【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

1章 新しい家族

呪われた子

　どうして、お父様もお母様も、私を愛してくれないの？
「呪われた子を産みおって！」
　どうして、お母様は家を出ていってしまったの？
「お前さえ産まれて来なければ……あぁ！産まなきゃ良かった！」
　どうして、お父様は私を殴るの？
「この出来損い！オラルト家を呪いおって！」

いつからだろう、考えるのを辞めたのは。
いつからだろう、何も感じなくなったのは。

いつからだろう、春が訪れなくなったのは。




　これは、貴族令嬢レイの物語。






　朝がやってきて、目が覚めました。使っていた寝具を片づけます。今日も寒いです。
　軽く髪を整え、部屋を出て台所へ向かいます。そこには食事が用意されているので、静かに食べました。お皿を洗って、元の場所に戻すと台所を後にしました。

　朝焼けに照らされたお庭に出て、草むしりを始めます。むしった草はゴミ袋に入れます。そのゴミ袋はゴミ置き場まで持っていきます。お庭は広いので沢山のゴミ袋がいっぱいになってしまいました。ついでに屋敷のゴミ袋も持っていきます。屋敷とゴミ置き場の間を数往復しました。ふりこ時計は一斉に10時を知らせました。

　往復している途中、後ろから肩を強く掴まれました。反射的にゴミ袋をその場に落としてしまいます。
「おいお前！私の視界に入らぬよう生活しろと何度言ったら分かるんだ！」
後ろを振り向くと、伯爵様・・・がいらっしゃいました。視界に入らぬよう、静かに通路の端に移動します。
「何のつもりだ？屋敷の主人である私に対して応答しないとは。」
「…………」
「ふん！これはお仕置きが必要なようだな！」
次は腕を掴まれた。そのまま腕を固く掴まれ通路を引きずられます。
　途中で執事長にお会いしました。私を見ると怪訝そうな顔をしました。
「旦那様、今からお仕置きですか？」
「そうだ、どけ。」
「本日は10時半よりエメリック公爵様がお見えになられます。あと30分程です。今からのお仕置きは控えた方が宜しいかと。」
伯爵様は私をギロリと睨みました。
「そうだったな。今日は勘弁してやろう。」
乱暴に私の腕を離します。
「ゴミよ、絶対に！絶対に！公爵様と話すのではないぞ！話した暁には普段のお仕置きではすまさぬぞ。」
無言の圧。そのまま伯爵様は去っていきました。


　雑草と屋敷のゴミ袋を全て運び終えました。ふりこ時計が12時を知らせます。自分の部屋に戻るため、通路を静かに歩きます。そのとき、怒号が静寂を壊します。
「だからやっていないと言っているでしょう！」