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4章 攫われた二人
森にて
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見つかった魔道具は、花嫁がいつも身につけていた護身用のもの。レオナルド殿下が渡したとあって、大事に持っていたそうだ。
馬を走らせ、私たちは件の森までやって来た。
式に参列していたリシュオン公爵は、誘拐現場にいたということで聴取を受けている。しばらく会場から出るのは叶わない。参列者全員に同じ事をさせているので、自分が最重要容疑者となっているとは分からないだろう。まぁ、まだ邸宅付近で物品が見つかっただけなのだが、現時点では最も話を聞く必要がある人物なのは間違いない。
リシュオン家の邸宅の西に位置する森までやって来た。先に着いていたレオナルド殿下の側近から、見つかった魔道具を渡される。
「クレアは奇跡の力を扱えますが、魔法は使えません。なので護身用に、私の魔力を込めたこの魔道具を渡していました。任意のタイミングで魔力を魔法に変え、攻撃できる代物なのですが……」
残念ながら敵を認識する前に連れ去られたようだった。
森はあまり舗装されておらず、背の低い草が生い茂る所が多かった。馬車が通った後だろうか、細く草が窪んでいる。
「森の先は別の貴族の領地です。通行門の管理人から記録を見せてもらったところ、事件の後に通った馬車があったそうです。」
殿下の側近たちは政敵である公爵を嗅ぎ回っていたそうだ。そのおかげで情報が早く入ってくる。ありがたい。
「ならば、それが二人を攫った犯人……」
「待ってください。」
しかし、殿下の判断は早急すぎる。私は管理記録を見せてもらうことにした。やはり思った通りだった。
「馬車が通ったのは、事件発生から約五分後です。どれだけ急いでも、教会からここまで五分ではたどり着けません。」
ここに来るまでかなり急いでやってきたが、それでも15分はかかった。
「なるほど…早合点だったようですね。」
全く無関係、では魔道具が落ちていたことに説明がつかない。恐らくこの馬車は、
「陽動ではないでしょうか。何者かがリシュオン公爵に罪を擦り付けようとしているとのだと思います。」
公爵は王家に反発する貴族派の筆頭だ。スケープゴートにこれほどふさわしい人物はいない。
「そうなると、この魔道具は?」
「我々を欺くため、犯人が誘拐時に奪って置いたのではないでしょうか。」
だが、そうなるとまた振り出しに戻ってしまう。せめてもう少し手がかりがあれば…
「陛下、一旦教会に戻りましょう。ここにいては埒が開きません。」
「そうですね…」
無駄足を踏んだことに肩を落としつつ、私たちは再び馬に乗った。しかし思いは変わらない。
必ず助け出してみせるからな、レイ。殿下の結婚式を終えたら、いよいよ私達も結婚式なのだから。
馬を走らせ、私たちは件の森までやって来た。
式に参列していたリシュオン公爵は、誘拐現場にいたということで聴取を受けている。しばらく会場から出るのは叶わない。参列者全員に同じ事をさせているので、自分が最重要容疑者となっているとは分からないだろう。まぁ、まだ邸宅付近で物品が見つかっただけなのだが、現時点では最も話を聞く必要がある人物なのは間違いない。
リシュオン家の邸宅の西に位置する森までやって来た。先に着いていたレオナルド殿下の側近から、見つかった魔道具を渡される。
「クレアは奇跡の力を扱えますが、魔法は使えません。なので護身用に、私の魔力を込めたこの魔道具を渡していました。任意のタイミングで魔力を魔法に変え、攻撃できる代物なのですが……」
残念ながら敵を認識する前に連れ去られたようだった。
森はあまり舗装されておらず、背の低い草が生い茂る所が多かった。馬車が通った後だろうか、細く草が窪んでいる。
「森の先は別の貴族の領地です。通行門の管理人から記録を見せてもらったところ、事件の後に通った馬車があったそうです。」
殿下の側近たちは政敵である公爵を嗅ぎ回っていたそうだ。そのおかげで情報が早く入ってくる。ありがたい。
「ならば、それが二人を攫った犯人……」
「待ってください。」
しかし、殿下の判断は早急すぎる。私は管理記録を見せてもらうことにした。やはり思った通りだった。
「馬車が通ったのは、事件発生から約五分後です。どれだけ急いでも、教会からここまで五分ではたどり着けません。」
ここに来るまでかなり急いでやってきたが、それでも15分はかかった。
「なるほど…早合点だったようですね。」
全く無関係、では魔道具が落ちていたことに説明がつかない。恐らくこの馬車は、
「陽動ではないでしょうか。何者かがリシュオン公爵に罪を擦り付けようとしているとのだと思います。」
公爵は王家に反発する貴族派の筆頭だ。スケープゴートにこれほどふさわしい人物はいない。
「そうなると、この魔道具は?」
「我々を欺くため、犯人が誘拐時に奪って置いたのではないでしょうか。」
だが、そうなるとまた振り出しに戻ってしまう。せめてもう少し手がかりがあれば…
「陛下、一旦教会に戻りましょう。ここにいては埒が開きません。」
「そうですね…」
無駄足を踏んだことに肩を落としつつ、私たちは再び馬に乗った。しかし思いは変わらない。
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