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不死鳥シリーズ
今日の晩御飯(フィン×ライ)
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※六話まで読了推奨
※六話~七話の間の出来事(ソルがライを無視していて、かつフィンともバチバチの頃)
※四人でスーパーにいってご飯を食べるだけ
※本編でほとんど出てこないけどフィンは料理が苦手
※普通に投稿し忘れていました(半年越しのアップ)
「グレイ、晩御飯何が食いたい?」
起きてからずっと良いメニューが思いつかなかった俺は、開店準備をしてるグレイに尋ねてみた。
「オシャレな洋食系がいいワ。あと、お酒が合うおつまみもあったら最高♪」
「了解、洋食に一票、と。おつまみならアヒージョとかいいかもな」
「きゃーアヒージョ大好きヨ~!!って…ちょっと待って、一票ってことはあたし以外にも聞いて回るノ?」
「うん、毎日メニュー考えんの面倒だしこの際だから全員の希望メニューを順番に作ろうかなと。洋食がもう一票はいれば決定になるけど、冷蔵庫の中どんな感じだったっけ…」
パカッ
冷蔵庫を確認すると笑えるぐらい何もなかった。横で一緒に覗き込んでいたグレイも半目になってる。
「なんてこと…一昨日買い出しいったのに…育ち盛りの高校生でもいるのカシラ…」
「まあ、男四人いたら仕方ねえな」
新しく同居人としてソルが追加されたが細いわり(俺よりは肉ついてるけど)に食うのだ。特に甘い物と麺類がえげつない減り方をしてる。
ぺたぺた
噂をすればなんとやら、今起きたばかりという顔のソルが廊下から顔を出した。軽食でもとろうと思ったのだろう。冷蔵庫の前に俺とグレイが立っているのを見てげげっと嫌そうな顔をする。そのまま回れ右をして廊下を引き返しそうとしたので慌ててその背中に声をかけた。
「ソル!何か食いたいもんあるか?」
俺の質問に、チラリと振り返ったソルは眉をひそめつつ「何言ってんだ」って顔をする。
「ちょっとメニューで困っててさ。希望があれば今日とか明日にでも作るから言ってくれ」
「…麻婆豆腐かビビンバ」
「おっけ、了解」
不満げな顔をしてるわりにちゃんと食べたいものを返してくる姿に内心笑ってしまう。
チリリーン
「ただいま帰った…おや、なんだ、皆揃っているのか」
店の扉からフィンが現れた。グレイと俺、ソルが揃っている事に目を丸くしている。おかえり、と返してからフィンの荷物を受け取った(昨晩フィンとソルがやりあった時に破壊された備品の替えである)。それをカウンターに置いてからフィンの方に向き直る。
「フィン、店の鍵かしてくれ」
「? どうぞ」
フィンは言われるまま鍵を掌にのせて差し出してくる。俺の指が鍵を掴もうとした瞬間、ぎゅっと掌が閉じた。握手というか手を繋いでるみたいになって「??!」と顔を上げれば
「買い出しか?それなら私と行こう」
甘い笑みで誘われた。どきりと胸が高鳴るが「ラブラブネ~」と囃し立てる声にすぐに我に返る。ぶんぶんと首を振って拒否した。
「いや、あんた今行ってきたばかりだし…一人で行けるよ」
そう言って手を引こうとするがフィンの手は固く握ったまま動かなかった。困り果ててグレイの方を見ればくすりと悪戯っぽく笑われる。
「ふふ、じゃあ、ちょうどいいし、皆で行きまショ」
「!」
「開店準備も早めに終わった事だしお散歩がてら…ネ?ソルも軽く食べられるもの買いたいんジャナイ?」
「チッ」
グレイの確信をもった問いかけにソルは舌打ちで返した。それから廊下へと歩いていく。パンツ一丁だったので着替えに行ったのだろう。グレイが「五分待って来なかったら置いてくからネー」と念押ししてから俺達の方に向き直った。
「さあ、二人も準備してチョーダイ。暇って言っても一時間ちょっとなんだカラ。ささっと向かわないとネ」
「ふむ、私はこのまま出られるぞ」
「俺も…これ外せば行ける」
