短編

リナ

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不死鳥シリーズ

「出会う順番が違っていれば」バレンタイン グレイ編🚬

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 ※「出会う順番が違っていれば」シリーズ🚬
 ※本編→バレンタイン(今回)→おまけ
 ※ソルはまだ現れておらず二人暮らしの時
 ※まだライさんは睡眠障害を抱えてる
 ※前後に致しまくってるのに本文では致さないから★なし(グレイ編はいつもこう)




 グレイに拾われて、やっと店の業務や幻獣の世界に慣れてきた頃、あのイベントがやってきた。

「ライ、明日は何の日でショウー?」

 起き抜けにそんな質問をされ、俺は半目のまま部屋のカレンダーに目をやる。

「二月の…十四日…(そのまま読む)」
「せいかい♪」

 ちゅ、と褒めるようにキスされた。その甘やかすだけの口付けに一瞬ドキリとするがすぐに我に返る。ここは自室じゃなく、俺もグレイも裸で、しかも同じベッドに仲良く寝転がっている状況。

 (なんでこうなる…)

 俺はぐぬぬ…と頭を抱えた。

 グレイのベッドで朝を迎えるのはこれで何度目か。いや、何連続目なのか。数えたくないし考えたくもない。グレイと寝てしまった初日から俺はずっと意味が分からなかった。

「はぁああ…」

 俺が布団の中で蹲っていると、グレイはハグしたりキスしたり好き勝手してくる。

「ん、おい、朝からやめろって…」

 あんだけ寝る前にやったのにまだする気か。不満を込めて睨みつけるとグレイはくすりと笑って体を離した。

「ふふ、しつこくしてごめんなさい。そこまでする気はないから安心して。それより、ライ、シャワーはどうする?一人で入れそう?」
「入れる。…けど、もう少し目を覚ましたいから、先入ってくれ」
「ふふ、わかったわ。じゃあお先に」
「んー…」

 グレイが出て行った後、俺はぼーっと今の状況を整理した。突然仕事を失って、住んでた家も追い出されて、途方に暮れていた所をグレイに拾われた。「俺の顔がタイプだから」というあけっぴろげすぎる理由によって採用された今の仕事はなんだかんだやりがいもあるし今までにない学びもあるから充実している。問題は私生活、いや、性生活の方だ…。
 (なんで俺、グレイと寝てんだろう…)
 初日は晩酌に誘われて、何も疑いもしなかった俺は普通に酔い潰れるまで飲んで、気付いたらベッドの中にいた。飲みすぎて(?)記憶がなくなっているのはまだしも、俺とグレイが裸で寝ていた事が意味不明すぎて…
 (それ以来ほぼ毎日してるんだもんな…)
 マジでなんで。どうして。

「はあ…」

 唯一ありがたいのは、限界までグレイと抱き合って寝付くおかげで、ほとんど真人の事を思い出さずに済んでいる事だ。まだ真人の事は全然心の整理ができていないし、考えるだけで悲しくて虚しい気持ちになるが、俺のメンタルが落ちきる前にグレイに抱かれ、どろっどろに心身を溶かされるので、案外店に来る前よりも体調は回復していた。困らされるだけ、ではない状況に俺は更に頭を抱えるのだった。


 ***


 その日の営業も終わり、閉め作業をしていると、ほろ酔いのグレイが歩み寄ってきた。

「うふふ、ライ、用意してくれた~?」
「ん? 用意って何の話だ」

 全くもって心当たりのない“用意”に首を傾げれば、ガガ―ンとグレイはショックを受けた風に後退る。

「ええーん、ウソ~!朝話したじゃないノ~!明日は何日~って、あんたも二月十四日バレンタインだって答えたジャナイ~~!」
「ああ、あれそういう意味だったのか」
「バレンタインの催促以外に何があるのヨ!ライのにぶちん!」
「にぶちん…期待させちゃったなら申し訳ねえけど、あんた今日、客からたくさんもらってたし俺のなんて要らないだろ?」

 まだバレンタイン前日なのに、グレイは常連客から食べきれない量のチョコや酒をもらっていた。グレイも軽いお返し程度のプチチョコは渡していたが、客が渡してくる量に比べたら可愛いもので、すでに冷蔵庫はチョコでパンパンになっていた。前日でこれなのだから、バレンタイン当日はもっとすごいだろう。

「あんた甘党じゃないし、これでも食いきれねえんじゃねえの」

 俺がそう言って冷蔵庫を閉じると、珍しくグレイはちょっと表情を曇らせて寂しそうな顔をする。だが、すぐに何事もなかったかのように笑みを浮かべて

「ふふ、それもそう…ネ」

 残りの仕事を片付けに行った。



 それから三十分後。俺は仕事を終えて、シャワーも浴びて…そして廊下に出て驚く。

「あれ」

 いつもびっくりするほどタイミングよく現れるグレイが出てこないのだ。おかげでグレイの部屋に吸い込まれる事なく自室に入れたわけだが…今までにないイレギュラーな状況に逆にソワソワしてくる。こんなの、スナックおとぎに来た初週以来だろうか。違和感はあったがせっかく自室でぐっすりと眠れる機会がきたのだから乗らない手はない。俺はすぐにベッドに横になり一息つく。

「はあ~」

 一人だからのびのびと腕が伸ばせるし、足も好きに動かせる。気遣わずに寝返りが打てるのもありがたい。
 (嬉しい…はずなのに、)
 全然寝付けなかった。一人の部屋は静かすぎて落ち着かないし、ぐるぐると無駄に思考が巡ってしまう。思い浮かぶのが楽しい思い出ならいいのだが、浮かぶのは、真人や後輩とのトラウマのような日々で。

