「!」
「その名も鈴凪祭り。メイン会場の鈴凪神社から名付けられたお祭りでネ。結構歴史も古いのヨ。港近くにある神社から歓楽街までの広い範囲が歩行者天国になって、屋台もたくさん出るワ」
「歩行者天国って…かなり大がかりなんだな」
「そうヨー。屋台の多くはテキ屋…本業の人達がやってるけど、歓楽街の飲食店も参加できるようになってるから、その日は歓楽街全体がお祭り一色になるワ」
「飲食店って事はうちも屋台を出すのか?」
「いいえ、今年は当番じゃないからやらなくていいはずヨ。ただ…町内会議には出席する事になるでしょうネ。そっちは後で確認しておくワ。…って、そうだった、二人に大事な話があったのヨ」
そういってグレイはカウンターから二つのスマホを取り出した。
「それは?」
「あんた達用のスマホよ。色々考えたのだけどこれからも一緒に店をやっていくのなら必要だと思ってサ。社用スマホとでも思って持っといて」
「社用スマホ…」
「ヘブン事件みたいな不測の事態はもちろん、業務連絡にも使えるし、何より“つじつま合わせ”の為にはスマホが必要不可欠だからサ」
「??…“つじつま合わせ”はあんたの個人的な副業だろ?俺らに関係あるのか?」
「それが大アリなのヨ」
グレイがいつにも増して真剣な顔で切り出した。
「鮫島さん優しそうな人だったな」
「ふふ、あのなりだから怖がられがちだけど、中身は人情系のイイ男なのヨ」
「そんな感じする」
お見舞いの花は早速カウンターのある壁側に飾ることにした。花をもらうことなんて滅多にないが、嬉しいものだなと感動する。ちなみに鮫島達が滞在してる間も他の客は来なかったが、二人のおかげで店内のお通夜みたい空気は晴れていた。
チリリーン
椅子を拭いている所でフィンが見回りから戻ってきた。
「あ、フィンおかえり」
「ただいま」
フィンはにこりと微笑えみ、颯爽と歩いてくる。まるでハリウッド俳優のような洗練された動きに見惚れているとあっという間にフィンが目の前に移動してきて、腕の中に抱かれた。ドキリと胸が高鳴る。
「ああ夢のようだ。ライが店にいる…」
「そりゃ…いるだろ、ここの従業員なんだし、んん、…おいっ」
言葉の途中で唇を奪われぎょっとした。客はいないがグレイにはガッツリ見られてる。「アラアラ~」とからかうような声が聞こえた瞬間カアッと顔が熱くなった。
「ばか、グレイが見て…んぐ、こらっ!」
懲りずにもう一度キスしようとしてきたので、顔面を掴み止めさせた。
「フィン!やめろ!それ以上やるなら今日は廊下で寝てもらうからな!」
「そ、そんな…」
しょんぼりと肩を落とすフィンにやれやれとため息を吐く。
(ったく…)
退院してからずっとこの調子だ。最初は俺も一緒にいられる幸せを噛み締めていたが、こうも毎日“感動の再会"をやられては感動も薄れるというもの。
「ふふふ」
酒を片手に眺めていたグレイがくすくすと笑った。
「あんた達が店でイチャコラしてると平和って感じで穏やかな気持ちになるワネ~」
「グレイまで…勘弁してくれよ」
「ふふ、いいじゃない減るもんじゃあるまいシ。それよりも、見回りはどうだった?今日パトロールの日だったんでデショ?」
「ああ、特に問題はなかった。ただ、明日から一週間は、毎日町内パトロールをやると言っていた」
「今日行ってきたのに一週間もやるノ?」
「イベントがあるとかで…より広範囲に、増員して行うとの事だ」
「イベント?」
グレイがカレンダーを確認し目を見開く。
「あらあたしとした事が…開店準備ですっかり忘れてたワ。もうそんな時期が来たノネ」
「「そんな時期?」」
俺とフィンが声を揃えて言うと、グレイは煙草に火をつけながら短く頷いた。
「この月の第三週の土日はネ。年に一度の“お祭り”があるのヨ」
「!」
「その名も鈴凪祭り。メイン会場の鈴凪神社から名付けられたお祭りでネ。結構歴史も古いのヨ。港近くにある神社から歓楽街までの広い範囲が歩行者天国になって、屋台もたくさん出るワ」
「歩行者天国って…かなり大がかりなんだな」
「そうヨー。屋台の多くはテキ屋…本業の人達がやってるけど、歓楽街の飲食店も参加できるようになってるから、その日は歓楽街全体がお祭り一色になるワ」
「飲食店って事はうちも屋台を出すのか?」
「いいえ、今年は当番じゃないからやらなくていいはずヨ。ただ…町内会議には出席する事になるでしょうネ。そっちは後で確認しておくワ。…って、そうだった、二人に大事な話があったのヨ」
そういってグレイはカウンターから二つのスマホを取り出した。
「それは?」
「あんた達用のスマホよ。色々考えたのだけどこれからも一緒に店をやっていくのなら必要だと思ってサ。社用スマホとでも思って持っといて」
「社用スマホ…」
「ヘブン事件みたいな不測の事態はもちろん、業務連絡にも使えるし、何より“つじつま合わせ”の為にはスマホが必要不可欠だからサ」
「??…“つじつま合わせ”はあんたの個人的な副業だろ?俺らに関係あるのか?」
「それが大アリなのヨ」
グレイがいつにも増して真剣な顔で切り出した。
10
あなたにおすすめの小説
陥落 ー おじさま達に病愛されて ー
ななな
BL
眉目秀麗、才ある青年が二人のおじさま達から変態的かつ病的に愛されるお話。全九話。
国一番の璃伴士(将棋士)であるリンユゥは、義父に温かい愛情を注がれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日、一人の紳士とリンユゥは対局することになり…。
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる
桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」
首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。
レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。
ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。
逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。
マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。
そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。
近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる