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3章 共同作戦

本音

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 テレネシア家の2人がいなくなり、パーティー会場には革命派の人々と王太子殿下だけが残りました。不安は拭えきれてはいませんが、ようやく悲願を達成することができたのです。

「皆さん、今日はこの告発劇に協力してくれてありがとうございました。おかげでテレネシア公爵家の不正を白日の元に晒すことができました。」

お父様が礼をしました。私もそれにならいます。
「ありがとうございました。」

「私からも礼を言う。分かっていると思うが、この場を持ってディアナとの婚約は破棄する。これから国の情勢は大きく変化するだろうが、王族として必ず全良な人々が報われるようにすることを誓おう。」


パーティーは終わり、続々と協力してくれた方々が帰っていきます。夕焼けが庭を照らし、閑散とした庭は少し寂しさも感じます。


「レイ嬢、少し良いかな?」
「…はい。」
王太子殿下から声をかけられました。人がいなくなった庭に2人分の影法師がのびます。

「聞いてると思うが、私は弟か妹がもうすぐ生まれ、王位継承権を剥奪される。」
「……存じ上げております。」
お父様の口からは聞きましたが、実際本人から言われると信じ難いですね。こんなに優秀な人だと言うのに……

「信じ、られません。」
ポツリと、本音が出てしまいました。
ふと隣りを見ると、王太子殿下は夕日を眺めなんとも言えない表情をしています。

「私も信じられない。」
殿下は自分の手に視線を移します。
「あれほど教養を身につけ、執務をこなし、国を治める者として努力してきたのにっ、それは母も同じだったのに……」
殿下は泣いていました。静かに、でも堪えきれない様子で。

「憎かった。私情だけで母の精神を蝕み、あまつさえ殺してしまった陛下がっ。そんな人に利用され続ける自分がっ。心底憎かった……」
つむぎ出される言葉は殿下の本音でした。目頭を抑え、見ているこちらまでいたたまれない気持ちになります。

「幼い頃から変えられると信じていた。自分が国王に即位すれば母の無念を晴らして良い国にできると。ディアナも王妃として上手くやってくれると。だが、どちらも叶わなくなってしまった。」

 私は殿下の肩をさすります。優しく、ゆっくりと。心を込めて。
 殿下1人の肩にかかっていた責任の大きさは計り知れません。でも苦しみを共有することはできます。

 私も肉親に愛されなかった1人なのですから。
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