黒エプロンを指さして言えば、フィンとグレイが同時に首を振ってきた。
「え~つけてたらいいジャナイ~」
「そうだぞ、ライ。すごく似合ってるのに」
「いやいや…」
一人で行った時なら「急いでたのかな」と思ってもらえそうだが、俺以外の面子が誰もつけてない状態でエプロン姿で並ぶのは恥ずかしすぎる。
(というかそろそろ手を離してくれないかな…)
訴えるようにフィンに視線を送ると、蕩けるような笑みを向けられた。
「今日もライは美しいな」
「…ど、うも」
あまりにも直球すぎる言葉に赤面したまま固まる。カウンター横で煙草をふかしていたグレイが「ご馳走サマ」と笑った。やっと手を離してもらった所でソルが顔を出す。今度は服を着ていた。
「じゃ、行きましょうカ」
***
十五分程歩いて大きめのスーパーに着いた。安いし品揃えも多い為週一ぐらいで来るスーパーである。夕方なので主婦やシニア層以外に仕事帰りの社会人もいて結構にぎわっていた。そんな中この四人で行動するとなかなかに目立つ。
ざわざわ
「うふふ、おつまみおつまみ~❤あと、フルーツとお酒もネ!」
「辛ラーメンと炭酸飲料」
「ライ、今日は卵と豆腐が安そうだぞ」
周囲の視線を集めるイケメン達が各々カゴに入れていき、いつの間にかお菓子やらおつまみで積み上がっていた。
「ちょっ、あんたら…流石に多すぎる。これだけで予算が吹っ飛んでもやし生活になっちまうって」
「エー」
「チッ」
「一つずつ残していいから、あとは返してこい」
そういってソルにお菓子を突っ返す。
「んでだよッ!」
「甘い物なら俺が作ってやるから(その方が安いし)」
「!」
ソルは渋々といった感じで返しに行った。同じ台詞をグレイにも言うと「仕方ないワネエ」とおつまみを戻しに行く。残ったのは俺とフィンの二人。なんとなく見つめ合えば、柔らかい笑みを向けられ、くすぐったい気持ちになる。
「フィンは何も入れてないんだな」
「私はライが作るものなら何でもいいからな」
「安上がりで大変助かります」
わざと敬語で返せばフィンは「ライの料理は安くないぞ」と笑みと共に返してきた。
「そういや、フィンは食いたいものあるか?晩御飯のメニューで悩んでてさ」
「ふむ」
考え込む仕草をするフィン。背景がスーパーの菓子の棚なのに映画のワンシーンのようにキマって見えるなんて末恐ろしい。
「…そうだな、私は」
「ライ~!豆腐だけじゃ何も作れないデショ~時間もないしさっさと他の食材買うわヨ~」
「「!」」
グレイの声が乱入してきて会話が中断される。フィンは言いかけていたのを止めて「この話はまた後で」と切り上げるのだった。
***
時間もなかったし使う食材も全て手に入ったので今日は麻婆豆腐になった。フライパンに大盛になるぐらい作ったのに一瞬で半分が消えて笑いが込み上げてくる。作った料理を食べてもらえるのは純粋に作り手として嬉しいものだ。
「良い食いっぷりだな」
ソルが口いっぱいに頬張りながら「文句あっか」と睨みつけてきた。なかなか鋭い睨みだったが無視されるよりはいい。このまま意思疎通が取れるようになったら助かるなとフライパンを洗いながら考えてると
「おい駄犬、今、私の足を踏んだだろう」
「アア?誰がてめえの汚い足なんか触るか」
「お前よりはよっぽど綺麗にしている」
二人が言い合い始めた。またか、と止めに入るタイミングに迷っているとグレイがノーモーションで霧を出した。昨日お気に入りの皿を割られたから未然に防ぎたかったのだろう。
(にしても…)
ぐうぐう
満腹になって眠りについたソルは店の床だというのに気持ちよさそうにしていた。
「なんか起こすの可哀想だな」
「仕事が立て込んでたみたいだし睡眠不足なのネ。運んじゃうワ」
ひょいっとソルの体を軽々と持ち上げて肩に背負うグレイ。流石の腕力に苦笑しているとグレイはウィンクと共に廊下へと消えた。
「…ご馳走様でした」
フィンが手を合わせて言う。こっちは無事だったらしく、麻婆豆腐を綺麗に平らげていた。
「お粗末様」
