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一話
キモ男かよ(お呼びじゃないよ)
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もみっ
「?!」
前屈みになっていた腰、いや、尻を後ろから揉まれた気がする。自慢じゃないが僕のお尻は男の癖に筋肉がなく、全く固くないので、揉まれても「男だ!!ギャァー!!」とは叫ばれないはずだ。その心配はないが…
(え、痴漢…??)
驚きと共におずおずと振り向く。すでに犯人は通路から抜けて棚を右に曲がろうとしていたところだった。陰気そうな横顔が見える。眼鏡でニキビだらけの、独り言言ってる系の奴だ。マニメイトではよくいるが関わる事は無い。目が合うなんてことはもっての外…
ニヤッ
(いやキモチワルッ!!)
男にねっちょりと笑いかけられ鳥肌が立った。こんな気持ち悪い奴が結界内にいるなんて信じられない。僕は早足でレジに向かった。すると…キモ男もついてきて、あろうことかぴったりと真後ろにくっついてきた。いや近い近い。足跡のマークちゃんと見ろよ。僕とキモ男で一人分みたいな距離になってるじゃんか!
もぞもぞ
最悪なことにこの距離を維持したまま、ワンピースの後ろがひきつる感じがして嘘だろと思った。
(ひいいいよくわかんないけどなんかもぞもぞしてる…キッモ!!!)
素敵なBLと出会わせてくれる天国のような場所マニメイトでこんな不快な思いをするなんて今日の僕はなんてついてないんだろう。痴漢自体は何回か経験があるがマニメイトでは初めてだった。
(ああもう!早く順番来てー!)
「はっ、はあっ…はっ!も、う、来てない…か…?」
地獄のレジ待ちタイムを耐え、なんとかBLを手に入れた僕は駅へと向かう道を全力ダッシュしていた。奴のカゴは一つしか入ってなかったから追いかけようと思えば追いかけられる。変に絡まれる前に電車に乗って逃げてしまわないと。
「あ、信号赤…」
目の前の信号が不運にも赤になり、僕は仕方なく足を止めた。早く早くと焦って足踏みしてると
「おねえさーん、これから暇だったりするー?」
信号近くでナンパ野郎に声をかけられた。うるさいぞノンケヤリチン。と、言うわけにもいかず、僕はフルフルと頭を振ってナンパ野郎から体の向きをそらした。
「俺さー!すごくオススメのお店知ってんのよ!今日できた店らしいんだけど一緒に行かないー?!」
めげずに話しかけてくる。コミュ障ぼっちの僕はこのコミュ力というかめげない心?を見習うべきかもしれない。ナンパなんて一生やるつもりないけど。じゃあいらないか。そんな風に一人ツッコミを内心繰り広げていたら
「ちょっと、彼女困ってますよ」
漫画でしか見ないような台詞が背後から聞こえてきた。
(え?!まさか、これって)
BLで何度も見た流れだ。変なのに絡まれて“イケメン”に助けられる。定番の展開。そう、
(運命の出会いってやつ?!)
まさか僕にBL展開がきてくれるなんて。ウキウキで振り返ると…
「彼女は志向にして苛烈な戦場マニメイトの美しき女神。そのような高貴なるお方に、な、ナンパという、下賤な動機で声をかけるなんて恥を知りたまえDQN」
と早口で捲し立てる キモ男 が立っていた。
(いやキモ男かよ!!!!!)
