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電車で苦くて甘いヒミツの関係
1.5
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気持ちを落ち着かせて、いつものように笑顔でドアを開ける。
「おはようございます」
「おはよう」
そう言って私を迎えてくれたのはいつもと同じ課長の笑顔だった。入社して以来、ずっと想い続けている人。
「今日はちょっと忙しいから、三井さんにも頑張ってもらうよ」
課長の隣を通り過ぎる時にこにこと声をかけられ、「はい!」と返事を返す。
「三井さんの挨拶はいつも気持ちいいから、聞いていると朝から元気になるね」
些細なことを何気なく褒めてくれるのは誰に対しても一緒なのに、やっぱりそんなさりげない一言が嬉しくて、思わず顔がゆるんでしまう。でも少しだけ気恥ずかしくて顔が熱くなってしまうのだけれど。
気付かれませんように。
照れてしまって上手く返事は出来なかったけど、照れながら何とか浮かべた笑顔を返して自分の席へと向かう。
課長の笑顔も、気遣いも、落ち着いたしゃべり方も、全部が好きだった。そんな課長の何気なくくれた言葉を反芻しながら、やっぱり、と改めて思う。
やっぱり、声の感じが、似てる。
「彼」の囁く声とは、声の出し方そのものが違うけど、それでもふとしたしゃべり方も、ちょっとした声の感じもやっぱり似ている気がする。
この課長に痴漢されている妄想をするだなんて、すごく失礼かもしれない。でも、後ろめたさみたいなのが、余計に私の気持ちを煽ってしまう。
課長に、あんな事、されてみたい。
ちらっと見た課長の手。
そんなところも「彼」と似てる気がする。でも、男の人の手の違いなんて、正直なところ自分にはよく分からない。「彼」の手はじっと見ることが多いけど、特別何か特徴があるわけでもない。課長の手と見比べたくても、そんなにじっと見る機会なんてないし。男の人なんて、みんな骨張ってて大きくて。だから、きっと似てる気がするだけ。「彼」はあの時間帯に私服で、課長はスーツで。それに、課長が痴漢なんて。
いつも穏やかで、優しくて、けれど仕事には厳しい、責任感のある、まさしく「大人の男の人」のイメージそのものの人。痴漢だなんて、あり得ない。
彼と課長が同一人物だったなら……、なんて今まで何度も考えたことだけれど。
また馬鹿なことを考えちゃった、と自分を戒める。
私は一つ息を吐くと、気持ちを切り替えて仕事に取りかかった。
「おはようございます」
「おはよう」
そう言って私を迎えてくれたのはいつもと同じ課長の笑顔だった。入社して以来、ずっと想い続けている人。
「今日はちょっと忙しいから、三井さんにも頑張ってもらうよ」
課長の隣を通り過ぎる時にこにこと声をかけられ、「はい!」と返事を返す。
「三井さんの挨拶はいつも気持ちいいから、聞いていると朝から元気になるね」
些細なことを何気なく褒めてくれるのは誰に対しても一緒なのに、やっぱりそんなさりげない一言が嬉しくて、思わず顔がゆるんでしまう。でも少しだけ気恥ずかしくて顔が熱くなってしまうのだけれど。
気付かれませんように。
照れてしまって上手く返事は出来なかったけど、照れながら何とか浮かべた笑顔を返して自分の席へと向かう。
課長の笑顔も、気遣いも、落ち着いたしゃべり方も、全部が好きだった。そんな課長の何気なくくれた言葉を反芻しながら、やっぱり、と改めて思う。
やっぱり、声の感じが、似てる。
「彼」の囁く声とは、声の出し方そのものが違うけど、それでもふとしたしゃべり方も、ちょっとした声の感じもやっぱり似ている気がする。
この課長に痴漢されている妄想をするだなんて、すごく失礼かもしれない。でも、後ろめたさみたいなのが、余計に私の気持ちを煽ってしまう。
課長に、あんな事、されてみたい。
ちらっと見た課長の手。
そんなところも「彼」と似てる気がする。でも、男の人の手の違いなんて、正直なところ自分にはよく分からない。「彼」の手はじっと見ることが多いけど、特別何か特徴があるわけでもない。課長の手と見比べたくても、そんなにじっと見る機会なんてないし。男の人なんて、みんな骨張ってて大きくて。だから、きっと似てる気がするだけ。「彼」はあの時間帯に私服で、課長はスーツで。それに、課長が痴漢なんて。
いつも穏やかで、優しくて、けれど仕事には厳しい、責任感のある、まさしく「大人の男の人」のイメージそのものの人。痴漢だなんて、あり得ない。
彼と課長が同一人物だったなら……、なんて今まで何度も考えたことだけれど。
また馬鹿なことを考えちゃった、と自分を戒める。
私は一つ息を吐くと、気持ちを切り替えて仕事に取りかかった。
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