【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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3章 共同作戦

同じ悲しみ

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「物心ついた時から、父と呼ぶことは許されなかった。”お前などと血が繋がっているなんて思うだけで虫唾が走る”と言われ、後妻のリリアーナ様も私を見下していた。」
「わかります。私も、両親を父母と呼ぶことはありませんでした。常に”伯爵様””伯爵夫人様”でした。」

 あの辛い日々は、いつも孤独でした。心は冷たく凍りつき、いつになっても冬が明けない時間は永遠とも思えました。そして考えることを辞めたのです。
 その点殿下は凄いです。虐げられてもなお王太子として執務に取り組み、婚約者とも関わったのですから。

「初めてだよ。同じ孤独や悲しみを背負った人を見つけたのは。」
「私もです。」

 夕日は沈みかけてきました。影法師も薄くなっています。

「今日は本当にありがとう。また、会えたら。」
「はい、また会えたら。」

 どこか寂しい殿下はすぐにでも消えてしまいそうでした。その姿を見ると、心が締め付けられました。






 人前で泣いたのは初めてだった。人前で弱みを見せるのは許されなかった。教育官に厳しく咎められた時、リリアーナ様に母を侮辱された時、ディアナの分の執務を徹夜でやっていたらミスが発覚した時、いつも1人、部屋で泣いていた。そして最近は泣くことすら無くなった。王位継承権を失う事になった時でさえ、絶望しただけで涙は出てこなかった。私の涙腺はきっと枯れ果てているのたと思っていた。

 実は私の誕生日パーティーの後、少しレイ嬢について調べた。彼女の過去は想像を絶するものだった。容姿だけで実の両親からの虐待。食事が与えられないなんて序の口で、暴力や暴言を日常的に受けていたという。エメリック公爵に保護されなかったらどうなっていた事か。考えただけでも身震いする。
 私は愛されなかった訳では無い。乳母や役人たちは親切に接してくれたし、生活だって満足にさせてもらえていた。

 レイ嬢は強い。過去を乗り越え、今や誰もが認める公爵令嬢だ。彼女を見ていると自分がすごくちっぽけな存在に思えてくる。

 だから、思えたのだ。自分から動かなければならないと。テレネシア公爵家の罪を白日の元に晒す事を決意できたのだ。

 ”同じ孤独や悲しみ”なんてレイ嬢の境遇を思うと自意識過剰ではないかと思う。レイ嬢の傷はまだ、きっと修復できないくらい深く、隠された場所にあるのだろう。



 彼女の傷を治してあげたい。心から笑ってほしい。できれば、私の隣で。
 こんな感情、ディアナに抱いた事は一瞬も無かったというのに。

 あぁ、私はレイ嬢が好きなのだな。









 次回から5章に突入します!
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