せっかく痴漢を帳消しにしてくれるような特別で最高な運命の出会いが舞い込んだのかと思ったのに。
変なのに絡まれて
変なのに助けられるなんて
聞いてませんよBLの神様!!と内心叫んだ。
「え、キモ」
ナンパ野郎が端的に心情を吐露する。うん、同意。
「なぬッ!誹謗中傷はッ!めめッ名誉毀損で!ううう訴えますぞ!」
キモ男の訴えはすでに背を向けているナンパ野郎には届いてなかった。信号は赤のままだったが僕も一緒に渡ってしまおうかなと踏み出せば
「女神、どこへ行かれるのですか」
ぐにっと手汗に濡れた手で腕を捕まれた。その手は買い物袋を持った方だったから無理に振り払えない。落として万が一BLを傷付ければ、BL作家の皆様に顔向けできない。万死に値する。僕は気持ち悪さをぐっと堪えてキモ男に向き直った。
「あの!迷惑です!」
この際だ。マニメイト店内でないのなら男だとバレてもいい。裏声でもなくガッツリ男の声で抗議するとキモ男は「ハスキーで萌えますな」と謎に喜んできた。キモイキモイ。
「先程我は戦場(※マニメイト)で凛々しく立つ(※BL立ち読み)女神に一目惚れしてしまい、類まれなる運命を感じ接触を試みた(※痴漢した)のだが、ああ、照れなくていいですぞ、女神も何度も我を見てくれた事だしもはや両想いなのは周知の事実。そんな女神がDQNに困らされているのを見て、これは勇者である我の出番だと馳せ参じたというわけでしてetc…」
何言ってんだコイツ。
(戦場??凛々しく立つ??接触??)
BLをニヤニヤ立ち読みしてる挙動不審客(※僕)をどう捉えたら一目惚れできるのか理解不能だが、女装してBLを買いに行ってる僕も他人の事は言えない。わりとお互い様だ(僕は誰にも迷惑をかけてないのに対してこの男はガッツリねっちょり僕の迷惑になっているけど)。今問題なのは僕の腕を掴むこの手だ。軽く腕を引っ張ってみるがこの男、無駄に縦にも横にもでかいからびくともしない。
(これじゃ逃げれない…なんか、こわくなってきた…)
キモ男への怒りは最初の一声で使いきってしまった。力も敵わず、何をしでかすかわからない相手に恐怖が込み上げてくる。
(ど、どうしよう…)
せっかく今日のマニメイトを楽しみに今週のバイト・課題も頑張ったのに、なんでこんな事になるんだと絶望する。
「さあ行きますぞ!」
「あ、えっ…」
バタン
ふと僕達の横に停められていた車の扉が開いた。
「?!」
前屈みになっていた腰、いや、尻を後ろから揉まれた気がする。自慢じゃないが僕のお尻は男の癖に筋肉がなく、全く固くないので、揉まれても「男だ!!ギャァー!!」とは叫ばれないはずだ。その心配はないが…
(え、痴漢…??)
驚きと共におずおずと振り向く。すでに犯人は通路から抜けて棚を右に曲がろうとしていたところだった。陰気そうな横顔が見える。眼鏡でニキビだらけの、独り言言ってる系の奴だ。マニメイトではよくいるが関わる事は無い。目が合うなんてことはもっての外…
ニヤッ
(いやキモチワルッ!!)
男にねっちょりと笑いかけられ鳥肌が立った。こんな気持ち悪い奴が結界内にいるなんて信じられない。僕は早足でレジに向かった。すると…キモ男もついてきて、あろうことかぴったりと真後ろにくっついてきた。いや近い近い。足跡のマークちゃんと見ろよ。僕とキモ男で一人分みたいな距離になってるじゃんか!
もぞもぞ
最悪なことにこの距離を維持したまま、ワンピースの後ろがひきつる感じがして嘘だろと思った。
(ひいいいよくわかんないけどなんかもぞもぞしてる…キッモ!!!)
素敵なBLと出会わせてくれる天国のような場所マニメイトでこんな不快な思いをするなんて今日の僕はなんてついてないんだろう。痴漢自体は何回か経験があるがマニメイトでは初めてだった。
(ああもう!早く順番来てー!)