俺が横から皿を回収しようとしたら手首を掴まれた。
「フィン?」
「さっきの話の続きだが」
「? あ、ああ、」
晩御飯の話かとフィンに目を向けると、フィンは笑みを浮かべて立ち上がり
ちゅ
キスされた。
「私はライがいい」
「…っ!!」
今日一顔が赤くなってる気がする。周りに誰もいなくてよかったと心の底から思った。俺は俯きつつも「からかうな」と小さく言い返した。
「からかったつもりはないが」
「余計悪いわ…、料理名を言え料理名を…」
「ふふ、では、パエリアで」
最初からそっちを言ってくれよと睨みつけてからドキドキとうるさい心臓の為にも深呼吸する。
「私達のは聞いてくれているみたいだが、ライは自分の為に作らないのか?」
「んー…まあ、俺は何でも食えるしな」
「何でも食べられるのと何が食べたいかは別の話だ」
「そう言われても」
誰かにとっての食べたいものがあるのならそれで十分だ。フィンは少しだけ眉をひそめて、それから困ったように笑う。
「ライらしいが、私だって、ライが食べたいものを一緒に食べたいのだぞ」
「…」
「できるなら作ってやりたいし」
「作っ…あんた全部丸焦げにしちゃうだろ?できるのか」
「火の扱いは得意なつもり…なのだが…」
しゅんと肩を落とすフィン。ちょっと可愛く見えて、その首に腕を回して自分から口付けた。
「!」
フィンが驚くのに頷いて見せてから
「じゃあ、今度一緒にチャーハン作ってみようぜ」
「!」
「失敗しても残すなよ」
「もちろんだ。それで死んだとしても本望だ」
「……死ぬって、自分の料理の腕をどれだけ信頼してねえんだ。てかあんたは死んでも生き返るだろ。一緒に食う俺だけが殺されるだけじゃねえか」
「おや、そうだったな」
おどけたようにフィンが呟いて、そして…どちらともなく笑うのだった。
後日、一緒に夜食でチャーハンを作る事があったが、予想通り丸焦げになった。
流石に美味しいとは口が裂けても言えなかったが、心はとても満たされたので「また作ろう」と提案するとフィンはキョトンと驚いていた。
それがまた面白くて、愛おしかった。
end
※六話~七話の間の出来事(ソルがライを無視していて、かつフィンともバチバチの頃)
※四人でスーパーにいってご飯を食べるだけ
※本編でほとんど出てこないけどフィンは料理が苦手
※普通に投稿し忘れていました(半年越しのアップ)
「グレイ、晩御飯何が食いたい?」
起きてからずっと良いメニューが思いつかなかった俺は、開店準備をしてるグレイに尋ねてみた。
「オシャレな洋食系がいいワ。あと、お酒が合うおつまみもあったら最高♪」
「了解、洋食に一票、と。おつまみならアヒージョとかいいかもな」
「きゃーアヒージョ大好きヨ~!!って…ちょっと待って、一票ってことはあたし以外にも聞いて回るノ?」
「うん、毎日メニュー考えんの面倒だしこの際だから全員の希望メニューを順番に作ろうかなと。洋食がもう一票はいれば決定になるけど、冷蔵庫の中どんな感じだったっけ…」
パカッ
冷蔵庫を確認すると笑えるぐらい何もなかった。横で一緒に覗き込んでいたグレイも半目になってる。
「なんてこと…一昨日買い出しいったのに…育ち盛りの高校生でもいるのカシラ…」
「まあ、男四人いたら仕方ねえな」
新しく同居人としてソルが追加されたが細いわり(俺よりは肉ついてるけど)に食うのだ。特に甘い物と麺類がえげつない減り方をしてる。
ぺたぺた
噂をすればなんとやら、今起きたばかりという顔のソルが廊下から顔を出した。軽食でもとろうと思ったのだろう。冷蔵庫の前に俺とグレイが立っているのを見てげげっと嫌そうな顔をする。そのまま回れ右をして廊下を引き返しそうとしたので慌ててその背中に声をかけた。
「ソル!何か食いたいもんあるか?」
俺の質問に、チラリと振り返ったソルは眉をひそめつつ「何言ってんだ」って顔をする。
「ちょっとメニューで困っててさ。希望があれば今日とか明日にでも作るから言ってくれ」
「…麻婆豆腐かビビンバ」
「おっけ、了解」