「………っ」

 布団にくるまり、必死に考えないようにするが、一度その波がくるともうダメだった。後輩の顔や真人の後ろ姿が頭に張り付いて離れない。

 “雷くん”
 “せんぱい”

 怨嗟の声のように響き、ガンガンと頭を叩かれるような頭痛がしてくる。吐き気もしてきた。

「っ…、」

 眠っていないのに悪夢の中にいるみたいだ。ガタガタと震える体はどれだけ布団で丸くなっても落ち着く事はない。次第に本当に気持ち悪くなってきて、俺はトイレへと駆け込んだ。




「ゲホッ、ゲホ…」
「え、あら…?ちょっと大丈夫?」

 トイレに来たグレイが俺に気付き、背中をさすってくれた。

「熱とか胃腸炎では、なさそうね。これで口ゆすげる? 飲める方の水は今持ってくるから少し待ってて。あ、寒いと思うからこれ羽織ってちょうだい」

 テキパキと面倒を見てくれるグレイに申し訳なく思いながらも、動く気力がないため大人しく従っておく。俺が少し落ち着いてくると、グレイは部屋に運んでくれた。グレイの部屋ではなく、俺の部屋に。それだけでも労わる気持ちが伝わってくるが、


「ねえ、一体何があったの?」


 グレイはベッドの脇に腰掛けて心配するように見つめてくる。その真剣な眼差しにつられて、俺はここまで黙っていた真人との過去、スナックおとぎに来る事になった流れを吐露した。グレイは終始静かに聞いていたが、全て聞き終えた途端、綺麗に整えられた眉をすっと顰めた。

「大切な人を失うだけでも辛いのに、奪われて、裏切られるなんて…なんて酷な事をするの、そのクズ男さんは」
「…」
「でも一番の悲劇はあんたが彼を憎めずにいる事ね。ライ、あんたはもっとクールな子だと思ってたのに…優しすぎるわ。それじゃ自分の愛情で潰されてしまう。終わった恋愛への愛情は手放さないと」
「頭では、わかってるんだ。でも、難しくて…」

 俺は人を好きになる事が苦手だし、一度好きになった人間を嫌いになるのはもっと苦手だと真人と別れてから気付いた。がんじがらめになって苦しむ俺を見てグレイは眉尻を下げた。

「ライがこんなに大変な思いをしている時に、しょうもない感情を抱いていた自分が恥ずかしいわ」
「しょうもない感情?」
「…いいえ、本当にしょうもない事だから気にしないで。……本命からもらえないのはいつものことだしね」

 最後の言葉は囁きよりも小さい声だったのでよく聞こえなかった。俺が首を傾げていると、グレイは布団の外に置かれた俺の手をぎゅっと握ってくる。

 ドキリ

 今のグレイはメイクも落とされて、髪を後ろで結った状態だ。ぱっと見はただの男なので(顔が整い過ぎてるけど)無性にドキドキしてしまう。

「それよりもっとライの為になる事を話しましょ」
「俺の為って…」
「ライ。バレンタインはね、この国では女性から男性にチョコを贈るイベントになっているけれど、本来は家族・恋人といった親しい人達に愛や感謝を伝えるイベントなのよ」
「愛や感謝を伝えるイベント…」
「そう、こうやってね」
「!」

 どこからともなく、グレイは手のひらより少し大きい位の黒い紙箱を取り出して、俺の胸元に置いてくる。紫のリボンが巻かれているのがグレイらしい。

「これ、」
「ライにプレゼントよ。ちょうどバレンタイン当日になった事だし開けてみて」

 時計を見れば二十四時ちょうどを指していた。俺は上体を起こし、ドキドキしながらプレゼントを開けた。そこにはなんと…有名海外ブランドの高級ベルトが入っていた。

「急に痩せたせいで今までのズボンやベルトが使えなくなったって愚痴ってたでしょ?万が一ズボンが脱げて、こんなに細い腰がお客様に見られちゃったら大変よ」
「流石にそんな事にはならねえ、けど…」

 寝間着の上から当ててみると、今の腰の太さにピッタリすぎてちょっと引いた。

「…毎晩抱いてるだけはあるでしょ?」

 我が物顔で俺の腰を抱いてくる。

「ちゃんとサイズが戻っても使えるようにしてあるから安心して増量してちょうだい」
「…ありがとう」

 腰を抱かれたまま耳元で優しく囁かれると、心臓が破裂しそうだ。距離も近いし、この状態で顔を上げれば至近距離で見つめ合う事になる。そんなの耐えられそうにない。俺が必死に俯いていると、グレイの指先が顎を掴んでくる。

「ライ、」

 名前を呼ばれながら顎を上げられ、グレイと視線がぶつかった。ドキリと更に心臓が跳ねて、気付けばその唇と重なっていた。一度触れてしまえば恐ろしい程歯止めがきかなくなり、俺はあっという間にベッドに押し倒された。

「…また、こうなるのか」

 キスの合間にそう言うと、グレイは鎖骨辺りに吸いつきながら囁く。

「怖い夢を見るよりはいいでしょ?」

 それもそうだなと、今日ばかりは思うのだった。






 おわり🚬












 🦊<なんだかんだ店長さんが攻めるのも見慣れてきちゃいましたね~
 🐺<ほんとにな
 🦊<どうします?本編でもこっち側にきたら
 🐺<ないない。つーかあったら困る
 🐥<グレイはこのルートだけ別人のように私利私欲に走るのが興味深いな
 🦊<本当はこうしたいって思ってるんですかね~抑圧?我慢?理性?はー大人ってすごいな~
 🐺<ほんとな~
 🐥<…お前は成人しているだろう、駄犬

 🦊<あ、ちなみに二日に分けて二本ずつアップされますので!次は駄犬さんのターンですー!

 🐺<噛み殺されてえのか?
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