「はっ、はあっ…はっ!も、う、来てない…か…?」
地獄のレジ待ちタイムを耐え、なんとかBLを手に入れた僕は駅へと向かう道を全力ダッシュしていた。奴のカゴは一つしか入ってなかったから追いかけようと思えば追いかけられる。変に絡まれる前に電車に乗って逃げてしまわないと。
「あ、信号赤…」
目の前の信号が不運にも赤になり、僕は仕方なく足を止めた。早く早くと焦って足踏みしてると
「おねえさーん、これから暇だったりするー?」
信号近くでナンパ野郎に声をかけられた。うるさいぞノンケヤリチン。と、言うわけにもいかず、僕はフルフルと頭を振ってナンパ野郎から体の向きをそらした。
「俺さー!すごくオススメのお店知ってんのよ!今日できた店らしいんだけど一緒に行かないー?!」
めげずに話しかけてくる。コミュ障ぼっちの僕はこのコミュ力というかめげない心?を見習うべきかもしれない。ナンパなんて一生やるつもりないけど。じゃあいらないか。そんな風に一人ツッコミを内心繰り広げていたら
「ちょっと、彼女困ってますよ」
漫画でしか見ないような台詞が背後から聞こえてきた。
(え?!まさか、これって)
BLで何度も見た流れだ。変なのに絡まれて“イケメン”に助けられる。定番の展開。そう、
(運命の出会いってやつ?!)
まさか僕にBL展開がきてくれるなんて。ウキウキで振り返ると…
「彼女は志向にして苛烈な戦場マニメイトの美しき女神。そのような高貴なるお方に、な、ナンパという、下賤な動機で声をかけるなんて恥を知りたまえDQN」
と早口で捲し立てる キモ男 が立っていた。
(いやキモ男かよ!!!!!)
せっかく痴漢を帳消しにしてくれるような特別で最高な運命の出会いが舞い込んだのかと思ったのに。
変なのに絡まれて
変なのに助けられるなんて
聞いてませんよBLの神様!!と内心叫んだ。
「え、キモ」
ナンパ野郎が端的に心情を吐露する。うん、同意。
「なぬッ!誹謗中傷はッ!めめッ名誉毀損で!ううう訴えますぞ!」
キモ男の訴えはすでに背を向けているナンパ野郎には届いてなかった。信号は赤のままだったが僕も一緒に渡ってしまおうかなと踏み出せば
「女神、どこへ行かれるのですか」
ぐにっと手汗に濡れた手で腕を捕まれた。その手は買い物袋を持った方だったから無理に振り払えない。落として万が一BLを傷付ければ、BL作家の皆様に顔向けできない。万死に値する。僕は気持ち悪さをぐっと堪えてキモ男に向き直った。
「あの!迷惑です!」
この際だ。マニメイト店内でないのなら男だとバレてもいい。裏声でもなくガッツリ男の声で抗議するとキモ男は「ハスキーで萌えますな」と謎に喜んできた。キモイキモイ。
「先程我は戦場(※マニメイト)で凛々しく立つ(※BL立ち読み)女神に一目惚れしてしまい、類まれなる運命を感じ接触を試みた(※痴漢した)のだが、ああ、照れなくていいですぞ、女神も何度も我を見てくれた事だしもはや両想いなのは周知の事実。そんな女神がDQNに困らされているのを見て、これは勇者である我の出番だと馳せ参じたというわけでしてetc…」
何言ってんだコイツ。
(戦場??凛々しく立つ??接触??)
BLをニヤニヤ立ち読みしてる挙動不審客(※僕)をどう捉えたら一目惚れできるのか理解不能だが、女装してBLを買いに行ってる僕も他人の事は言えない。わりとお互い様だ(僕は誰にも迷惑をかけてないのに対してこの男はガッツリねっちょり僕の迷惑になっているけど)。今問題なのは僕の腕を掴むこの手だ。軽く腕を引っ張ってみるがこの男、無駄に縦にも横にもでかいからびくともしない。
(これじゃ逃げれない…なんか、こわくなってきた…)
キモ男への怒りは最初の一声で使いきってしまった。力も敵わず、何をしでかすかわからない相手に恐怖が込み上げてくる。
(ど、どうしよう…)
せっかく今日のマニメイトを楽しみに今週のバイト・課題も頑張ったのに、なんでこんな事になるんだと絶望する。
「さあ行きますぞ!」
「あ、えっ…」
バタン
ふと僕達の横に停められていた車の扉が開いた。
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