不満げな顔をしてるわりにちゃんと食べたいものを返してくる姿に内心笑ってしまう。
チリリーン
「ただいま帰った…おや、なんだ、皆揃っているのか」
店の扉からフィンが現れた。グレイと俺、ソルが揃っている事に目を丸くしている。おかえり、と返してからフィンの荷物を受け取った(昨晩フィンとソルがやりあった時に破壊された備品の替えである)。それをカウンターに置いてからフィンの方に向き直る。
「フィン、店の鍵かしてくれ」
「? どうぞ」
フィンは言われるまま鍵を掌にのせて差し出してくる。俺の指が鍵を掴もうとした瞬間、ぎゅっと掌が閉じた。握手というか手を繋いでるみたいになって「??!」と顔を上げれば
「買い出しか?それなら私と行こう」
甘い笑みで誘われた。どきりと胸が高鳴るが「ラブラブネ~」と囃し立てる声にすぐに我に返る。ぶんぶんと首を振って拒否した。
「いや、あんた今行ってきたばかりだし…一人で行けるよ」
そう言って手を引こうとするがフィンの手は固く握ったまま動かなかった。困り果ててグレイの方を見ればくすりと悪戯っぽく笑われる。
「ふふ、じゃあ、ちょうどいいし、皆で行きまショ」
「!」
「開店準備も早めに終わった事だしお散歩がてら…ネ?ソルも軽く食べられるもの買いたいんジャナイ?」
「チッ」
グレイの確信をもった問いかけにソルは舌打ちで返した。それから廊下へと歩いていく。パンツ一丁だったので着替えに行ったのだろう。グレイが「五分待って来なかったら置いてくからネー」と念押ししてから俺達の方に向き直った。
「さあ、二人も準備してチョーダイ。暇って言っても一時間ちょっとなんだカラ。ささっと向かわないとネ」
「ふむ、私はこのまま出られるぞ」
「俺も…これ外せば行ける」
黒エプロンを指さして言えば、フィンとグレイが同時に首を振ってきた。
「え~つけてたらいいジャナイ~」
「そうだぞ、ライ。すごく似合ってるのに」
「いやいや…」
一人で行った時なら「急いでたのかな」と思ってもらえそうだが、俺以外の面子が誰もつけてない状態でエプロン姿で並ぶのは恥ずかしすぎる。
(というかそろそろ手を離してくれないかな…)
訴えるようにフィンに視線を送ると、蕩けるような笑みを向けられた。
「今日もライは美しいな」
「…ど、うも」
あまりにも直球すぎる言葉に赤面したまま固まる。カウンター横で煙草をふかしていたグレイが「ご馳走サマ」と笑った。やっと手を離してもらった所でソルが顔を出す。今度は服を着ていた。
「じゃ、行きましょうカ」
***
十五分程歩いて大きめのスーパーに着いた。安いし品揃えも多い為週一ぐらいで来るスーパーである。夕方なので主婦やシニア層以外に仕事帰りの社会人もいて結構にぎわっていた。そんな中この四人で行動するとなかなかに目立つ。
ざわざわ
「うふふ、おつまみおつまみ~❤あと、フルーツとお酒もネ!」
「辛ラーメンと炭酸飲料」
「ライ、今日は卵と豆腐が安そうだぞ」
周囲の視線を集めるイケメン達が各々カゴに入れていき、いつの間にかお菓子やらおつまみで積み上がっていた。
「ちょっ、あんたら…流石に多すぎる。これだけで予算が吹っ飛んでもやし生活になっちまうって」
「エー」
「チッ」
「一つずつ残していいから、あとは返してこい」
そういってソルにお菓子を突っ返す。
「んでだよッ!」
「甘い物なら俺が作ってやるから(その方が安いし)」
「!」
ソルは渋々といった感じで返しに行った。同じ台詞をグレイにも言うと「仕方ないワネエ」とおつまみを戻しに行く。残ったのは俺とフィンの二人。なんとなく見つめ合えば、柔らかい笑みを向けられ、くすぐったい気持ちになる。
「フィンは何も入れてないんだな」
「私はライが作るものなら何でもいいからな」
「安上がりで大変助かります」
わざと敬語で返せばフィンは「ライの料理は安くないぞ」と笑みと共に返してきた。
「そういや、フィンは食いたいものあるか?晩御飯のメニューで悩んでてさ」
「ふむ」
考え込む仕草をするフィン。背景がスーパーの菓子の棚なのに映画のワンシーンのようにキマって見えるなんて末恐ろしい。
「…そうだな、私は」
「ライ~!豆腐だけじゃ何も作れないデショ~時間もないしさっさと他の食材買うわヨ~」
「「!」」
グレイの声が乱入してきて会話が中断される。フィンは言いかけていたのを止めて「この話はまた後で」と切り上げるのだった。
***
時間もなかったし使う食材も全て手に入ったので今日は麻婆豆腐になった。フライパンに大盛になるぐらい作ったのに一瞬で半分が消えて笑いが込み上げてくる。作った料理を食べてもらえるのは純粋に作り手として嬉しいものだ。
「良い食いっぷりだな」
ソルが口いっぱいに頬張りながら「文句あっか」と睨みつけてきた。なかなか鋭い睨みだったが無視されるよりはいい。このまま意思疎通が取れるようになったら助かるなとフライパンを洗いながら考えてると
「おい駄犬、今、私の足を踏んだだろう」
「アア?誰がてめえの汚い足なんか触るか」
「お前よりはよっぽど綺麗にしている」
二人が言い合い始めた。またか、と止めに入るタイミングに迷っているとグレイがノーモーションで霧を出した。昨日お気に入りの皿を割られたから未然に防ぎたかったのだろう。
(にしても…)
ぐうぐう
満腹になって眠りについたソルは店の床だというのに気持ちよさそうにしていた。
「なんか起こすの可哀想だな」
「仕事が立て込んでたみたいだし睡眠不足なのネ。運んじゃうワ」
ひょいっとソルの体を軽々と持ち上げて肩に背負うグレイ。流石の腕力に苦笑しているとグレイはウィンクと共に廊下へと消えた。
「…ご馳走様でした」
フィンが手を合わせて言う。こっちは無事だったらしく、麻婆豆腐を綺麗に平らげていた。
「お粗末様」
俺が横から皿を回収しようとしたら手首を掴まれた。
「フィン?」
「さっきの話の続きだが」
「? あ、ああ、」
晩御飯の話かとフィンに目を向けると、フィンは笑みを浮かべて立ち上がり
ちゅ
キスされた。
「私はライがいい」
「…っ!!」
今日一顔が赤くなってる気がする。周りに誰もいなくてよかったと心の底から思った。俺は俯きつつも「からかうな」と小さく言い返した。
「からかったつもりはないが」
「余計悪いわ…、料理名を言え料理名を…」
「ふふ、では、パエリアで」
最初からそっちを言ってくれよと睨みつけてからドキドキとうるさい心臓の為にも深呼吸する。
「私達のは聞いてくれているみたいだが、ライは自分の為に作らないのか?」
「んー…まあ、俺は何でも食えるしな」
「何でも食べられるのと何が食べたいかは別の話だ」
「そう言われても」
誰かにとっての食べたいものがあるのならそれで十分だ。フィンは少しだけ眉をひそめて、それから困ったように笑う。
「ライらしいが、私だって、ライが食べたいものを一緒に食べたいのだぞ」
「…」
「できるなら作ってやりたいし」
「作っ…あんた全部丸焦げにしちゃうだろ?できるのか」
「火の扱いは得意なつもり…なのだが…」
しゅんと肩を落とすフィン。ちょっと可愛く見えて、その首に腕を回して自分から口付けた。
「!」
フィンが驚くのに頷いて見せてから
「じゃあ、今度一緒にチャーハン作ってみようぜ」
「!」
「失敗しても残すなよ」
「もちろんだ。それで死んだとしても本望だ」
「……死ぬって、自分の料理の腕をどれだけ信頼してねえんだ。てかあんたは死んでも生き返るだろ。一緒に食う俺だけが殺されるだけじゃねえか」
「おや、そうだったな」
おどけたようにフィンが呟いて、そして…どちらともなく笑うのだった。
後日、一緒に夜食でチャーハンを作る事があったが、予想通り丸焦げになった。
流石に美味しいとは口が裂けても言えなかったが、心はとても満たされたので「また作ろう」と提案するとフィンはキョトンと驚いていた。
それがまた面白くて、愛おしかった。
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